ラブサマちゃんとのコラボ曲は「デュエット感がすごい」
──そして若い子と言えばもう1人、「君の面影」ではラブリーサマーちゃんが参加しています。彼女とはもともと知り合いだったんでしょうか?
トラックを作ってくれたはやや(田中隼人)がファンで(笑)。この曲を作り始めたときはフィーチャリングゲストを迎える予定はなくて、完成したあと「誰か面白い子、いないですかね」という話をしたら、はややが「ラブリーサマーちゃんがいい」と言い出して。彼女、業界でもファンが多いですよね。
──多いと思いますよ。僕も好きです。
僕はそのとき初めて聴いたんですけど、「私の好きなもの」という曲がすごくいいなと思って。そこでダメ元で相談してみたんです。
──彼女もNillNicoくんと同世代ですけど、一緒にやってみていかがでした?
都会的な雰囲気の方でしたね。なんというか……都会でよく飲んでる子、みたいな。
──どういうこと?(笑)
うまく言えないんですよね(笑)。あくまで想像ですけど。
──「君の面影」はデュエット風の男女掛け合いボーカルになっていて、いい雰囲気ですよね。アルバムの中でもすごく目立っている曲です。
まさにスタッフとも「デュエット感、すごいね」って話しました(笑)。今の時代にはあまりない曲調ですよね。
──歌詞は「別れた恋人のその後」を描いていますよね。ノスタルジックで、せつなくて。
歌詞はまず自分がワンコーラス作って、それをラブサマちゃんに渡して広げてもらいました。男のほうはまだ引きずってるけど、女の子はあっさりしていて、そのギャップが面白いですね。
──モン吉さんがNillNicoくんやラブサマちゃんのような若手をフィーチャリングゲストに迎えるのは、今までやってなかったから新鮮でしたよ。
2人をつないでくれたTICTOCくん、はややに感謝です。自分でもトレンドを取り入れようと意識しているんですけど、僕が作るトラックありきだと、なかなか今っぽい曲にならないんですよ。だからこそ若いクリエイターとの交流は大事ですね。SoundCloudで楽曲を探すと、プロに匹敵するような作品がいっぱいあるし、アマチュアの方が作った楽曲をお気に入りに挙げる人も多くて。そのぐらいみんな実力があって、特に海外の若い子たちはすごいと思います。
──具体的には、最近はどのアーティストに刺激を受けましたか?
最近はトラップからの流れで、ロサンゼルスのSoulectionというレーベルに所属しているアーティストの楽曲をよく聴いていますね。これもTICTOCくんの影響で聴き始めたんです。彼はずっと現役で活動していて、トレンドにも敏感なので「今面白いのは何?」って聞いたら、「Soulectionが新しいことをやってるんだよね」って教えてくれて。Soulectionの音楽には、次に流行るサウンドのヒントがいち早く盛り込まれている気がします。あと、日本ではSoulectionの楽曲のようなトラックを作れる人がなかなかいないみたいで、最近はインスタで直接所属アーティストにオファーすることもあるみたいですね。
──海外のトラックメイカーに?
そうです。これからはそういうふうにつながっていくのかな?と思いますね。僕も次回作では、その方法で若手のトラックメイカーと交流してみたいです。
どっちも正解なのに、どうして言い争うんだろう
──アルバムに話を戻すと、「ROLLIN」はいかにもタオルソングという感じのイケイケなライブチューンです。トラックは今回が初顔合わせとなる前田佑さんが制作しています。
前田さんはスタッフに紹介してもらったんです。もう完全にタオルソングですね(笑)。でも完成後に新型コロナの感染が拡大してしまって、「タオル回せ!」とか絶対に言っちゃいけない状況になってしまって。なので家で聴きながらタオルを回してもらえるとうれしいです。
──レゲエ調の「ONENESS」はアルバムの中で唯一、社会に対するメッセージが込められていて、時代を風刺しようとした意思を感じます。
これは初めて実生活に近いシチュエーション、友達との会話みたいなものを入れました。ポップス重視のアルバムなので、できる限りそういう部分は避けようとしたんですけど。
──社会の中で、それぞれの思想を掲げて対立し合う人たちに、「お互いが違うと認めるところから始めよう」と語りかけるピースフルなテーマがモン吉さんらしいです。それを「同じ星に生まれたんだから」という歌詞で表現していますね。
僕はいつも「どっちもどっちなのになんで言い合うのかな」「どっちも正解なのに」と感じていて。何か自分なりの考えがあっても、それぞれ個人の中で確立していればよくて、無理に主張しなくてもいいのに……と思うんです。この曲ではそういうことを「言っちゃえ」という気持ちになったんです。
ファンモン再注目、ウェルカムです!
──応援歌にラブソング、子供や奥さんを題材にした歌、社会的なメッセージを込めた曲など全13曲、バリエーション豊かなアルバムになりました。
「ファンモンっぽい作品」というテーマが決まった時点でバリエーションは意識したので、自然とそういう感じになったかと。僕の好みを反映した「RUNNIN'」みたいな曲がずっと続いたら飽きちゃうし、「夢のつづき」のような応援歌だらけだと疲れちゃうし。いろんなジャンルやテーマを扱っているけど、歌っている人が同じなので、ちゃんとまとまって聴こえる作品になったと思います。
──爆音で聴いても、ヘッドホンでじっくり聴いても楽しめそうですね。
それだとうれしいですね。ぜひ楽しんでもらえたら。
──イラストレーターの上岡拓也さんが描いたジャケットアートワークもいい感じですね。DJケミカルの描いたイラストを使った「モン吉2」とのギャップがすごいですけど(笑)。
前作はケミちゃんの毒がそのまま出てましたからね(笑)。今回も「顔ジャケ」というコンセプトはブレないようにしつつ、いろんなデザイナーを調べていたら、上岡さんを見つけたんです。
──上岡さんはKOHHやBAD HOPなど、ヒップホップ系アーティストのアートワークも数多く手がける気鋭のアーティストです。キュビズムっぽい、幻想的な作風ですね。
上岡さんには「無国籍風で魅力的な絵にしてほしい」とお願いしました。才能を感じますね。しかも僕の顔を1.7倍ぐらいイケメンに描いてくれたので、ありがたいです。
──このジャケットも含め、さまざまな人と一緒に作ったことがすごく伝わる作品になったと思います。それこそファンモンをよく聴いていた人にも、「あなたの求める作品がここにあります」と言いたいです。
まさにファンモン好きには聴いてもらいたい作品ですね。
──ファンモンはCreepy NutsのR-指定さんが韻の踏み方を絶賛したり、今になってようやくヒップホップ的な要素が評価されてきた動きもあると思うんですね。本人を前にしてこんなことを言うのは失礼かもしれないですけども。
いや、ウェルカムです(笑)。解散からだいぶ経っているので、むしろお願いします!
──そして今後の活動としては、2月から全国ツアー「SARUTABI2021~MEGURU~」が始まる予定です。コロナ禍以降のフォーマットとして、有観客ライブの方法が変わっていったり、配信ライブが増えたり、いろんなスタイルが試されている時代ですけど、モン吉さん自身は今後のライブについて、どんなことを考えていますか?
僕も含め、みんな答えが見つかっていない状況だと思います。「何が正解なんだろうな?」と考えてしまうけど、とにかく配信だけはできるので、ライブ以外にも何かイベントが実施できたらいいなと。さっきスタッフとも話したんですけど、とにかくいろいろ試していかないと、先に進めないですよね。オンラインでのライブもセットリストやコンセプトを変えるところまで至っていないので、そこは数を重ねていかないとわからない部分ではあります。
──今年は生ライブと配信を並行して行う形になりますかね。
そうですね。生のライブも、来てくださるお客さんに迷惑をかけてしまうのはよくないので。みんなが気持ちよく参加できる方法を探していきたいです。