ナタリー PowerPush - MONOBRIGHT

フロントマン桃野陽介が語る「バンドの覚悟」

ヒダカトオル脱退を経て、オリジナルメンバー4人で再出発を果たしたMONOBRIGHT。昨年11月に約3年ぶりとなる4人体制でのオリジナルアルバム「MONOBRIGHT three」をリリースした彼らが、3月にZepp Tokyoで初のワンマンライブを開催する。

結成から8年、さまざまな試みを繰り広げてきたバンドはデビュー当初の「白ポロシャツ+眼鏡」スタイルに原点回帰。メンバー全員が30代に突入した昨年には「本当にこのまま音楽を続けたいのか?」というメンバー同士の話し合いすらあったという彼らは、なぜ今バンド最大規模のワンマンライブに挑もうとしているのか? 桃野陽介と「バンドの今」をディープに語り合った。

取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 佐藤類

二つ返事で決まったZepp Tokyoワンマン

──今回はまずライブの話をしたいなと思うんです。3月2日にZepp Tokyoでワンマンライブが開催されますね。これはどういうふうにして決まったんですか?

桃野陽介

僕らの事務所のお偉いさんと、MONOBRIGHTとスタッフが集まってメシを食べてて。「MONOBRIGHTは何をやってみたいんだ?」と聞かれたのに対して、僕が「Zeppでワンマンライブをやりたい」と言ったら二つ返事で「よし、やれ!」ってことになって。信じられないかもしれないですけど、それで決まったんです。僕としても「あれ?」っていう感じで(笑)。

──今の時代の音楽リスナー、特にナタリーをマメにチェックしているようなタイプのファンって賢いと思うんですよ。だから「Zepp決定、おめでとうございます!」っていうより「動員、大丈夫なの?」っていうほうがファンの正直な気持ちだと思っていて。

そうですよね。僕だって言い出したときには「まだ集客的に厳しいから」みたいな話をされるかもって思ってたし。バンドって順を追って大きなライブハウスでやるようなところがあるし。僕らはそういう段階を飛ばしていきなりZeppをやるっていうことですからね。

──そのへん、どうなんですか?

どっちにしても僕らは自分たちらしさを出せるバンドだと思うんですよね。デビュー前にライブハウスの集客が少ないときがあって、そんなときはずっとフロアに降りっぱなしで歌ったりしていたこともあったので。ライブハウスのスペースはすべてステージだと思っているんです。もちろんたくさんの人に来てもらえたらうれしいですけれど、少ないなら少ないで例えばですがフロアライブをしようかとか、普段では無理やりなギミックで楽しませることができるなっていう。

面白いことをやるのが大前提

──そしてこれ、もっと大きな枠組みの話にすると、いわゆるロックバンドの活動のフォーマットに乗ってないってことだと思うんですよ。アルバムを出したらツアーを回る。その際はバンドの動員規模にとって適切なライブハウスが選ばれる。今回MONOBRIGHTのやってることはそれではない。

完全にそれではないですね。「MONOBRIGHT three」というアルバムを出しましたけど、まだツアーも回っていないわけで。

──そういうふうにフォーマットに乗らないことが「MONOBRIGHTらしさ」でもある、という。何か面白いことをやってみようっていうバンドなんですよね、このバンドは。

そうですね。僕らがやりそうなことって周りがやりそうにないことだし、そもそも面白いことをやりたいというのが大前提にあるんで。笑いをとるとかそういうことではなく、音楽でやれる面白いことっていうのを探してきたという。白ポロシャツ着て、眼鏡をかけてみたり、それを脱ぎ捨ててみたり。ヒダカトオルが入ったり抜けたりして。バンドですけれど、バンドの枠を越えてできる楽しいことをやりたいっていうのがMONOBRIGHTですね。

──特にここ3、4年のMONOBRIGHTって、怒涛の日々だったと思うんですよ。活動公約を発表したり、ヒダカトオルさんとの“結婚(加入)”と“離婚(脱退)”があったり。いろんなアイデアとコンセプトを自分たち発信で出していった。その結果はどう捉えています?

大なり小なり、そういうものが今のMONOBRIGHTの成長につながっていると思いますね。それまで刺激的なことをたくさん経てきたからこそ何倍も早く成長できたんじゃないかなと思うんですよね。

──アスリートに例えるならインナーマッスルを鍛えていた、みたいな。

そうですね、鍛えてた感あるかも(笑)。MONOBRIGHTは結成して半年くらいでデビューしたので、最初はそこから勢いでドワドワッと活動していて、アルバムを作りながら「MONOBRIGHTって何?」みたいなところを探していた感じもあったんですよね。はっきりと提示できる1つの形を作らないとこの先しんどいぞっていうのがあって。そういう意志で、3枚目のアルバム「ADVENTURE」以降の活動に臨んでましたね。

「本当にこのまま音楽を続けたいのか?」

──「MONOBRIGHT three」というアルバムを聴いての印象なんですけど、確かにすごく鍛えた感があるんですよね。音の1つひとつとか、声とか、肝が座っている感じ。そういう実感はありますか?

言ってしまえば、ヒダカさんが抜けてベストアルバムを出して、MONOBRIGHTのオリジナルメンバーに戻ってひと段落したところがあって。そこからバンド自体をどうするか、話し合いがひたすら続いたんですよ。

──ぶっちゃけ、そこで1つのストーリーは終わったわけですよね。ベスト盤を出したということはひと区切りがついたわけで。

桃野陽介

「完結した」でもよかったんですよ。集大成となるベストアルバムを発表して、そこで1つの区切りがついて。僕ら、2013年に全員30代に突入したんですけど、30歳になって自分らの人生のこともあるなと思って。「本当にこのまま音楽を続けたいのか?」っていう、そういうところまで話して。

──状況的にそういう話にもなりますよね、それは。

なりましたね。ただ、僕自身は常に曲を作っていて。で、この曲を出したいと思う気持ちがある以上はバンドはやめられないなと思ったし、アレンジも、リハーサルもライブも手応えがある。だから止めるのはもったいない。そこから進んでいるものをどう面白くするのかっていうことをみんなで考えるようになって。それを客観的に楽しめる視点というのが、ヒダカさんがいたときの経験で僕らにも養われて持てるようになっていたので。この先もっと面白いものが4人になってもできそうな希望があったんですよね。

──まだまだやれることがたくさんある感じだった。

そうですね。ひと区切りつけて、その中から何をしようかぐらいの気持ちで考えていたところもあったんですけど。それより全然もっと新しいことがあると思って。でも、それをやるにしても「MONOBRIGHTって何?」っていう答えに説明をつけたアルバムを作りたいっていうのがあったので。

MONOBRIGHT ONE MAN LIVE 2014「BRIGHTEST ZEPP~飾りじゃないのよ眼鏡は~」

2014年3月2日(日)東京都 Zepp Tokyo
OPEN 16:30 / START 17:30
前売 3300円 / 当日 3800円(※ドリンク代別)
チケット一般発売中
<問い合わせ>
VINTAGE ROCK:03-3770-6900(平日12:00-17:00)

ニューアルバム「MONOBRIGHT three」 / 2013年11月13日発売 / 2500円 / アミューズ / ASCU-6100
ニューアルバム「MONOBRIGHT three」
収録曲
  1. 風街ロマンスパイダー
  2. OYOVIDENAI
  3. youth
  4. トライアングリー
  5. 色色
  6. アイドル
  7. 妄想難破奇譚
  8. 空中YOU WAY
  9. ブランニューウェーブ
MONOBRIGHT(ものぶらいと)

2006年に桃野陽介(ロック歌手)、松下省伍(G)、出口博之(B)、瀧谷翼(Dr)の4人で結成。2007年7月にシングル「未完成ライオット」でメジャーデビューする。2010年にはヒダカトオル(ex. BEAT CRUSADERS)を正式メンバーとして迎え、2012年には全新曲構成のアルバム「新造ライヴレーションズ」のライブレコーディングを敢行するなどさまざまな挑戦を展開。2012年11月にはアニメ「銀魂」のエンディングテーマ「ムーンウォーク」をシングルとしてリリースする。ヒダカ脱退後の2013年にはデビュー初期と同じ白ポロシャツと黒ブチメガネというユニフォームに戻り、同年11月にアルバム「MONOBRIGHT three」を発表。2014年3月2日にバンド初のZepp Tokyoワンマンライヴ「BRIGHTEST ZEPP~飾りじゃないのよ眼鏡は~」を控えている。