Monster Rion×向井太一|2つの対談で解き明かす 新鋭ダンスミュージックに宿るメッセージ

イエローピープルが世界に挑む

SONPUB アルバムジャケットは「Message」にちなんで封筒のイラストになってて、人種を表す色だけで構成されてるんですよ。背景の黄色はイエローピープル、封筒の白は白人、リボンの黒は黒人を意味してて。平和を表してたり、イエローピープルが世界に挑むっていう意味合いを持ったアルバムなので。

向井 そうだったんですね。僕も日本で活動してる以上、母国語を大切にしたいっていう意識はあります。同じ日本語でも表現方法とか言葉の選び方は人によって全然違うんで、自分なりの世界観を持ちたいなと。

SONPUB

SONPUB 向井くん世代のアーティストは、そういうふうに日本人ならではの感性を推していく人も多いよね。ひと昔前より高いレベルで国内外に向けてアプローチできてるなと思う。もしかしたらキース・エイプとかKOHHが母国語でラップした「It G Ma」が数年前に海外でヒットしたことも一因になっているのかもしれないけど、あんまり気にしてない?

向井 そうですねえ……何をヒットと見るかですよね。USのチャートに入ってるものがヒットなのか、現地でバズってるものがヒットなのか。

The BK Sound 今はいろんな見方があるからね。俺は、人に数多く求められるものがヒットなんじゃないかって思ってる。「It G Ma」に関しては、日本語も韓国語もわからないヒップホップ好きなUSの人たちが、ライブで一緒に歌ってる時点でヒットだなと思ったの。音楽で国境を打ちのめしたって感じがして。

SONPUB まああれはアジア人が母国語で初めて世界的にヒットさせたラップトラックなのは間違いないし、初期衝動や熱量の強さを改めて教えてもらった気がする。でも重要なのはそこからその後どう表現していくか、どうつなげていくか。

向井 確かに。あと、それをどう日本のメインストリームに定着させるかですよね。日本と海外では音楽の聴き方も国民性も違うから、海外でモロにトレンドのサウンドを日本で大ヒットさせることって無理だと思うんですよ、何かほかの要素がないと。だから僕はUSでめちゃくちゃカッコいいと言われてることをそのままをしようとは思わない。自分の感性と海外のエッセンスがいいバランスで成立した曲を作り発表するのが、個人的な課題です。宇多田ヒカルさんのアルバム「Fantôme」にKOHHさんが参加して、海外で話題になってる人がメジャーのアーティストにフックアップされたっていうのはいい流れの1つだと思います。

売上枚数が落ちてるからこそ生まれた“新世代感”

SONPUB CDは売れない時代だけど夢のある話だよね。今の時代、ミュージシャンの成功は枚数じゃなくて違う形になってるんだと思う。

向井太一

向井 若い世代のアーティストが新しいことをやろうとしてるのは、CDが売れない時代だからこそっていう見方もあるんじゃないですかね。

The BK Sound たくさん売る必要がないから、音楽的に突き詰められるってことだよね。

向井 はい。枚数が落ちてるからこそ新しく生まれた流れが、“新世代感”の真理じゃないかなと。

SONPUB 本来それが普通なんだけど、今はまさにやりたいことをやる時代だよね。向井くんは今、純粋に面白いものを作ろうって考えのスタッフがバックアップしてくれてる環境なわけだよね? そこからキャリアがスタートしてるってすごくいいことだと思うな。俺らが20代前半のとき、CD出すことになって「どれぐらい売ろうと思ってるの?」って、いきなり枚数の話からされることもあったから。「考えたことないし!」っていう。

向井 確かに。今の僕の周りには音楽をちゃんと深く知ってる人たちが集まってるので、すごいありがたいなと思ってます。その意味ではMonster Rionのお二人にも感謝してます。自分の曲のようにすんなり入り込めて、面白いことができて、納得できる曲ができあがったので。素敵な機会を与えてくださってありがとうございました!

Monster Rionと向井太一。
Monster Rion「Message」
2017年7月12日発売 / avex EDM
Monster Rion「Message」

[CD]
2592円 / AVCD-93694

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Yellow People Song feat. Jinmenusagi
  2. Monster Riot feat. Jinmenusagi
  3. Mosh Pit Jungle feat. MAKOTO & ISHI (SAND)
  4. Lee Perry (Skit)
  5. Future Rebel Music feat. Lee "Scratch" Perry & J-REXXX
  6. Message feat. 向井太一
  7. 10 to Dance (Skit)
  8. Ignition Riddim
  9. Secret Dancehall feat. IO, YOUNG JUJU & Thelma Aoyama
  10. Secret Crush feat. Konshens
  11. Yellow Man (Skit)
  12. Tropical Love
  13. Lion Chillin' feat. KIYOSAKU
  14. 獅子 Skit feat. Leon
  15. Stronger feat. Voice Magician
Monster Rion(a.k.a. 怪物獅子)(モンスターライオン)
Monster Rion
DJ / プロデューサー / トラックメーカーのSONPUBとMC / セレクターのThe BK Soundからなる、2015年に活動を開始したユニット。ユニット名の「Rion」はRebellionを略した造語。SONPUBがDJや楽曲制作、プロジェクト全般のプロデュースを担い、BKがMCを務める。お互いのルーツであるエレクトロニック、ヒップホップ、レゲエを昇華したダンスミュージックに定評があり、過去に配信リリースした楽曲はいずれもiTunes Storeのダンスチャートで1位を記録した。2015年から2016年にかけて100公演以上におよぶ大規模なツアーを実施。ブートミックスCD「R MIX」シリーズはライブ会場とWeb通販のみで累計売上が5000枚を突破した。2017年7月に、リー・ペリーなど国内外のゲストを多数迎えた1stオリジナルアルバム「Message」をリリースした。
向井太一(ムカイタイチ)
向井太一
1992年3月生まれ、福岡出身のシンガーソングライター。幼少期よりブラックミュージックを聴きながら育ち、2010年に上京しジャズとファンクをベースとしたバンドにボーカルとして加入する。2013年にソロ活動をスタートし、2016年3月に初の音源となるミニアルバム「POOL」をインディーズでリリース。その後TOY'SFACTORYの新レーベル・MIYA TERRACEと契約し、同年11月にミニアルバム「SLOW DOWN」を発表した。