本広監督からの熱いリクエスト
──先ほどのお話だと、セットリストも百田さんがすべて決めたということですよね。
「百田夏菜子ソロコンサート Talk With Me ~シンデレラタイム~」2021年10月17日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト
- 魂のたべもの
- D'の純情
- キミノアト
- 太陽とえくぼ
- 愛・おぼえていますか(オリジナル:飯島真理)
- それぞれのミライ
- 夢の浮世に咲いてみな
- リバイバル
- 強がり(オリジナル:戸田恵子)
- The Show
- 赤い幻夜
- タキシード・ミラージュ
- ひかり
- 白金の夜明け
<アンコール>
- イマジネーション
- わかってるのに
- 渚のラララ
はい、自分で考えました。どういう歌い方、アレンジにしたら曲のイメージが新しくなって聞こえるかなど、ボイトレの先生に相談させてもらいつつ。
──1曲目がシリアスで重い雰囲気のナンバー「魂のたべもの」だったのは意外でした。
1曲目に関してはコンサートの世界観を作りやすい楽曲にしました。私の初めてのソロ曲である「太陽とえくぼ」とか、明るい曲にしようかとも考えたんですけど、一気に非現実的な世界に皆さんを連れていけるような曲がいいなと思って「魂のたべもの」を選びました。2曲目の「D'の純情」も同じ理由ですね。その2曲でコンサートの世界観をまず作り上げようと。そして、1回お客さんを非現実的な世界に連れて行ったあとはその「シンデレラタイム」の中でいろいろ遊べるかなと思い、バラードやロックな曲を入れたり、アレンジを変えてもらったり、曲調がバラバラになるようにして選曲していきました。
──そんな中で、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」の主題歌である飯島真理さんの楽曲「愛・おぼえていますか」については、本広監督からのリクエストだったんですよね。MCではこの曲をセットリストに入れるかどうか悩んだと語っていました。
「歌ってほしい曲がある」って本広さんに前からずっと言われてたんですよ。本広さんが私に歌ってほしい曲は何曲かあって、「愛・おぼえていますか」はそのうちの1曲だったみたいです。コンサートに関しては「全部任せるから。それをうまく伝えられるように力になるから」と言っていただけて、ホントに自由にやらせてもらった中、この曲については頑なで。正直、何度かお断りしたというか(笑)、さらっとスルーしようとしたんですけど、めげずに「愛・おぼえていますか」をリクエストしてきたんです。「まずはぜひ曲を聴いてほしい」と言われて聴いてみたらとても素敵な曲で、本広さんが語る熱い思いも伝わってきました。でも、その思いが強すぎて……映画やこの曲のファンの方も同じように強い思いを持っているだろうし、曲に込められた思いを知れば知るほど私は歌っちゃいけないんじゃないかと感じるようになったんです。
──ちょっと自分には荷が重いと。「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」では「愛・おぼえていますか」が戦争を終結へと導く鍵となった歌として描かれていて、「マクロス」ファン、アニメファンにとっては名曲中の名曲ですからね。
私が歌っても、本広さんが求めているもの、たくさんの人たちに届けるようなものにできないんじゃないか、身の丈に合ってないんじゃないかと思って、改めてリクエストをお断りしたんです。「こんなにいろんなの方の思いが乗っている曲は歌えない」って。そう伝えたんですけど、「大丈夫だから!」と言われて、最終的には「わかりました。歌い込みます」と受け入れることにしました。そこからは覚悟を決めて、どうしたら曲の魅力を崩さずに、歌詞に込められたメッセージをお客さんに伝えることができるのかなとアレンジを相談しながらコンサートに向けて準備していきました。セットリストのどこに入れるかということも含め、すごく難しかった1曲ですね。
最初はゴリゴリのちょっと重ためな恋愛曲だった
──ピアノの演奏を披露した終盤の場面もこのコンサートのハイライトでした。昨年公開の映画「すくってごらん」の撮影のために猛特訓して身に付けたピアノ演奏ですが、その後すっかり自分の表現方法の1つにできたという感覚なのでしょうか?(参照:映画「すくってごらん」Blu-ray / DVD特集)
「すくってごらん」でピアノと出会ったあと、もっとピアノのことを詳しく知りたいなと思って、ソロコンの開催が決まる前からいろいろと勉強していたんです。そしてソロコンを開催することになったときに、ピアノでも表現できることがないかなと思って弾き語りをやらせてもらうことになりました。
──ソロコンでは「すくってごらん」の主題歌「赤い幻夜」や、ももクロとしてカバーしているテレビアニメ「美少女戦士セーラームーンS」のエンディングテーマ「タキシード・ミラージュ」などを弾き語っていました。
ピアノで何曲か披露しようと決めたときに、いろんなテイストの曲を弾き語ってみたいなと思ったんです。いろんな弾き方を見せたいなって。そんな中で、ピアノの弾き語りでは初披露となった「タキシード・ミラージュ」は、かわいらしいテイストの楽曲として選びました。かわいらしい曲と言えば「セーラームーン」の曲かなと思い、何曲か候補がある中でピアノに合う曲としてセレクトした感じです。
──「タキシード・ミラージュ」のあとには、百田さんが自身で作詞した新たなソロ曲「ひかり」も弾き語りで初披露されました。この曲は、新幹線で静岡と東京間を移動している最中にノートに書いた言葉をもとに作詞したとのことですが、どんなことが書いてあったんですか?
ホントにただ思ったことをメモしたもので、もともと歌詞という感じでもなかったんですよ。そのときに経験したこと、感じたことを忘れないように書いたノートなんですけど、特に今回の曲のテーマにしようと思った部分、「ひかり」のもとになった部分についてはすごくだらだらと長く書かれていて(笑)。その中から歌詞にするために言葉をピックアップしていきました。
──そのノートをもとに曲に作ろうと思ったのには、何かきっかけがあるんですか?
ソロコンでも披露した「それぞれのミライ」が、私が初めて作詞させてもらった楽曲で。まだCDとかにはなってないんですけど、前にもライブで歌ったことがある曲だったので、もう1曲くらい新しいソロ曲があったほうがいいかなと思ったんですね。で、せっかくソロコンでピアノを演奏するなら、ピアノ曲にしたらどうかなって。歌詞についてはどんな内容がいいかなと考えていたときに、新幹線で書いていたノートを見て「曲のテーマにぴったりだな」と感じたんです。すでに曲のメロディをいただいてたんですけど、そのメロディに言葉を当てはめていったら雰囲気もぴったりで、すべてがうまくハマったのでこれを歌詞にしてみようと決めました。
──自分で作詞するのは好きですか? 今後も積極的に続けていきたいという気持ちはあるんでしょうか。
いやー、そもそも自分で作詞するなんて、最初は全然そんなこと考えてなくて(笑)。
──「それぞれのミライ」を作詞するまで、まったく視野になかった?
全然です!(笑) 「それぞれのミライ」のときも、自分でもなんでかわからないですけど、「やってみたら?」と言われて「わかりました」と答えちゃったんですよ。作詞について何もわからないのに。いまだに何が正解かわからないですし……というか、作詞に正解なんてないと思うんですけど、いろいろとお仕事をやらせてもらっている中で、1つの新しい表現方法として自分の言葉で曲を届けられるのが新鮮に感じられたんだと思います。それで、自分の言葉を歌詞にするのって恥ずかしく感じるのかなーとか考えながらも挑戦してみて。最初は「それぞれのミライ」の歌詞は今のものとは全然違う内容だったんですよ。ゴリゴリの恋愛曲で(笑)。
──そうだったんですね(笑)。自分の思いを乗せるというより、好きなタイプの曲を書いた感じですか?
自分の好きな感じで書いたら、ゴリゴリのちょっと重ためな恋愛曲ができあがってしまって、自分でも「絶対に違うな」と思ってボツにしました。なんか気取って歌詞を書いちゃったのか、自分とは全然違う世界を想像して、そこに入り込んで作詞したんです。歌詞を書いた紙は捨てちゃったんですけど、それはそれで面白かったですね。捨てなきゃよかったなと今になって思います。知らない自分を発見できたと思いますし。当時は「何書いてんだよ」という感じでしたが(笑)。そのあと、もっと等身大の歌詞にしようと思ってゼロから書き直して、「それぞれのミライ」ができあがりました。
──「ひかり」に関しても、同じように等身大の歌詞にしようと。
そうですね。ソロコンでは普段の私のままでステージに立ちたかったんです。飾らないって言うんですかね。気合いを入れないと言ったら変ですけど、ももクロではいつも「よし! みんなを笑顔にするぞ!」というパワーを持ってステージに立とうと思っているのに対し、ソロコンではそういうことはあまり考えないでいようというか。最初はデニムにTシャツとか、普段の私服みたいな感じでステージに上がろうと思っていたくらいで。その案はスタイリストさんに「やめたほうがいい」と言われてボツになったんですけど(笑)、先ほどお話しした通り、お客さんと1対1で話しているような距離感でいたいと思って「Talk With Me」というタイトルを付けましたし、友達とごはんに行ってその友達の話を聞いたり、私の話を聞いてもらったりするような温度感でコンサートを作りたかったんです。だから「ひかり」の歌詞を書くときも変に背伸びせず、飾らない言葉にすることを意識しました。
2回目のソロコン開催の予定は
──ほかにもソロコンで披露された楽曲について詳しく聞きたいのですが、インタビューの時間が限られてますので、ライブ終盤のMCの話題に移りたいと思います。「みんな思ってるでしょ? 『あいつ、もう(ソロコンを)やらないかもしれないな。だから今観ておかないと』って(笑)。そんなこと言って今後の予定とか、新たに発表できることは何もないんですけど」とあっけらかんと話していたのがまさに百田さんらしくて印象的でしたが、実際のところ2回目以降のソロコン開催に対する意欲はどんな感じなんですか?
今は全然考えてなくて。ドラマ(東海テレビ・フジテレビ系ドラマ「僕の大好きな妻!」)がクランクアップしたばかりというタイミングでもありますし、そもそも自分はあまり計画性がないんですよね。でも、もたもたしていたら会場の空きがすぐなくなるし、ライブを開催するには前もって計画を練らないとダメなんですよね。この間、スタッフさんに「次のソロコンをやりたくなったら早めに伝えてください」と言われました(笑)。正直、まだ全然次の開催は考えてないんですけど、どうです……? やったら観に来てくれますか?
──ファンの方は待ち望んでいると思いますよ。僕も「音楽ナタリー編集部が振り返る、2021年のライブ」という記事の中で百田さんのソロコンをピックアップしたくらいですから(参照:音楽ナタリー編集部が振り返る、2021年のライブ)、2回目の開催が待ち遠しいです。
その記事、見ました! めちゃくちゃうれしかったです。じゃあ、また観てもらえるようにがんばりたいと思います(笑)。
──百田さん自身としては、初めてソロコンを開催した手応えはどうだったんですか? またやってみたいと思えるような満足感を得られたのかどうか。
すごく幸せな時間でした。コロナの影響でステージに立つ機会も少なくなっていた中での開催だったので、いつも応援してくださっている方の前に立てる幸せを感じました。あと、コンサートが終わって楽屋に帰ってきたら、スタッフさんとか周りの方々が涙を流しながら「この2日間、ホントによかったよ」「ありがとう」といろんな言葉をかけてくれたんです。「あれ? 私、卒業するのかな……?」と思うくらいの雰囲気で(笑)。私だけじゃなく、周りのスタッフさんの思いも乗せさせてもらったライブでしたし、ファンの方からもたくさん感想をいただきました。そのおかげで去年の12月には映画館でライブ映像を上映させてもらいましたし(参照:ももクロ百田ソロコンのディレクターズカット版上映、ライブCDも限定販売)、今回こうやってBlu-rayやDVDとして発売できるのもすごくうれしいです。
プロフィール
百田夏菜子(モモタカナコ)
1994年7月12日生まれ、静岡県出身。2008年に結成されたももいろクローバーZのリーダーで、担当カラーは赤、キャッチフレーズは「茶畑のシンデレラ」。女優としても精力的に活動し、2016年10月より放送されたNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」にてメインキャストの1人に選ばれた。映画「かいけつゾロリ ZZのひみつ」「ブラックパンサー」などで声優も務め、2020年11月公開の「魔女見習いをさがして」ではメインキャラクターの1人を演じた。2021年3月公開の映画「すくってごらん」にヒロイン・生駒吉乃役で出演し、10月には埼玉・さいたまスーパーアリーナで初のソロコンサート「百田夏菜子ソロコンサート Talk With Me ~シンデレラタイム~」を開催。2022年6月より東海テレビ・フジテレビ系で放送の「僕の大好きな妻!」で連続ドラマ初主演を果たした。
『Talk With Me ~シンデレラタイム~』LIVE Blu-ray & DVD|ももいろクローバーZ RELEASE COLLECTION