ナタリー PowerPush - ももいろクローバーZ
進化の先にある“5次元”の世界
百田夏菜子の「ゲッダーン!」笑顔は無自覚
──逆にこのライブの中で「これをしちゃいけない」といった決めごとはあったんですか?
いや、特になかったです。こういうことをやるっていう世界観があるだけで。もうMCという武器が使えないわけですからね。それがなくても曲でその世界観を表現できるようにしていかなきゃいけない。しかもマスクをしてるわけですから、マスクの奥にある表情を連想させなきゃいけないですし。
──スクリーンに映る表情といえば、「ゲッダーン!」のソロパートを歌い終えた百田さんの笑顔のアップがとても印象的でした。
ああ、あの笑顔ですね。あの笑顔に救われましたね。素晴らしい。
──あれも岡本さんのほうから「笑って」みたいな指示はしてないんですか?
いえいえ。あれはもう彼女のテンションなんじゃないですかね。あそこでああいう表現ができたのは。
──百田さん自身は自分の顔がアップで画面に映ってるということは知ってたんでしょうか?
いや、無自覚ですね。あそこであの笑顔が来るならばと、映像としてグラデーションをかけたりとか、顔が引き立つように注目できるような仕掛けをしたっていうのはあります。そういうのはやっぱりやりながら生まれていくんですよね。
──あのシーンはどの会場でも大歓声が上がってました。あれで「ああ、やっぱりいつものももクロだ」って安心できるところもあって。
うん。マスクの奥にある笑顔ですね。あれはかなりいろんなことを想像させるんで、お客さんにとっても印象に残ってると思いますよね。
ラストシーンの舞台裏
──ライブ全体の世界観としては、メンバーが惑星から惑星に移っていくようなイメージでしょうか。
そうですね。惑星を旅してる感じです。メンバー5人が地球人とも宇宙人とも言えない、新しく生まれた遺伝子が組み合わさった存在のようなイメージで。その5人が旅をしていろんなことを経験して、それをエネルギーとして次の惑星につなげているという。いいものを見たら次の惑星にそれをまた振りまいて、その惑星でもらったものを次の惑星で生かす、という世界観がアルバムでも表現されているかなと思います。
──そうやって旅をしてきたメンバーが、最後に光の中に消えていくシーンはすごく印象に残りました。
どういうふうにこのライブを終わればいいのかなっていうのは、やはり一番考えたところですね。「灰とダイヤモンド」のエンディングでスネアの音がバーン!と鳴って閉まるんですけど、そのときの拍手がね、やっぱり一番ホッとするといいますか……。あそこで別に最後の曲ですとは言ってないんですよね。言えないですしね。でもそこで物語が終わったわけじゃないんです。また次の惑星を目指して物語は続いている。
──光の中に消えていく直前、メンバー5人が振り向くシーンも感動的でした。
あれは賛否両論あったんです。振り向かない案もあったんですよ。でも振り向いたほうが、お客さんがもう1回ストーリーを思い起こせるというか。いろんなメッセージを残してまた次の惑星に行くわけなんで。今までと違うももクロを見せられるショットじゃないかなと思ってました。
──さらにそこで最後までマスクは絶対取らないと。
そうですね。最後にマスクを取るっていう案もあったんですけど、取ってしまうと次につながらないなと思いまして。たぶんこの5次元世界はまだ続いていくのだから、あれは取らないほうがいいかなと。
──これが短期間で作り上げられたものだとは思いもよりませんでした。「5TH DIMENSION」の世界がとてもよく伝わるライブになったんじゃないかと思います。
そうですね。でも自己満足じゃいけないので、あとはお客さんがどう感じてくれたのかが僕らは一番気になります。いろんな意見もあると思いますけど、これができるアイドルなんていうのはももクロしかいないんですよ。これはほかのアイドルじゃ絶対できない。これをやりきっているももクロはすごいなと改めて思いました。それはスタッフ全員の思いだったりします。
メンバーの理解力やパワーには本当に圧倒されました
──そして今回のツアーでは、本編のあとに“いつものももクロ”としてのアンコールもありました。アンコールをそういう形にするということは決まってたんですか?
はい。やっぱりあの世界観だけで押し切るのはなかなか難しいんじゃないかと思って。今までももクロが作ってきたライブをコンパクトな形で収められないかなと。新しい曲を入れ過ぎちゃうと“5次元”が薄れちゃうと思ったので、あえてちょっと古い曲を選択しました。あと長すぎるのもまた“5次元”が薄れちゃうかもなと。結果、いつものライブスタイルながら、今までとはまた違うものになったんじゃないかなと思っています。
──今までだったらメインステージからサブステージに移るときも歌いながら客席間を移動していましたが、イントロや曲間を長くして移動しきったあとで歌うというのは新鮮でしたね。さらにメインステージに戻るときには、スクリーンに戻る様子が映し出されて、給水所やパン食い競走、輪投げなどユニークな仕掛けがあったり。
そうですね。映像を入れたらいろんな新しい見せ方ができるはずだと思ってたし、ももクロのお客さんであればぜんぜん大丈夫だなと思ったので。
──全体を通して、ももクロの楽曲やパフォーマンスをすごくしっかりと見せるライブという印象を持ちました。
確かに、装飾を排除しても見せられる音楽と見せられるメンバーというのがやっぱり最大の魅力だったと思います。
──では最後に、今回のツアーでメンバー5人と一緒にライブを作ってみてどうでしたか?
曲を理解してどう表現するか、この短期間でどこまでやれるのかというのが一番の不安だったんですが、メンバーの理解力やパワーには本当に圧倒されました。つらい場面でも決してつらいと言いませんでしたし、がんばっている姿を見ていると、言葉を交わさなくても伝わってくるものがたくさんありましたね。日を追うごとに曲が育っていく様子をメンバーが肌で感じ取って、さらにスタッフがそれをふくらませるという過程がすごく面白かった。そういった意味では、いつもと違うももクロを演出させてもらったのは非常にありがたかったです。これがツアーじゃなくて単発のライブだったらたぶんそういう気持ちにはなってなかったと思います。
- ニューアルバム「5TH DIMENSION」 / 2013年4月10日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤A [CD2枚組] / 3500円 / KICS-91899
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / KICS-91900
- 通常盤 [CD] / 2800円 / KICS-1899
CD収録曲(全仕様共通)
- Neo STARGATE
- 仮想ディストピア
- 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
- 5 The POWER
- 労働讃歌
- ゲッダーン!
- Z女戦争
- 月と銀紙飛行船
- BIRTH O BIRTH
- 上球物語 -Carpe diem-
- 宙飛ぶ!お座敷列車
- サラバ、愛しき悲しみたちよ
- 灰とダイヤモンド
初回限定盤A DISC 2(CD)収録内容
2012年11月17日(土)東京・Zepp Tokyo「ももいろ夜ばなし第一夜『白秋』」第1部ライブ音源
初回限定盤B DVD収録内容
- Neo STARGATE(MUSIC VIDEO)
- BIRTH O BIRTH (MUSIC VIDEO)
※「BIRTH O BIRTH」の「O」は/付きが正式表記になります。
ももいろクローバーZ(ももいろくろーばーぜっと)
百田夏菜子、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの5人からなるアイドルグループ。2008年に「ももいろクローバー」として結成。「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。 2011年4月に行われた中野サンプラザ公演を最後に、メンバーの早見あかりがグループを脱退。このライブ終了直後に「ももいろクローバーZ」へ改名し、5人編成での活動をスタートさせた。
2011年7月にはももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を発表。同年7月に発売された1stアルバム「バトル アンド ロマンス」は、全日本CDショップ店員組合が選出する「第4回CDショップ大賞」で大賞を受賞した。2013年4月10日には2ndアルバム「5TH DIMENSION」をリリース。
2013年4月9日更新