音楽ナタリー Power Push - ももいろクローバーZ「AMARANTHUS」「白金の夜明け」完成記念座談会
チームももクロの一翼を担う作家陣が集結
楽曲誕生までの過程
──岩里さんは2012年発表の「LOST CHILD」から参加していますね。
岩里 今日のメンバーの中だと途中参加って感じになりますね。オファーが来るまでももクロのことを知らなかったんですよ。で、周りの人に「ダメですよ、ももクロはすごいんですから!」って言われて。宮本さんからは「岩里さんは“哲学担当”なので、難しい歌詞でOKです」ってお願いされたのかな。そのあと横浜アリーナでライブを見たら、自分の詞だけちょっと真面目すぎちゃったかなと反省したりして。
NARASAKI 大丈夫ですよ、「♪君が行方不明」ってフレーズは全然真面目に感じなかったから(笑)。
岩里 でも私、「本当は面白い歌詞も書けるのよ!」って言いたかった(笑)。そのあと「サラバ、愛しき悲しみたちよ」(2012年11月発表の9thシングル)の依頼を受けたときには「よし、この曲では遊んでやるぞ」って決めたんです。
──前田さんは1stアルバム「バトル アンド ロマンス」(2011年7月発売)に入っている「CONTRADICTION」から参加なさっています。
前田たかひろ ももクロが売れる前、友達の放送作家に「ももクロってアイドルがいて、絶対売れるから見ててくれ」とかなり言われたんで存在はオファーされる前から知っていました。それから何年か経って宮本くんからオファーが来て、「CONTRADICTION」を書くことになったんです。内容はお任せってことだったんで、まず過去作品のクレジットをチェックしたら、前山田健一さんがほとんどの曲を書いていて。似たものを書いても意味がないから切り口を変えた歌詞を書きました。
──前田さんは「CONTRADICTION」のあと、「DNA狂詩曲」とそのアンサーソング「BIRTH Ø BIRTH」も書いています。どの曲も前山田さんの曲にはない、クールさというか……。
前田 Sっぽい感じを意識しています。モノノフさんをMとすると、メンバーがSになるイメージで。
コンセプトに見合った人選を
──宮本さんはどのように作家さんを選んでいるんですか?
宮本 それぞれの曲に役割があるので、最初に「この曲はこういうテンションにしたい」と決めて、その設計図にあわせて皆さんにお願いする形を取っています。
──今回は「AMARANTHUS」「白金の夜明け」でそれぞれ違ったコンセプトがあります。作家さんには先にコンセプトの説明をしたんですか?
宮本 全員ではないんですが、アルバムのコンセプトを伝えてからオファーしました。
岩里 ホワイトボードに書きながら、それぞれのアルバムの作家陣をどうするかチーム分けをしてましたね。「この人はファンタジー担当だから『白金の夜明け』でお願いする」みたいに。
NARASAKI 僕はハッキリと説明を受けましたよ。
宮本 ナッキー(NARASAKI)はそのときいなかったでしょ?(笑) でもナッキー作曲の「桃源郷」は昔から原型があった曲で、今回どっちのアルバムのどこに収録するかを話し合いました。で、それを「白金の夜明け」の2曲目に入れることにしたんですけど、導入の流れを作りたかったので「個のA、始まりのZ -prologue-」を新たに作ってもらいました。
NARASAKI 僕は「白金の夜明け」の1曲目と「AMARANTHUS」のエンディング(「HAPPY Re:BIRTHDAY」)がリンクする形にしたかったんです。
──確かに「個のA、始まりのZ -prologue-」のイントロでは「HAPPY Re:BIRTHDAY」のメロディが引用されてますね。
NARASAKI 新作について宮本くんと話しているときにリンカーネーション、輪廻転生というキーワードがあったので、2作がつながるようにフェードインから始まる形で作りました。
──AKIRASTARさんは今回、ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)さん作詞の「ゴリラパンチ」で参加しています。制作にあたって意識したことは?
AKIRASTAR 2015年の夏に「桃神祭」を観させていただきまして、あまりのスケールの大きさに自分は人間的にも作品的にもまだまだ小さいなと思いました(笑)。なので今回オファーをいただいたときは、ももクロのスケール感に見合うような仕事をしたいなと思いました。ANCHANGさんと話し合って作ったわけではないんですが、宮本さんと打ち合わせをしたときに「『ゴリラパンチ』というキーワードに負けないような曲を」とだけは言われていたので、とにかくがんばりました(笑)。
ひっくり返って生まれた「白金の夜明け」
──横山さんはファンタジー要素の強い「白金の夜明け」の表題曲を作曲しています。まずどういう話があったんでしょう?
横山 最初に受けたオーダーから諸事情で内容がガラッと変わるっていう出来事がありました(笑)。
──諸事情?
宮本 ちょうど横山さんに曲をお願いしたタイミングが2つのアルバムのどこにどの曲を置くか、パズルみたいに悩んでた時期だったんです。最初は「3rdアルバムに入れるための曲を」と伝えてたけど、全体像がだんだん固まっていく中で「やっぱりこれは違うかも」って。同時進行で堂本剛(KinKi Kids)さんに書いていただいた「桃色空」(ピンクゾラ)と、横山さんの曲のバランスをどう取るかも最後まで悩みました。
──「白金の夜明け」ではKissとのコラボ曲「夢の浮世に咲いてみな」、グレッグ・カースティン提供の「ROCK THE BOAT」と海外アーティストも参加しています。どちらも日本語歌詞は岩里さんが担当なさっています。
岩里 4thアルバムでは“外国人担当”になってますね(笑)。
──「ROCK THE BOAT」はどういった経緯で今作に入ることになったんですか?
岩里 2年くらい前から温めていた曲なんですって。
宮本 もともとこの曲はももクロのためにあったわけではないんです。たまたまデモを聴かせてもらって気に入って、ももクロのための曲にしたいなと。
──ももクロにハマるかもしれない、と。
宮本 でも2年前のタイミングだとそのときの本人たちにハマらなかったから、もう少しメンバーたちが成熟してから使いたいなと。だから「近い将来、ももいろクローバーZというアーティストに歌わせたい」と、ももクロの資料をお送りさせていただいたうえで、作家さんに許諾を取って、デモの段階で制作を保留してもらっていたんです。
──機が熟したところで新作に入れることが決まり、岩里さんに日本語歌詞をお願いしたんですね。
岩里 曲をいただいたときからサビに「ROCK THE BOAT」ってフレーズがハマると思っていたんです。だから宮本さんに“ラスボス”がどうのこうのってイメージを言われたんだけど、無視して作っちゃいました。設計図は壊したかもしれないけど、大丈夫だった?
宮本 アルバム内でのポジションを若干変えましたが、ちゃんとハマってましたし、バッチリでしたよ。
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- ももいろクローバーZ「AMARANTHUS」「白金の夜明け」
- 第1弾 メンバーインタビュー
- 第2弾 作家陣座談会
- 3rdアルバム「AMARANTHUS」 / 2016年2月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 4104円 / KICS-93308
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KICS-3308
- 4thアルバム「白金の夜明け」 / 2016年2月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 4104円 / KICS-93309
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KICS-3309
「AMARANTHUS」CD収録曲
- embryo -prologue-[作曲・編曲:tatsuo]
- WE ARE BORN[作詞:藤林聖子 / 作・編曲:tatsuo]
- モノクロデッサン[作詞・作曲:CLIEVY(C&K)/ 編曲:小松一也]
- ゴリラパンチ[作詞:ANCHANG(SEX MACHINEGUNS)/ 作・編曲:AKIRASTAR]
- 武陵桃源なかよし物語[作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:橋本由香利]
- 勝手に君に[作詞:ももいろクローバーZ、NAGAE / 作・編曲:大隅知宇]
- 青春賦[作詞:桑原永江 / 作曲:しほり / 編曲:冨田恵一]
- サボテンとリボン[作詞:只野菜摘 / 作詞・編曲:神前暁]
- デモンストレーション[作詞・作曲・編曲:清竜人]
- 仏桑花[作詞・作曲:さだまさし / 編曲:近藤研二]
- 泣いてもいいんだよ[作詞・作曲:中島みゆき / 編曲:瀬尾一三]
- Guns N' Diamond[作詞・作曲・編曲:zopp・小林史知・岡村夏彦]
- バイバイでさようなら[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:エンドウ.(GEEKS)]
- HAPPY Re:BIRTHDAY[作詞・作曲:ティカ・α / 編曲:やくしまるえつこ、山口元輝]
「AMARANTHUS」初回限定盤Blu-ray収録内容
- 「WE ARE BORN」Music Video
- 「モノクロデッサン」Documentary Music Video
- Documentary of "AMARANTHUS"
「白金の夜明け」CD収録曲
- 個のA、始まりのZ -prologue-[作曲・編曲:NARASAKI]
- 桃源郷[作詞:森由里子 / 作・編曲:NARASAKI]
- 白金の夜明け[作詞:前田たかひろ / 作・編曲:横山克]
- マホロバケーション[作詞:六ツ見純代 / 作・編曲:invisible manners]
- 夢の浮世に咲いてみな[作詞:岩里祐穂、ポール・スタンレー(Kiss)/ 作曲:ポール・スタンレー、グレッグ・コリンズ / 編曲:Kiss、グレッグ・コリンズ]
- ROCK THE BOAT[作詞:岩里祐穂 / 作・編曲:グレッグ・カースティン、ニコール・モリエ]
- 希望の向こうへ[作詞:桑原永江 / 作・編曲:佐藤晃]
- カントリーローズ -時の旅人-[作詞・作曲・編曲:NAOTO(ORANGE RANGE)]
- イマジネーション[作詞・作曲・編曲:清竜人]
- MOON PRIDE[作詞・作曲・編曲:Revo]
- 「Z」の誓い[作詞:森雪之丞 作曲:NARASAKI 編曲:NARASAKI、ゆよゆっぺ]
- 愛を継ぐもの[作詞・作曲:前山田健一 / 編曲:Tom-H@ck]
- もっ黒ニナル果て[作詞:MURO、BOO / 作・編曲:MURO、SUI]
- 桃色空[作詞・作曲:堂本剛(KinKi Kids) / 編曲:堂本剛、十川ともじ]
「白金の夜明け」初回限定盤Blu-ray収録内容
- 「マホロバケーション」Music Video
- 「白金の夜明け」Documentary Music Video
- Documentary of “白金の夜明け”
ももいろクローバーZ(モモイロクローバーゼット)
百田夏菜子、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの5人からなるアイドルグループ。2008年に「週末ヒロイン」「今会えるアイドル」というキャッチフレーズを掲げ、ももいろクローバーとして結成。2009年7月に1stシングル「ももいろパンチ」をリリースし、2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。 2011年4月に行われた東京・中野サンプラザホール公演を最後に、メンバーの早見あかりがグループを脱退。このライブ終了直後、ももいろクローバーZへと改名し、5人編成での活動をスタートさせた。2011年7月にももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を発表。2012年にはグループ結成当初から目標としていた「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2013年4月に2ndアルバム「5TH DIMENSION」をリリースし、2014年3月には女性グループとして初となる東京・国立競技場での単独ライブを成功させた。2015年1月、「ももいろクローバーZ vs KISS」名義でKissとのコラボシングル「夢の浮世に咲いてみな」を発表。また女優としての活動も行い、青春群像小説「幕が上がる」の映画版および舞台版では主演を務めた。同年夏に静岡・エコパスタジアムでワンマンライブ「ももいろクローバーZ 桃神祭2015 エコパスタジアム大会 ~遠州大騒儀~」を開催。12月には群馬・軽井沢スノーパークでクリスマスライブ「ももいろクリスマス2015 ~Beautiful Survivors~」を実施し、12月31日から2016年1月1日にかけては東京・豊洲PITで初の年越しライブ「第一回ゆく桃くる桃『笑顔ある未来』」を行った。2016年2月に3rdアルバム「AMARANTHUS」、4thアルバム「白金の夜明け」を同時リリース。同月より新作を携えたドームツアーを開催する。