ももいろクローバーZ待望の2ndアルバム「5TH DIMENSION」は、ファンの想像を大きく超える異色作となった。アートワークからは彼女たちの武器とも言える笑顔が消え、さらにその表情は異様なマスクで覆われている。楽曲にも強いこだわりが見られ、全13曲でひとつの物語を作り上げるような、コンセプチュアルな作品に仕上がった。

今回の特集では、メンバー5人へのインタビューのほか、アルバムに先行して行われたツアー「ももいろクローバーZ JAPAN TOUR 2013『5TH DIMENSION』」をともに作り上げたライブ演出の岡本祐次、ももクロ結成当初から振り付けを担当している石川ゆみの両氏からも話を聞き、多角的視点から「5TH DIMENSION」の世界を紐解いた。

取材・文 / 臼杵成晃(P1~3) 撮影 / 笹森健一 取材・文(P4~8)・企画 / 富樫奈緒子

メンバーインタビュー

試練すらも「ワクワク感」に

──今年は元日から大きな目標を打ち立てつつも(参照:年末年始も全力疾走、ももクロが見据えた“紅白の向こう側”)、有安さんが喉の治療のため2カ月以上も歌やトークに参加できないという大きな試練を抱えてスタートしました。これはあらゆる面で大変だったのではないでしょうか。

ももいろクローバーZ

佐々木彩夏 杏果がしゃべれないことに対して「大変じゃない?」ってよく聞かれましたけど、これからさらによくなってくための期間だってみんなわかってたから、ネガティブな気持ちはぜんぜんなくて。

百田夏菜子 私たちはすべてをポジティブな方向に考えがちなので、そこまでつらいなーとか大変だなーとは感じなかったです。

玉井詩織 私たちが思っている以上に、周りの方たちのほうが重大視していたというか。

有安杏果 メンバーやスタッフさんにはすごく助けてもらいました。今後の有安に期待してください。

──ライブでのフォーメーションや歌割りを変更して対応するのは、かなり大変なのかなと思って観ていたのですが。

高城れに むしろ新しいことに挑戦するワクワク感みたいなものがありました。

佐々木 杏果ってこんなパート歌ってたんだ!みたいな。歌うと意外と難しいんだなって(笑)。

有安 あははは(笑)。

玉井 杏果風に歌ったりとか(笑)。

──あの試練を「ワクワク感」と捉えられるというのは、明らかな成長の証なんじゃないでしょうか。昔だったらもっとテンパったり泣いたりしそうな場面ですよね。

百田 ももクロはファンの皆さんも新しいことが好きだし、一緒に楽しんでるようなところもあって。ネガティブに考えずに「杏果の歌がないライブが観られるのはこの機会しかない!」とか「ダンスだけを全力で踊ってる杏果が観られる!」とか、むしろ今だけのレアな感じを楽しんでる感じでしたね。

ももいろクローバーZ

──有安さんが筆談しかできないという局面から、フリップ芸という新たな連携プレイが生まれたり(笑)。

佐々木 そうそう(笑)。逆に4人のスキルを上げるチャンスでもあったし、5人の団結力も絶対深まったと思います。

──ちょうどそんなタイミングで「ももクノ60分」や「ももクロ試練の七番勝負」といった、メンバー主導で考えながら動かなきゃいけないイベントが続いたのも功を奏したかもしれませんね。

玉井 でも「七番勝負」の初日はだいぶ「ヤバい!」ってなってましたね(笑)。

──ああ、佐々木さんもインフルエンザで欠席して。代わりにももクロのダンスを手がける石川ゆみ先生が、佐々木さんのお面を付けて登場するという(参照:名勝負連発「ももクロ試練の七番勝負 episode.3」前半戦)。

「ももクロ試練の七番勝負 episode.3」第1戦「ももクロ VS. オカルト」より。佐々木彩夏の代打で登場した石川ゆみを百田夏菜子が抱きかかえながら歌った「黒い週末」のワンシーン。

百田 あ、でもそこはぜんぜん問題なく……。

玉井 うん。もはやこのままでもいいかなーって。

佐々木 それはちょっと……違うよ?

高城 ダンスのキレがめっちゃいいの!

百田 「七番勝負」の初日では「黒い週末」を歌ったんですけど、この曲は私があーりんを抱きかかえる振り付けがあるんですよ。だからこの日はゆみ先生を抱きかかえることになって(笑)。「うわ、私今ゆみ先生を抱いてる。しかもステージ上で。どういう状況なんだろう?」っていう(笑)。でもそういう場面で引き受けてくれるゆみ先生は、やっぱりチームの一員として考えてくれてるんだなって思いました。

一同 うんうん。

「とにかく今回は次元が違うんだよ!」

──そういった試練の裏側ではアルバムのレコーディングも行われていたわけですよね。皆さんは以前から「アイドルというジャンルに収まらない、『ももクロ』というジャンルを目指す」とおっしゃってましたけど、このアルバムでいよいよ比べるもののない独自のジャンルを形成しつつあるように思います。

一同 ええー!

──実感するのはこれからかもしれませんが、大きな変化はもちろん感じてますよね。かなりコンセプチュアルな作品になっていますが、「今回はこういう世界観で」という話はスタッフ側から事前にあったんですか?

高城 ありました。最初からコンセプトを事細かに説明されたし、レコーディング前も「この曲はこういう感じで、こういう経過の最中だから、こういうふうに歌って」みたいな具体的な指示がありましたね。

──今まではどちらかというと、あえてメンバー本人に正確な意図は伝えられず、それぞれの解釈で生まれたものが形になる、みたいなやり方でしたよね。

百田 でも細かいところを正確にどういうものかって聞いても「次元が違う」としか言ってくれない(笑)。「とにかく今回は次元が違うんだよ! 5次元なんだよ!」って(笑)。

──時代はいつで5人はどういうキャラで、など設定がきっちり決まっていたりするわけではないと。

ももいろクローバーZ

佐々木 もっとぼんやりした「生まれ変わる前の感じを出して」とか「さまよってる感じ」とか。

玉井 わからないんですよ私たちも。「生まれ変わる」とか言われても想像できないところがあったりしたんですけど、それはスタッフさんたちも一緒だと思う。

有安 みんなで一緒に作ってる感じ。

──世界観の演出のためか、歌詞に使われている言葉はこれまで以上に難解なものが多いですよね。これは皆さんの中でどう解釈して、飲み込んでいるのでしょうか。

高城 言われたことを自分たちなりに解釈して出して、5人それぞれの解釈が合わさることで1曲ができあがるみたいな。

百田 レコーディングはみんな別々に録るから、ほかのメンバーの歌を聴いて「なるほど、そうきたか」って思ったり。ドキドキだったけど、楽しみでもありました。

ニューアルバム「5TH DIMENSION」 / 2013年4月10日発売 / スターチャイルド
初回限定盤A [CD2枚組] / 3500円 / KICS-91899
初回限定盤B [CD+DVD] / 3500円 / KICS-91900
通常盤 [CD] / 2800円 / KICS-1899
CD収録曲(全仕様共通)
  1. Neo STARGATE
  2. 仮想ディストピア
  3. 猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
  4. 5 The POWER
  5. 労働讃歌
  6. ゲッダーン!
  7. Z女戦争
  8. 月と銀紙飛行船
  9. BIRTH O BIRTH
  10. 上球物語 -Carpe diem-
  11. 宙飛ぶ!お座敷列車
  12. サラバ、愛しき悲しみたちよ
  13. 灰とダイヤモンド
初回限定盤A DISC 2(CD)収録内容

2012年11月17日(土)東京・Zepp Tokyo「ももいろ夜ばなし第一夜『白秋』」第1部ライブ音源

初回限定盤B DVD収録内容
  1. Neo STARGATE(MUSIC VIDEO)
  2. BIRTH O BIRTH (MUSIC VIDEO)

※「BIRTH O BIRTH」の「O」は/付きが正式表記になります。

ももいろクローバーZ(ももいろくろーばーぜっと)

百田夏菜子、佐々木彩夏、玉井詩織、有安杏果、高城れにの5人からなるアイドルグループ。2008年に「ももいろクローバー」として結成。「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。 2011年4月に行われた中野サンプラザ公演を最後に、メンバーの早見あかりがグループを脱退。このライブ終了直後に「ももいろクローバーZ」へ改名し、5人編成での活動をスタートさせた。

2011年7月にはももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を発表。同年7月に発売された1stアルバム「バトル アンド ロマンス」は、全日本CDショップ店員組合が選出する「第4回CDショップ大賞」で大賞を受賞した。2013年4月10日には2ndアルバム「5TH DIMENSION」をリリース。


2013年4月9日更新