ももいろクローバーZ 10周年記念特集|第2回 ベストアルバム全曲レビュー&ライブ映像で紐解く“週末ヒロイン”の魅力

スケールアップしていくライブパフォーマンス

観客もまばらだった路上ライブからスタートし、5月22、23日についに東京・東京ドームの大舞台に立つももクロ。彼女たちは常に全力のパフォーマンスでファン1人ひとりに笑顔を届け、感動を与え続けてきた。また趣向を凝らしたエンタテインメント性の高い舞台演出も見どころの1つだ。このパートではそんな彼女たちのライブの魅力が感じられる映像をピックアップして紹介する。

「TOKYO IDOL FESTIVAL 2010」2010年8月8日 東京都 ステラボール(メインステージ)

原点にして最大の武器である全力パフォーマンス

2011年公開の映画「モテキ」に「TOKYO IDOL FESTIVAL 2010」出演時のももクロのライブ映像が使われたことを覚えている人も多いだろう。当時、彼女たちは結成から2年あまりでメジャーデビューを果たし、熱狂的なファンはすでに存在していたもののその母数は決して多くない状況だった。しかし「TIF2010」のメインステージで汗だくになりながら懸命に歌い踊る姿が映画やインターネットを通じて拡散され、認知度が高まるきっかけとなった。なお2017年5月、百田夏菜子はUstreamのmomocloTV内で「TIF 2010」のライブ映像について、「歌もうまくないし、かわいくもないし、ダンスもうまくないけど、伝えようとしたら伝わるんだなっていうのは実感したんです。だけどあの映像は嫌いです(笑)」と言及。ファンとの思いを1つにする全力のパフォーマンスこそがももクロの原点であり、会場の規模がどんなに大きくなろうともその熱量が変わることはない。

「ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会」2011年12月25日 埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

ファンとの絆を深めた試練期のライブ

ももクロは2011年4月10日の早見あかり脱退後、ももいろクローバーZに改名。その翌日から7日間連続で「試練の七番勝負」を実施したり、1日に2時間のワンマンライブを計3回行ったりと過酷な公演をこなし、さらには全日本プロレスの大会への参戦などアイドルらしからぬタフな活動で注目を集めた。「ももクリ 2011」はそんな激動の1年を過ごした彼女たちの締めくくりとして実施された公演で、会場は当時の彼女たちにとって最大規模となる埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われた。ライブは総合格闘技イベント「PRIDE」のオマージュと見られる仕掛けが随所に。ライブ前の楽屋の実況中継に始まり、「PRIDE」オープニングテーマの使用やレニー・ハートによる曲紹介、さらには覆面姿の“グレートクローバーZ”が登場するなど、遊び心あふれる演出でモノノフを楽しませた。一方で改名前から掲げていた「NHK紅白歌合戦」への出場が叶わなかった時期でもあり、オープニングで1万人のモノノフからの大歓声を受けた彼女たちの目には涙が。さらなる壁に立ち向かう彼女たちにとって、ファンとの絆を深め、決意を新たにしたライブとなった。

「ももクロ夏のバカ騒ぎ2014 日産スタジアム大会~桃神祭~」2014年7月26日、27日 神奈川県 日産スタジアム

スタジアムを1つにしたお祭り空間

2012年から開催されていた「夏のバカ騒ぎ」は、2014年には「桃神祭」というサブタイトルが付けられ“祭り”をコンセプトに行われた。会場後方からでも一目瞭然の存在感を放つ巨大な神社や太鼓橋などの豪華ステージを舞台に、ももクロは日本各地のお祭り団体とタイトル通り“バカ騒ぎ”。またアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」のテーマソング「MOON PRIDE」「月虹」ではステージ全体を使った照明演出と壮大な映像で観客を圧倒した。一方で「ココ☆ナツ」ではメンバーが観客めがけてウオーターキャノンで放水を行い大はしゃぎしたり、「行くぜっ!怪盗少女」ではダウンタウンももクロバンドによる和風アレンジの生演奏にあわせて神輿に乗ってスタジアムを1周したりと、ファンとの触れ合いを楽しむパフォーマンスも。スケール感と親近感を両立させたエンタテインメント性の高いステージで、各日6万人以上が集結したスタジアムを1つにした。

「MOMOIRO CLOVER Z DOME TREK 2016 “AMARANTHUS/白金の夜明け”」2016年4月2日、3日 埼玉県 西武プリンスドーム

個々のスキルアップを鮮明にしたコンセプトライブ

ももクロにとって初のドームツアー。開催直前に2作同時リリースされた3rdアルバム「AMARANTHUS」、4thアルバム「白金の夜明け」というコンセプトアルバムの世界観を表現する内容となり、5都市9公演で25万2078人を動員した。アルバム完成時に百田夏菜子は「アイドルのアルバムなのに、こんなにいろんなタイプの楽曲が収録されているんだって思う人もいるかもしれないですけど、それ、逆ですから。(中略)アイドルだからこそこういうアルバムができたんですよ」とコメント。“用意された楽曲”から“自分たちが携わった楽曲”を表現しようとする意識がうかがえる。ライブは空中ブランコや気球の乗りながらの歌唱、大道芸人との共演など、まるでサーカス会場にいるかのような華やかかつ幻想的な内容に。すでにライブを一大エンタテインメント空間として表現することに成功しているももクロだが、このツアーで彼女たちはアルバムの完全再現という新たな壁に挑んだほか、楽器演奏やタップダンスなどのソロパフォーマンスも披露。個々人の“表現者”としての成長をファンにアピールした。

「ももいろクローバーZ 2018 OPENING ~新しい青空へ~」2018年1月21日 千葉県 幕張メッセ国際展示場 9~11ホール

新たなスタートを切った世界のももクロ

結成10周年イヤーに入った2018年1月、有安杏果が突如卒業を発表した。そのわずか1週間後に急遽開催されることとなったこの公演は、5人のももクロの終わりと、4人のももクロの始まりを告げる内容となった。「あの空へ向かって」は2008年の結成時、百田夏菜子、玉井詩織、高城れにを含む当時のメンバーが作詞した楽曲。卒業していく有安を見送ったあと、ライブの最後に百田、玉井、佐々木彩夏、高城の4人は、新しいフォーメーションと歌割りでこの曲を披露した。ファンによる盛大な「世界のももクロ、ナンバーワン!」コールが場内に響きわたり、結成10周年で新たなスタートを切ったももクロの門出を祝った。

※特集公開時、固有名詞に誤りがありました。訂正してお詫びします。


2018年5月31日更新