Monster Rion×向井太一対談
ダンスミュージックを作るうえでメッセージ性は重要
──Monster Rionの結成は2013年、本格的に始動したのは2015年ですが、まずSONPUBさんとThe BK Soundさんがユニットを組んだ意図を教えてください。
SONPUB やりたい音楽をやるためでした。僕はエレクトロ系とヒップホップ系のダンスミュージックを行き来しながらサウンドプロデューサーとDJ、BKはレゲエのセレクターとしてずっと活躍してて。2013年頃はMajor Lazerを筆頭に、海外でレゲエとダンスミュージックが合わさったサウンドが盛り上がっていて、2人でそういう音楽を聴きながら「こういうのやってみたいね」って話になったんです。僕のバックグラウンドにはレゲエがなかったからBKの力が必要でした。お互い魅力的なバックグラウンドを持つ者同士、自分にないものを補い合えると思ったんですよね。
The BK Sound 活動してきたフィールドが違う2人で化学反応を起こして、今まで日本になかった新たな音楽を生み出したいねっていう話はしました。僕たちにとってもチャレンジでしたね。
──配信シングルやブートミックスCDを発表しながらアルバム制作を進め、3年かけて「Message」ができたそうですね。アルバムは最初どういうものを構想していたんでしょうか?
SONPUB 簡単に言ったら、メッセージ性のあるダンスミュージックのアルバムにしたかった。作り始めた3年前って、EDMやベースミュージックが盛んになってダンスミュージックのジャンルが派生しまくってた時期だと思うんですよ。でもそのクオリティは千差万別で、例えばABLETON Live(DAWソフト)に音を放り込んで少しいじった、いわゆるエディットとかマッシュアップとか、インスタントな作り方をする人もいっぱい出てきて。まあそれはそれでアイデアとして面白いものも中にはあったりもします。でも僕は元来、音の1個1個の意味やバックにあるカルチャーをなるべく大事にして曲を作るほうなので、その状況を踏まえて、ダンスミュージックを作るうえでメッセージ性みたいなものは重要だなと改めて思って。
向井太一 メジャーなアーティストが、トレンドになってるサウンドを急に取り入れることもありますしね。ルーツを大事にしつつ意味を汲み取ったうえで曲を作るのとは違って。
SONPUB そうなんだよね。2013年頃はインスタントなものからそうじゃないものまで混沌としてた。だから自分は別物ですってのを示したかったし、何よりも未来に残せるダンスミュージックを作りたかった。
向井 僕はEDMが盛り上がった頃のクラブミュージックに対して、「すべての音が鳴っていて余白が全然ないな」と思ってたんです。イヤフォンで聴くと圧がすごくてメッセージ性みたいなものもよくわからなくなるっていうか。
SONPUB まさに。
The BK Sound その頃“パリピ”って言葉が出始めたんじゃない? ダンスミュージックが大衆的になっていった中、ヒップホップだったりレゲエだったりルーツを持って現場で戦ってる僕らが、いろんな歌い手の力を合わせてメッセージを刻み込んだ。それが今回のアルバムになってます。
第一候補は山下達郎だった
──「Message」には、Jinmenusagi、MAKOTO&ISHI(SAND)、J-REXXX、向井太一、IO&YOUNG JUJU(KANDYTOWN)、青山テルマ、キヨサク(MONGOL800)、Voice MagicianことHAN-KUN(湘南乃風)、リー・ペリー、コンシェンス、イエローマン、Leonと、実に幅広いアーティストが参加されましたね。
SONPUB 文字面だけ見ると多ジャンルのアーティストがぐじゃぐじゃに混ざってるだけに思われるかもしれないけど、各トラックに対して必然性のあるアーティストだけをフィーチャーさせてもらってるし、“メッセージ性”っていうコンセプトはアルバム1枚で貫かれてると思います。必然っていうのは、例えば「Future Rebel Music feat. Lee "Scratch" Perry & J-REXXX」だったら、サウンドのコンセプトが“ルーツレゲエと新しいダンスミュージックのミックス”だから、ボーカルもレゲエのレジェンドであるリー・ペリーと、日本で新しい風を吹かせてるJ-REXXXにオファーしました。その中でも、向井くんは一番意外って言われるんですけど。
向井 僕が一番ビックリしました。あはは(笑)。
SONPUB 向井くんは、去年BKとライブを観たときに超いいなと思って。
The BK Sound 実はアルバムタイトル曲となる「Message」のシンガーをずっと探してたんだ。
SONPUB 「この人がいい」っていう一番のイメージは、山下達郎だったの。
向井 えー!(笑)
SONPUB 余談だけど山下達郎のボーカルがすごく好きで、あの歌唱力とあの声質でダンスミュージックを作りたいっていうのが目標の1つだったんですよ。それは今回難しかったけど、向井くんの声質とかフロウは、自分らが思ってた以上に楽曲のイメージに合ってたね。僕らも「山達みたいに」なんてことは伝えなかったけど、イメージ以上のものが返ってきて驚きました。
The BK Sound プリプロを聴いたときに、2人で「ああもうバッチリだね」って。200点で返してきてくれたと思った。
向井 トラックを聴いた感触で、ボーカルはレゲエに寄せることを意識しました。自分としても新しい感じの歌い方でしたね。ただ僕、ちっちゃいときに母親が好きだったレゲエをよく聴いてて、「Message」のトラックも体になじみやすかったんですよ。さらに自分の音楽性も、デジタルな音楽をやってはいるけど、歌詞の精度だったりメッセージを伝える作業を重視してるので、「Message」というタイトルや曲に込められてる思いに違和感なく入り込めて。このアルバムに参加したのは新鮮な見え方かもしれないけど、僕にとっては作業的にも気持ち的にもやりやすかったです。
SONPUB よかった。この曲、なぜ「Message」なのかって言うと、ヒップホップ創成期の名曲でもあるGrandmaster Flash & The Furious Five「The Message」のトラックと、ボブ・マーリー「Three Little Birds」の「This is my message to you」っていうフレーズを拝借してるからなんです。つまり僕のルーツのヒップホップと、BKのルーツのレゲエ、2人の音楽的なルーツを表してる言葉で。プラス歌詞では、現代社会に対して伝えたい平和へのメッセージをつづり、ドロップでは平和のために踊ろうという意味を込めてる。だから音と言葉のどちらにもメッセージがこもってる曲なんですよね。
The BK Sound 今の時代じゃないと生まれないメッセージソングになりました。魂のこもったメッセージが詰まっている、レベルミュージックになっているはず。
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イエローピープルが世界に挑む
- Monster Rion「Message」
- 2017年7月12日発売 / avex EDM
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[CD]
2592円 / AVCD-93694
- 収録曲
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- Yellow People Song feat. Jinmenusagi
- Monster Riot feat. Jinmenusagi
- Mosh Pit Jungle feat. MAKOTO & ISHI (SAND)
- Lee Perry (Skit)
- Future Rebel Music feat. Lee "Scratch" Perry & J-REXXX
- Message feat. 向井太一
- 10 to Dance (Skit)
- Ignition Riddim
- Secret Dancehall feat. IO, YOUNG JUJU & Thelma Aoyama
- Secret Crush feat. Konshens
- Yellow Man (Skit)
- Tropical Love
- Lion Chillin' feat. KIYOSAKU
- 獅子 Skit feat. Leon
- Stronger feat. Voice Magician
- Monster Rion(a.k.a. 怪物獅子)(モンスターライオン)
- DJ / プロデューサー / トラックメーカーのSONPUBとMC / セレクターのThe BK Soundからなる、2015年に活動を開始したユニット。ユニット名の「Rion」はRebellionを略した造語。SONPUBがDJや楽曲制作、プロジェクト全般のプロデュースを担い、BKがMCを務める。お互いのルーツであるエレクトロニック、ヒップホップ、レゲエを昇華したダンスミュージックに定評があり、過去に配信リリースした楽曲はいずれもiTunes Storeのダンスチャートで1位を記録した。2015年から2016年にかけて100公演以上におよぶ大規模なツアーを実施。ブートミックスCD「R MIX」シリーズはライブ会場とWeb通販のみで累計売上が5000枚を突破した。2017年7月に、リー・ペリーなど国内外のゲストを多数迎えた1stオリジナルアルバム「Message」をリリースした。
- 向井太一(ムカイタイチ)
- 1992年3月生まれ、福岡出身のシンガーソングライター。幼少期よりブラックミュージックを聴きながら育ち、2010年に上京しジャズとファンクをベースとしたバンドにボーカルとして加入する。2013年にソロ活動をスタートし、2016年3月に初の音源となるミニアルバム「POOL」をインディーズでリリース。その後TOY'SFACTORYの新レーベル・MIYA TERRACEと契約し、同年11月にミニアルバム「SLOW DOWN」を発表した。