音楽ナタリー Power Push - MONKEY MAJIK

かつての自分を再発見、古くて新しい“ダンス”アルバム

生きることって、毎日修行みたいなもんじゃないですか

──そして「Splash」は「Delicious」とは違った振り切れ方ですよね。いわゆる日本の夏のビーチソング、もっと言うとサザンオールスターズっぽいというか。

Maynard 今までやったことがないことをテーマにしていたので。「チャチャッ、ンチャ」(手拍子)っていうリズムから“ダンス”をイメージして作った曲ですね。それでスプリングリバーブとかを使ってビンテージ感のある音にして。このときに一番やっちゃいけないのが……僕の場合は、作っているときにその時代の音楽を聴くこと。自分の頭の中にしっかりイメージを作っておかないと結局、昔の音楽そのままになっちゃうから。

Blaise(Vo, G)

Blaise この曲はモダンと捉えるとちょっとエイミー・ワインハウスっぽいけど、ノスタルジックに聴くとロイ・オービソンみたいな、なんか古いけど新しい曲。素晴らしいなと思います。

──このアルバムは全体的にもう新しいとか古いとか言えない感じになっちゃってますね。

Maynard そう。僕は今回フィル・コリンズ感を出したくて、ディレイとエコーを意識して作ったんだけど、自分のオケができあがったら全然違うものになってた。半分がっかりだけど、半分「よかったー!」っていう気持ちだったんですよ。たぶんどんなアーティストでもクセとか趣味があるじゃないですか。それをマックスで出すのもよくないよねって葛藤する時期もあるけど、今回はできるだけ出したかった。昔なら「ちょっとダサいけどどうする?」って意見がメンバーから出たかもしれないけど、今回はそれがテーマになってるし。自分では「やりすぎた?」と思っても、意外とそうでもなかったんですよね。

──「オシエテ ワタシヲ オボエテ イマスカ」というフレーズから始まるラストの「The Mistakes I've Made」は、どういう視点で書かれたものなんでしょうか。

TAX なんですかね、その人は(笑)。自分でも書いててわかんなくなったんですけど、メロディにどんどん歌詞を付けていって、言葉がはまっていったときにけっこうゾクゾクっときたんですよ。で、「あ、これたぶんいい曲になりそうだな」と思って。オケができあがってMaynardと歌を入れてたら、「ひさびさにきたな」と思うぐらい、収まりのいい曲になって。

──勝手な解釈ですけど、東北に住む人の目線なのかなと想像しました。

TAX もちろんそういう部分は否定はしません。でも生きることって、毎日修行みたいなもんじゃないですか? みんな同じように、日常の中で自分を見失いかけながら生きてるんだよって、当たり前のことをつづった歌。聴く人によっていろんな楽しみかたをしてもらえるように、いつも通り行間を開けて作ってあるから、そういうふうに捉えてもらえるのは、東北人としてはうれしいですけどね。

──アルバム全体の印象はいかがですか?

TAX 今までたくさん作ってきた曲の中で、Maynardが作った英語の代表曲と日本語の代表曲、Blaiseが作った日本語の代表曲と英語の代表曲っていうのがなんとなく自分の中に何曲かあるんですけど、今回のアルバムの中にはそういうものが凝縮されたような気がするんですね。世界観もいい意味で散ってるし、バランスのいい作品が作れたなと思ってて、満足度がすごく高いです。

ダウンタウンのコントみたいなこと、いつか絶対やりたいと思ってた

──ちなみに「Delicious」のMVの衣装や、エアロビクスのオマージュといったアイデアは誰の提案なんですか?

Maynard コンセプトの提案はこっちからです。

──あそこまでやりきろうと?

TAX ふざけちゃダメって。

Maynard ホントに真面目にやろうと思ってたから、最終的にただのジョークに見えるのが残念なんですけど(笑)、まあそれはそうでしょうねっていう。80年代のエアロビクスの映像をみんなで観て笑いながら、「これを再現したい」と思ったんです。観たのはワールドチャンピオンの映像だったけど、やるんだったら日本版、っていう設定で。

DICK 日本の全国大会で、宮城県が勝ったという(笑)。

──あそこまで振り切ったものを作ったということは、何かMONKEY MAJIKに抱かれているイメージを打破しようという意図が?

TAX いや、もともと持ってるものですからね。今まであんまり見せてなかっただけで(笑)。

Maynard 逆に今の自分たちに一番近いMVになってるんじゃないかな?

TAX ダウンタウンのコントって、ちゃんとしたセットを組んで真面目に演じてるから、緊張と緩和によって笑いが生まれてくるんですよね。感情移入できて引き込まれないとそこまで自分の記憶にも残らないし。おかしなことを本気でやるから面白いっていうのは子供の頃にテレビで観てて気付いてたし、そういうものがみんなに響くって大人になればなるほどわかってきたんで、「いつか絶対こういうことを本気でやりたいな」って思ってたんです。

──「やられたな」と思ってる人はいると思いますよ。

MONKEY MAJIK

Maynard よかった。あのビデオ、画角もこだわったし、カメラ自体も80年代当時のクオリティで撮ってるから、一旦撮影したらもう直せなくて。大丈夫かな?って心配したけど、観てみたら「もうなんにもしなくていいですよね」って感じでした。

DICK 僕たちの間では「新品のVHS感」って言ってたよね(笑)。

Maynard 衣装だけあんな感じにしても、なんにも変に見えないんですよ。で、途中で「あ、髪型だ!」と気付いてウィッグを付けたら「80年代になった!」って。

DICK 「Delicious」をライブでやるとき、お客さんが全員レオタードを着てあのダンスを踊ってるのをステージから見るっていうのがすごい楽しみです(笑)。

──着て来ないですから(笑)。

DICK グッズで売れば着てくるんじゃない?

Maynard 受付で貸し出せば。

Blaise 映画館で3Dメガネを貸すみたいな感じで「もしよければ」って(笑)。

Maynard レオタードを着るのがかわいい子だといいけど、おっさんだと……(笑)。

TAX って言いつつ、自分たちがやったからね。あれやると、もはや何も怖いものなくなるんですよ(笑)。そういうふうに僕らが感じるってことは、うちらのライブを観に来てその格好で踊ることによって次の日から無敵になれるっていう効果があるはず。だから、みんなに勧めたいですよね。

DICK レオタードと変な宗教じみた話を結び付けるの、無理あるから(笑)。

ニューアルバム「southview」2016年3月9日発売 / binyl records
CD+Blu-ray / 5400円 / AVCH-78089/B
CD+DVD / 4860円 / AVCH-78088/B
CD/ 3240円 / AVCH-78090
CD収録曲
  1. Delicious
  2. High
  3. Plastic Girl
  4. Undercover
  5. Utopia
  6. Breathe
  7. Gamer
  8. Kiss Me
  9. Splash
  10. Valentine
  11. Colours of the world
  12. The Mistakes I've Made
DVD / Blu-ray収録内容
  • レコーディングドキュメンタリー映像
ライブ情報
BLUE MOON presents MONKEY MAJIK JAPAN TOUR 2016 -YEAR OF THE MONKEY-
  • 2016年4月9日(土)宮城県 多賀城市文化センター 大ホール
  • 2016年4月10日(日)山形県 山形市民会館 大ホール
  • 2016年4月16日(土)千葉県 浦安市文化会館 大ホール
  • 2016年4月17日(日)埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア 大ホール
  • 2016年4月29日(金・祝)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
  • 2016年4月30日(土)岡山県 倉敷芸文館
  • 2016年5月3日(火・祝)愛媛県 ひめぎんホール サブホール
  • 2016年5月5日(木・祝)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
  • 2016年5月7日(土)熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
  • 2016年5月8日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第2ホール
  • 2016年5月14日(土)沖縄県 桜坂セントラル
  • 2016年5月15日(日)沖縄県 桜坂セントラル
  • 2016年5月29日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2016年6月4日(土)石川県 金沢市文化ホール
  • 2016年6月5日(日)長野県 ホクト文化ホール 中ホール
  • 2016年6月19日(日)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
  • 2016年6月25日(土)大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール
  • 2016年7月2日(土)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
  • 2016年7月8日(金)東京都 中野サンプラザホール
  • 2016年7月9日(土)東京都 中野サンプラザホール
  • 2016年7月22日(金)福島県 福島県文化センター 大ホール
  • 2016年7月24日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
MONKEY MAJIK(モンキーマジック)
MONKEY MAJIK

カナダ人の兄弟Maynard(Vo, G)、Blaise(Vo, G)と日本人のTAX(Dr)、DICK(B)からなる、宮城・仙台在住のロックバンド。 2000年に結成され、2006年1月にbinyl recordsより1stシングル 「fly」 をリリース。ネイティブな英語と日本語が交互に飛び出す歌詞と、洋楽と邦楽の双方の魅力を取り入れたメロディで好評を博す。2ndシングルの 「Around The World」 はフジテレビ系ドラマ 「西遊記」 の主題歌としてヒットを記録する。2011年1月には 「東北観光親善大使」 に任命され、同年から東日本大震災復興支援プロジェクト 「SEND愛」 を主催。その後も東北復興支援に向けた活動を継続している。結成15周年のアニバーサリーイヤーとなる2015年には2月にオリジナルアルバム「Colour by Number」を発表し、東京・日本武道館公演を開催。10月にベストアルバム「MONKEY MAJIK BEST -A.RI.GA.TO-」を発売した。2016年3月には通算10枚目のオリジナルアルバム「southview」をリリース。