ももすももすのニューシングル「エソア」が配信リリースされた。
「エソア」はEPICレコードジャパンへの移籍第1弾シングルで、テレビアニメ「魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ II」のエンディングテーマに使用されている。
1月上旬に行われたこのインタビューでは、東京・豊川稲荷東京別院にて初詣も兼ねて、レーベル移籍という新たな門出にあたっての願掛けをしてもらった。絵馬に書いた願いごとは「日本一愛されるアーティストになれますように」。この願掛けに込めた思いや、豊川稲荷で引いてもらったおみくじの結果についても話を聞きつつ、新曲や今後のビジョンについて語ってもらった。
取材・文 / 小野田衛撮影 / 清水純一
絵馬に込めた思いと、おみくじの結果
──今回は心機一転となるレーベル移籍と新年を迎えるにあたって、絵馬に願いごとを書いてただきました。「日本一愛されるアーティストになれますように」とのことですが、この言葉に込められた思いとは?
これはレーベル移籍うんぬんというよりは、普段から考えていることではあるんです。とにかく自分の曲を愛して、リスナーの方にも愛される曲を作りたい。それから、やっぱり健康第一! 「心身ともに健康でありながら、アーティスト活動を長く続けていきたい」という思いで、大真面目に書かせていただきました。
──やはり健康問題は重要ですか。
とても重要です! 特に私の場合、健康がすべてと言ってもいいくらいです。というのも、去年は体調を壊しちゃって、ほとんどライブ活動ができなかったんですよ。結局、何をやるにしても体調がいいことが前提となるじゃないですか。体調というのは、メンタルの部分も含めての話ですが。
──確かにそうですよね。今回は絵馬のほかに、おみくじも引きました。
……末吉でした。見た瞬間、なんとも言えない気持ちになりましたが(笑)。実際、どうなんですか? 末吉って。
──神社によっても違うみたいですけど、凶が最悪で、その次にひどいのが末吉というケースが多いようです。
ブービーってことか。それはそれで中途半端だなあ。普通、こういう神社のおみくじって吉とかばかり出るものだと思うんですよ。こんな忖度なしのガチおみくじだとは想像もしていなかったです(笑)。そして何よりも私が気になったのは、健康面についての記述ですよ!
──「苦病兼防辱」とありますね。
「やまいにくるしむうえにまた はぢをうくることあるべしとなり」だって(笑)。これだけ健康になりたいと言っている私に対して、あんまりじゃないですか? 去年は食事もできず苦しんでいた時期があったのは事実ですが、今はちゃんと1日3食を食べていますし。これからは健康になる一方だと思いますよ。ちょっとこのおみくじの言うことは信用できないですね。
──おみくじの結果に異議申し立て(笑)。
そもそも、こんな結果に惑わされているようでは人生うまくいくわけないんです。自分の人生は自分で切り拓くものですから。占いとかにハマる人って、どこか心が弱っているんじゃないですかね。末吉という結果が出たから言うわけではありませんが、こうやって他人の運命をとやかく言ってくること自体、私は好きじゃないんですよ。
──企画自体を全否定するようなコメント、ありがとうございます(笑)。
いや、このおみくじによって闘志が奮い立たせられたので結果オーライだと思います(笑)。
どんどん新しい世界を覗いてみたい
──今回のレーベル移籍ですが、具体的には何がどう変わったのでしょうか?
一番大きいのは、チームメイトが変わったということでしょうね。それによって実際の活動内容はもちろんのこと、私の気持ちも大きく変わりましたし。音楽面に関して言うと、バンドのメンバーも変わったんですよ。今まではドラムは打ち込みだったんですけど、今回のシングル「エソア」からドラマーの方に叩いてもらっているんです。やっぱり生音のドラムがカッコいいなとシンプルに感じるようになりまして。
──ももすももすさんはもともとバンド(メランコリック写楽)で活動していましたが、原点回帰という意味合いもあるんでしょうか?
バンドからソロになった当初は「なんでも自分でできる」と考えていたんです。でも今振り返ってみると、ちょっとその部分で凝り固まっていたのかもしれませんね。もっと心をオープンにして、どんどん新しい世界を覗いてみたいと私自身が思うようになってきまして。「ドラムを人に頼んでみたらどうなるんだろう?」みたいな興味もあったし、実際に仕上がりもすごくよかったですから。うん、そのへんは自分の中でけっこう大きな変化だったかもしれない。
──なるほど。ほかにもレーベル移籍後の初シングル「エソア」の制作過程で感じたことはありますか?
このシングルを言葉で表現するとしたら、「チーム一丸」ということになると思います。ドラム、ベース、ギター、多くのスタッフさん……全員が同じ方向を向いて作ることができたんですよ。結局、創作しているときは家でひとりぼっちなんですね。それはバンド時代から同じですけど。自分の内面と向き合わないと、曲なんて書けないですから。でも土台を1人で作ったとしても、それを完成させるときは最終的にチームで作業することになるので。
──今はDTMで最初から最後まで1人きりで作業するスタイルのアーティストも存在します。ももすももすさんの場合、やはり仲間が必要だった?
今の音楽情勢を見ながら感じていたのは、「このまま1人でやっていても、何も変わらないんじゃないか?」ということなんです。自分の音楽が、これ以上は広まらないんじゃないかという気がしたんですよね。だったら新しい人に頼んで、可能性を広げていきたかった。
──ところで「エソア」というのは、どういった意味なんですか?
「絵空事」の「愛」で「エソア」です。「絵空事の中にも愛はちゃんとあるんだよ」というのが歌詞のテーマ。この曲によって、私自身も聴いた誰かも救われたらいいなと思っています。実際、ファンの方から「励みになった」「救われました」といったご意見をいただくこともありますし、そんなふうに言われると歌っている私自身も救われますから。
──「エソア」に限らず、ももすももすさんの歌詞は「文学的」「哲学的」と言われることが多いですよね。インスピレーションはどこから湧くんですか?
ありきたりな言葉を使って歌詞を作るのが嫌いなんです。自分なりの言葉で自分の気持ちを正直に伝えたいから、そうするとどうしても世間によくあるような歌詞とは違ってきちゃうんですよね。つまり独特な言葉遣いになってしまう。あと、世の中に存在するのに使われていない素敵な単語ってたくさん残っていると思っていて。それを使いたいんですよ、私は。もったいないから。
──無二のオリジナリティが感じられます。ほかの人の影響下にないと言いますか。
歌詞に関しては、ありきたりな言葉だと耳に残らないという面もありますよね。ちなみに好きなアーティストはsyrup16gとPeople In The Boxですけど、そんなに影響は受けていないかもしれない。いつも曲を書くときに考えているのは、人を傷付けるような曲にはしたくないということですね。
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「かわいい曲」と言われてしまうことへの葛藤