音楽ナタリー Power Push - ももいろクローバーZ「AMARANTHUS」「白金の夜明け」完成記念座談会
チームももクロの一翼を担う作家陣が集結
ももクロの恋バナが参考にならなかった理由
──只野さんは作詞をする前に “死”と“恋”について、ももクロと話し合ったそうですね。メンバーは死ぬことについての意見は反映されたけど、恋の話は「まったく参考にならなかった」と言われたと話していました(参照:ももいろクローバーZ「AMARANTHUS」「白金の夜明け」インタビュー)。
只野 “死”については「バイバイでさようなら」のために話して、“恋”については「サボテンとリボン」に反映させるつもりでメンバーとお話しました。恋に関しては「恋をしたらこんなことをしてみたい」と年頃の女の子らしい話がいろいろ聞けるかなって思ってたんですけど……そういうのが全然出てこなくって(笑)。
宮本 本人たちに理想を聞くにしても、幼稚すぎたという……。
前田 そもそもまだ若いし、仕方ないよねえ。
只野 でも彼女たちはすごくしっかりしてるんですよ。「心がつながったら、それは恋だ」とか、「恋をしたらいつか結婚して、子供を産んで。そして寂しくなるからできれば相手より先に死にたい」とか。意見をまったく反映してないってことはないんです、ただそのときに歌詞の参考にするために聞きたかった年頃の女子っぽい意見が皆無だったから「本当になんにもないんだね」って言っちゃったっていう。
──なるほど。
只野 「サボテンとリボン」には「最初の恋」「最後の恋」という言葉があって、そこにメンバーの思いを込めました。恋をしたら、その人とずっと一緒に人生を歩んでいきたいという気持ち。あとは普段楽屋で恋の妄想をしたり、日頃から恋愛映画をよく観たりしてるって話は聞いていたので、「恋愛映画」も今の彼女たちが持っている恋に対するイメージとしては大切だろうなって思って、歌詞に採用しました。
作家陣お気に入りの収録曲
──皆さんアルバム全体を聴いて気になった曲はありますか?
横山 「サボテンとリボン」を聴いて、神前暁さんの曲はすごい神前さんらしい曲だなあって思いました。
宮本 神前さんは「涼宮ハルヒの憂鬱」「化物語」といった人気アニメの曲をたくさん書いている方で、今回ご縁があってお願いできました。
AKIRASTAR 僕も神前さんの曲、大好きです。
──NARASAKIさんはどうですか?
NARASAKI NAOTO(ORANGE RANGE)くんの作った「カントリーローズ -時の旅人-」が素晴らしかったな。作家が到達できないところにいるというか……ほんとすげえっす(笑)。
──ももクロ作品初参加の清竜人さんの楽曲はどうでしたか。
只野 「イマジネーション」がよかったです。あの中に出てくる女の子が大好きになりました。
NARASAKI ああ、そういう見方もあるのか。
横山 僕は「白金の夜明け」の諸事情でくじけそうになったこともあったけど、完成した作品全体を聴いて元気をもらいました(笑)。
岩里 「白金の夜明け」のミュージックビデオが年明けてすぐに公開されたでしょ。それを観て横山さんがドラマチックな曲に仕上げたのもすごいと思ったし、歌詞については「ああ、前田くん……これ好き」ってなった(笑)。前田くんの歌詞の中で一番好きになりましたよ、本当に。
前田 絶賛してくれてありがとう(笑)。
──では前田さんが気になった曲は?
前田 「夢の浮世に咲いてみな」ですね。僕は11、12歳くらいからずっとKissが好きだから。Kissとももクロがコラボするって知ったとき、いつ作るのかなって思ってたんだけど、もうそのときにはできあがっててちょっと宮本くんを恨んだね(笑)。「誰が歌詞書いてんだよ!」と思って、クレジット見たら祐穂さんだったから「ああ、ならしょうがないか」って。
──なるほど。
前田 あとやくしまるえつこさんの「HAPPY Re:BIRTHDAY」はタイトルからしてすごくよかった。
岩里 私もすごい好きです。アルバムのコンセプトに見事にハマってましたね。
また恋の話をしようね
──ももクロについて、今思っていることを聞かせてください。
横山 「白金の夜明け」は本質的な歌の表現力が求められるストレートな曲だったんですが、それがすごくいい形でまとまっていたので、メンバーには感謝してます。ライブでは振り付けもあるから大変だと思うけど、この曲を歌う5人の姿を早く観たいなって思いました。で、ライブで歌い続けてもらって、さらに表現力豊かに歌ってくれる姿も楽しみにしています。
AKIRASTAR ドームツアーで「ゴリラパンチ」を歌ってもらって、みんなでウッホウッホしていただけたらうれしいです(笑)。
只野 新作の収録曲はどれもお世辞抜きに素晴らしい曲ばかりでした。メンバーも短い制作期間の中で本当にがんばったんだろうなって。しかもこれから振り付けをマスターしてツアーに出発するわけでしょう? ライブも楽しみにしてます。あと、ももクロちゃんには「また恋の話をしようね」って伝えたいです(笑)。
NARASAKI 「桃源郷」はももクロに楽しくライブで歌ってほしくて作った曲なので、メンバーとモノノフで気持ちよくなってもらいたいなって。そういう気持ちでいっぱいです。
前田 僕はももクロを見ていて、人は生まれながらにして善であるという性善説が本当は“性ダメ説”なんじゃないかって感じるんです。ももクロはもともとダメなところがたくさんあって、それを克服するために一生懸命がんばってここまで来ている。だからメンバーはモノノフに向けて「私たちはダメなことを乗り越えてきているから、あなたたちもダメだって思ってることがあったらがんばりなさい」という気持ちを投げかけてるんだと思う。僕がももクロの歌詞を書くときに叱咤激励というか、Sっぽい内容になるのはそういう理由があるからなんです。
岩里 “性ダメ説”かあ。確かにあの子たちはファンに向けて「自分の殻をぶち破る勇気を持ちなさい」って言ってくれてるような気がしますね。私は「シルク・ドゥ・ソレイユ」のCMを観たとき、頭に浮かんだのがももクロでした。「シルク・ドゥ・ソレイユ」は普通のサーカスに物語性を取り入れて総合芸術にまで発展させたもので、彼女たちの場合はアイドルという殻を突き破って、ストーリー性もビジュアルも常に新しい要素を取り入れてますよね。ももクロは総合芸術であり、総合エンタテインメントなんだなって。私はその一翼を担う作詞家として、これからもいろいろなことを提案していきたいです。只野さんと同じで私も彼女たちがもっと年齢を重ねたとき、一緒に恋愛の話ができるようになったらいいな。
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- ももいろクローバーZ「AMARANTHUS」「白金の夜明け」
- 第1弾 メンバーインタビュー
- 第2弾 作家陣座談会
- 3rdアルバム「AMARANTHUS」 / 2016年2月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 4104円 / KICS-93308
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KICS-3308
- 4thアルバム「白金の夜明け」 / 2016年2月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 4104円 / KICS-93309
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KICS-3309
「AMARANTHUS」CD収録曲
- embryo -prologue-[作曲・編曲:tatsuo]
- WE ARE BORN[作詞:藤林聖子 / 作・編曲:tatsuo]
- モノクロデッサン[作詞・作曲:CLIEVY(C&K)/ 編曲:小松一也]
- ゴリラパンチ[作詞:ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)/ 作・編曲:AKIRASTAR]
- 武陵桃源なかよし物語[作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:橋本由香利]
- 勝手に君に[作詞:ももいろクローバーZ、NAGAE / 作・編曲:大隅知宇]
- 青春賦[作詞:桑原永江 / 作曲:しほり / 編曲:冨田恵一]
- サボテンとリボン[作詞:只野菜摘 / 作詞・編曲:神前暁]
- デモンストレーション[作詞・作曲・編曲:清竜人]
- 仏桑花[作詞・作曲:さだまさし / 編曲:近藤研二]
- 泣いてもいいんだよ[作詞・作曲:中島みゆき / 編曲:瀬尾一三]
- Guns N' Diamond[作詞・作曲・編曲:zopp・小林史知・岡村夏彦]
- バイバイでさようなら[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
- HAPPY Re:BIRTHDAY[作詞・作曲:ティカ・α / 編曲:やくしまるえつこ、山口元輝]
「AMARANTHUS」初回限定盤Blu-ray収録内容
- 「WE ARE BORN」Music Video
- 「モノクロデッサン」Documentary Music Video
- Documentary of "AMARANTHUS"
「白金の夜明け」CD収録曲
- 個のA、始まりのZ -prologue-[作曲・編曲:NARASAKI]
- 桃源郷[作詞:森由里子 / 作・編曲:NARASAKI]
- 白金の夜明け[作詞:前田たかひろ / 作・編曲:横山克]
- マホロバケーション[作詞:六ツ見純代 / 作・編曲:invisible manners]
- 夢の浮世に咲いてみな[作詞:岩里祐穂、ポール・スタンレー(Kiss)/ 作曲:ポール・スタンレー、グレッグ・コリンズ / 編曲:Kiss、グレッグ・コリンズ]
- ROCK THE BOAT[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:グレッグ・カースティン、ニコール・モリエ]
- 希望の向こうへ[作詞:桑原永江 / 作・編曲:佐藤晃]
- カントリーローズ -時の旅人-[作詞・作曲・編曲:NAOTO(ORANGE RANGE)]
- イマジネーション[作詞・作曲・編曲:清竜人]
- MOON PRIDE[作詞・作曲・編曲:Revo]
- 「Z」の誓い[作詞:森雪之丞 作曲:NARASAKI 編曲:NARASAKI、ゆよゆっぺ]
- 愛を継ぐもの[作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:Tom-H@ck]
- もっ黒ニナル果て[作詞:MURO、BOO / 作・編曲:MURO、SUI]
- 桃色空[作詞・作曲:堂本剛(KinKi Kids) / 編曲:堂本剛、十川ともじ]
「白金の夜明け」初回限定盤Blu-ray収録内容
- 「マホロバケーション」Music Video
- 「白金の夜明け」Documentary Music Video
- Documentary of “白金の夜明け”
ももいろクローバーZ(モモイロクローバーゼット)
百田夏菜子、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの5人からなるアイドルグループ。2008年に「週末ヒロイン」「今会えるアイドル」というキャッチフレーズを掲げ、ももいろクローバーとして結成。2009年7月に1stシングル「ももいろパンチ」をリリースし、2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。 2011年4月に行われた東京・中野サンプラザホール公演を最後に、メンバーの早見あかりがグループを脱退。このライブ終了直後、ももいろクローバーZへと改名し、5人編成での活動をスタートさせた。2011年7月にももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を発表。2012年にはグループ結成当初から目標としていた「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2013年4月に2ndアルバム「5TH DIMENSION」をリリースし、2014年3月には女性グループとして初となる東京・国立競技場での単独ライブを成功させた。2015年1月、「ももいろクローバーZ vs KISS」名義でKissとのコラボシングル「夢の浮世に咲いてみな」を発表。また女優としての活動も行い、青春群像小説「幕が上がる」の映画版および舞台版では主演を務めた。同年夏に静岡・エコパスタジアムでワンマンライブ「ももいろクローバーZ 桃神祭2015 エコパスタジアム大会 ~遠州大騒儀~」を開催。12月には群馬・軽井沢スノーパークでクリスマスライブ「ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~」を実施し、12月31日から2016年1月1日にかけては東京・豊洲PITで初の年越しライブ「第一回ゆく桃くる桃『笑顔ある未来』」を行った。2016年2月に3rdアルバム「AMARANTHUS」、4thアルバム「白金の夜明け」を同時リリース。同月より新作を携えたドームツアーを開催する。