三線っぽくならないように跳ねないことがテーマ

──さまざまな思いの上に完成した「夏の情事」ですが、居酒屋でのセッションから生まれたという先ほどの話からすると、フレーズが先にできたんですか？

Maynard　そうですね。なんとなくのイメージはあって、良ちゃんが過去に弾いてる曲「心に抱かれて」なんです。その時期ずっと（吉田兄弟の）海外ベストを聴いてて、これは聴いたことないような感じだし、メロディアスで、シンプルで。どうかなーって聞いたら「いいんじゃない？ 面白そうだな」って言ってくれて、フレーズができて、そこから少しずつ曲ができていきましたね。

健一　「Change」は三味線の得意な感じですごい刻んでるんですよ。ゆえに今回は刻めないっていうところから、メロディアスな感じにいきたいって言われて。

──夏らしく、レゲエっぽい裏打ちが基本のグルーヴとして流れていますよね。

健一　レゲエっぽいサウンドだと、三味線はどうしても三線っぽくなっちゃうんですよ。なので、そうならないように、三味線だけでメロディがはっきり出るようにしたいとは思ってたんです。イントロにあたる居酒屋のメロディはそれを象徴してるかなって思います。

──三線っぽくならないようにメロディを形作る、とはどういうことですか？

健一　跳ねないっていうことです。タッタタッタタッタタンってならないようにするっていう。メジャーの音階だと、跳ねるとすぐ三線っぽくなっちゃうんですよ。

良一郎　すぐ沖縄に寄っちゃうんだよね（笑）。

健一　なので、そうならないように跳ねないっていうのが自分の中でテーマだったんですよね。

DICK　あえて2番（第2音）、6番（第6音）を入れていく。

健一　そうそう！ 音階的にはそっちを入れていきました。なので途中、三味線でガーッと盛り上がるところ、ビデオクリップでいうダンスしてる部分は、あえてメジャーじゃなくてマイナーにいくっていうふうにしてるんです。そのへんの組み方は作曲段階から一緒に作れたことが大きいですね。

“情事”の描写は三味線パートに集約

──作詞はtaxさんとMaynardさんが担当しました。「夏の情事」という内容の構想はMONKEY MAJIK側から？

Maynard　それも居酒屋から生まれたコンセプトというか。

tax（Dr）　なんとなく男女間の戯れみたいなものをテーマにしようって。居酒屋に行くと、そういうバカ話をするじゃないですか。ま、いつもの通りあーでもないこうでもないってそういう話をしてて（笑）。

健一　しかも、次の日のラジオでその続きを言おうとするしね（笑）。

tax　曲の入り口の「ありがとう さようなら 言いたくなかった」っていうのは、その居酒屋での時間を終わらせたくない、もっともっと楽しい時間を過ごしていたいっていう僕らの気持ちも入ってるし、ストーリーの中の彼と彼女の出会いともリンクしてるんです。導入部分は、僕らの気持ちも登場人物の気持ちも入ってるものにしようと思って、何か面白いこと書けないかねーと話していたんですけど、その3つの言葉は入り口としてすごく気持ちいいねって。それで使いましたね。

Maynard　うん。

tax　「情事」って「夫婦ではない男女の肉体関係」という意味らしいんですね。曲の中では、出会って、恋に落ちて、その“情事”に至るまでの経緯はなんとなく描写してるんだけど、本質的な部分の描写は三味線のパートに集約されてるんです。バチバチいってる感じとか、あそこが情事（笑）。そういう意味で、構成的にも内容的にもすごく面白い作品に仕上がったなって感じてます。「Change」とはまた違った奥深いところに真実があるってことが、曲全体から感じられるので。作品としてのクオリティはもう大満足。本当に。

──確かに言いすぎてないですよね、この曲の詞は。肝心の“事“の部分がサウンドになっているので、リスナーはいろいろ想像を巡らすことができます。

tax　大人のひそやかな楽しみ的な曲なので、あそこをいかにライブで激しくプレイしてくれるかが楽しみで楽しみで。健ちゃん、良ちゃんの性癖が出るね（笑）。

健一　あはは！（笑） やりますよ。