音楽ナタリー PowerPush - Monkey Majik+吉田兄弟
ハイブリッドな彼らの遊び心満載7年ぶりコラボ
日本人としてのアイデンティティを知る
──MONKEY MAJIKはカナダ人と日本人からなるバンドで、吉田兄弟は日本の伝統的な楽器を演奏して世界で評価されています。どちらも、日本と海外のよさを融合させたハイブリッドなアーティストという点で共通していると思います。その視点をお借りすると、今、日本人や日本のバンドは海外でどういうふうに見られていると感じますか?
健一 Blaiseが最初のコラボのときに「なんで日本にはこんなカッコいい楽器があるのに、日本人のアーティストは使わないんだ」って言ってくれたんですけど、まったく同じ意見で。自分たちの本質というか、日本人としてのアイデンティティを知らないでやってるのがもったいないって感じがすごくします。アメリカに行くと、結局みんなが知ってる日本のアーティストってものすごい限られてくるんですね。小澤征爾さんだったり。日本人としてのアイデンティティを知ったときに、新しいものが生まれたり、海外との接点を見つけられると思うんです。そういう日本のアーティストが増えてくると、より自信を持って海外に行けたり、たとえ海外のマネっぽくてもマネじゃないって胸を張って言えるんじゃないかな。僕は和楽器奏者としてすごくそう思います。
──自分たちのアイデンティティを理解した上で海外に出ていってるアーティストはまだまだ少ないと?
健一 僕は少ないと思いますね。自然と出してる人はいると思いますけど、自覚を持ってやっている人はそれほど多くはないと思います。昔よりは増えてるでしょうけど。
──MONKEY MAJIKは自覚してやっているアーティストですよね?
健一 ええ、明らかに。
Maynard うれしいな。でも僕たちは、ただ好きなことやってるだけの、海外の経験が少ない外人だけど(笑)。仙台からあんまり出ることもないし。
DICK そうだよね。そういう意味では俺たちはどっちかって言ったら逆いってるね。
Maynard だからかな。アイデンティティを持って、自分のやりたいことやってる人たちって、外に憧れないから意外とそんなに出たがらないってこともあるんでしょうね。
DICK もともとそういう強い意志を持ってる人が全国的に成功するのが難しいみたいな部分があるしね。
Maynard うん。逆に、日本ではあんまり知られてないけど、海外では人気のあるアーティストもいますよね。ちなみに僕、日本に来る前にCorneliusが大好きで、日本に来たらびっくりするほどアンダーグラウンドで「ええ!」みたいな感じだったんですよね。日本で有名だから好きになったっていう理由以外の、オリジナリティを持ったアーティストがもっと聴かれてもいいと思う。
Blaise でも今はいろんな国のアーティストが日本をマネしてますよ。僕はみんながマネしてる国に住んでるからそれで十分と思ってます。日本はクレイジーな感じで、すごい楽しい。
──へえ、日本の音楽って世界で参考にされてるんですね。
健一 そういうところに日本人が気付いてないのが面白いなと思います。それが少なすぎるんですよね。
Maynard そうだよね。
MONKEY MAJIKの最大の魅力は自然体
──そんな状況の中で、自分たちはどういう存在でありたいですか?
健一 僕らは“逆輸入”っていうパターンが嫌いだったので、とにかく日本人が認める音楽を海外に持っていくっていうスタイルにこだわり続けてきたんですよ。だから大小関わらず全国の会館やホールを回ったり、MONKEY MAJIKやほかのアーティストの力を借りて、なるべく入り口を広げようと。自分たちの力を見せたいっていうより、津軽三味線がもともと持ったものを見せたいですね。その引き出しを明けていく作業を僕らが担ってるっていう感覚です。
──なるほど。
健一 だからその役目を考えたときに、MONKEY MAJIKはすごい大切な存在だし、もちろん友達としてもなんですけど、こういうふうに完成される音楽って時代を変えるきっかけになる可能性がすごくあると思います。僕らは、自分たちの音楽が100年後に伝統として存在している可能性があると思ってやってるんです。今だけじゃない音楽だって。だからこういうコラボを通して、ずっと残るいいものを、三味線だけではない曲の形で示せたらすごく価値のあると思っています。
──素敵な言葉をありがとうございます。
DICK 今、健ちゃんの言ったことをまるまる俺が言ったことにしてください(笑)。
一同 あははは!(笑)
──(笑)。お2人から見て、MONKEY MAJIKの魅力ってどんなところでしょうか?
健一 一番は自然体ってこと。それは見た目にも、音楽にも明らかに表れてますよね。
良一郎 どの曲聴いてもMONKEY MAJIKってすぐにわかりますからね。
健一 これってたぶん、4人の空気感が音に録れてるんですよ。不純物を取り除いてキレイに録ることって実はそんなに難しいことじゃないんです。そうじゃなくて、もっと違うところに価値があるっていう。そういうのを示してるグループだと僕は思いますね。
良一郎 うん。無理をせず、楽しみながらチャレンジをしてるっていうのをすごく感じますね、MONKEY MAJIKの音楽に。
Maynard ……なんかDICKがジョークを待ってるけど(笑)。
DICK 自然体に聞こえるエフェクトっていうのを開発して……。
一同 あははは!(笑)
──ここで真剣な回答が来るかと思いましたけど(笑)。でもこれが自然体ってことですね。
健一 そうそう!
Maynard でも、自然体でいようっていうのは1つのルールでもあるので、ある意味で自然体ではないかもしれない。ある程度リアルなうちらを見せたいし、その中でやりたい音楽をやろうと思ってますね。普通に考えれば、人間ってすごく複雑だと思う。みんな聴いてる音楽もバラバラだし、自分のやりたい表現もあるし。すごい複雑だからこそ、あんまり難しく考えなくていいかなって。
tax それはすごい本質を捉えてると思う。それぞれ自分の役割に対しては情熱注いで果たして、全体のバランスを見ながら諦めをしてるっていうか。ちょうど楽しいバランスのさじ加減で「あ、ここまででいいかな」って、精神的な部分でのバトンタッチがうまくできるような感じがある。だから変なところにツッコミすぎないし、引きすぎない、なんとも言えないよさがあるんですよね。「わかってるよね、こいつ」っていう感覚が共有できてるのがいいんですよ。疲れないっていうか。
Maynard ああ。
DICK 普段俺たち仙台にいるけど、仙台の周りの人たちはそういう人多いよね。自然体。
tax なんてすごい間の持ち主なんだ!みたいな人、いるよね(笑)。そういうスタンスだったらもっと息苦しくなく生きれるなって教えてくれる人がたくさん周りにいるから……。
──仙台にいるということも関係してる?
tax そうですね。すごく大事なところだと思います。
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- Monkey Majik+吉田兄弟ニューシングル「夏の情事」 / 2014年7月16日発売 / binyl records
- [CD+DVD] 1944円 / AVCH-78060/B
- [CD] 1080円 / AVCH-78061
- CD収録曲
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- 夏の情事
- Change -FPM LEGENDARY HOUSE MIX-
- 夏の情事 -INSTRUMENTAL-
- CD+DVD盤 DVD収録内容
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- 夏の情事 -Music Video-
- The Making of "NATSU NO JOJI"
BLUE MOON presents MONKEY MAJIK JAPAN TOUR 2014
- 2014年9月13日(土)埼玉県 戸田市文化会館
- 2014年9月28日(日)東京都 中野サンプラザ
- 2014年10月11日(土)東京都 ルネこだいら 小平市民文化会館
- 2014年10月13日(月・祝)新潟県 新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)
- 2014年10月18日(土)福岡県 福岡国際会議場
- 2014年10月25日(土)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2014年11月9日(日)広島県 アステールプラザ 大ホール
- 2014年11月23日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2014年11月30日(日)大阪府 フェスティバルホール
- 2014年12月20日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
MONKEY MAJIK(モンキーマジック)
カナダ人の兄弟Maynard(Vo, G)、Blaise(Vo, G)と日本人のtax(Dr)、DICK(B)からなる仙台在住のロックバンド。 2000年に結成され、2006年1月にbinyl recordsより1stシングル 「fly」 をリリース。 ネイティブな英語と日本語が交互に飛び出す歌詞と、洋楽と邦楽の良さ両方を取り入れたメロディが魅力。2ndシングルの 「Around The World」 はフジテレビ系ドラマ 「西遊記」 の主題歌としてヒットを記録。さらにヨコハマタイヤイメージソングとして「空はまるで」が話題となり、アーティスト性を確立した。 2011年1月には 「東北観光親善大使」 に任命され、同年から東日本大震災復興支援プロジェクト 「SEND愛」 を主催。その後も東北復興支援に向けた活動を継続している。また2012年は、アジアや北米など初のワールドツアーを成功させた。2014年9月から全国10会場で「BLUE MOON presents MONKEY MAJIK JAPAN TOUR 2014」を実施する。
吉田兄弟(ヨシダキョウダイ)
兄の吉田良一郎、弟の吉田健一による津軽三味線奏者ユニット。ともに5歳から三味線を習い始め、幼少期から数々の賞を受賞。1999年にデビューアルバム「いぶき」をリリースし、2003年8月にはアルバム「Yoshida Brothers」で全米デビューを果たす。以降日本国内のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでも広く活動し、2007年には全米のCM「Wii」に楽曲が使用されていっそう名を広めた。また、MONKEY MAJIK、EXILE、ももいろクローバーZ、DAISHI DANCEなど他のアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。