ナタリー PowerPush - ももいろクローバーZ
ももクロちゃぶ台トークだZ!! 「バトル アンド ロマンス」全曲解説
“Z”に変わることで歴史の断面ができた
──ももクロの作品を作る上での、お2人の具体的な作業はどういうものになるのでしょうか。
宮本 僕はメーカー側のディレクターなので、アートワークやビデオクリップの制作チームを作るところからですね。どういう作品にするかというトータルコンセプトをスターダストさんに提案する際に、佐藤さんがスターダストさん側の制作として、マネジメントとの間に入ってもらってます。
──ももクロはいわゆる普通のアーティスト、普通のアイドルとはちょっと違う尺度でゴーサインが出ることが多いんじゃないかと思うのですが、実際はいかがですか?
宮本 基本的な部分で常軌を逸したことをやりがちなチームではありますが(笑)、意識してそうしようとしているわけでは全くないんですよ。
──早見あかりさんの脱退を経て、さあ最初の一手は? と注目されているところで、その日のうちに「ももいろクローバーZ」に改名というのは、アイドルの攻め方としてはかなり型破りですよね。
佐藤 あれも真面目に考えた結果なんです。ひとつのアイドルグループとして、早見がいることで独特なアンバランスさを保っていた部分も大きかったと思うんですよ。あの子が抜けた姿を想像したとき、人数も少なくなってしまうし、ちょっとパンチがなくなるかもしれないって。そこで出たアイデアのひとつが、まず「Z」になること。
──確かに、早見さんの脱退で4月11日以降はどうなってしまうんだろうという不安感はありましたけど、Zの衝撃によるものすごい力でねじ伏せられたというか(笑)。「試練の七番勝負」の1週間でZをすっかり自分たちのものにした5人の柔軟性にも驚きました。
佐藤 あの4月10日が来るまではみんな不安だったけど、それでも前へ進まなきゃいけない。変な話、早見が抜けることに対するセンチメンタリズムに陥りそうな気分をみんな抱えていたのかもしれないのですけど、Zによってそういうのが一切なくなった。なくなったことに対する罪悪感すらなくなったぐらい(笑)。
──ああ、わかります(笑)。
佐藤 Zになることでひとつ効果的だったのは、歴史の断面ができたこと。たぶん初めて「ももいろクローバーZ」の名前を見たとき、やっぱり引っかかると思うんですよ、「Z」が。気になった人はそこで調べて、初めて「Z」の付いていない時代のももいろクローバーを知る。おのずと「早見あかり」という存在にもぶつかることになりますよね? 名前が変わることによって歴史に断面ができて、早見がいた時代に対する敬意も表せてるかなって。でもこれ全部結果論ですからね。
アルバムの全体像と作家陣の選定
──これだけ大きな注目を集める中でリリースされる1stフルアルバムということで、ファンの間では期待も不安も高まっていると思います。このアルバムをきっかけにして初めてももクロに触れる人も多いでしょうし、制作陣としてはプレッシャーも大きかったのでは?
宮本 結構なプレッシャーでしたね。「ブレイクするならここしかない!」というのを肝に銘じながらやっていたので。
──アルバムの全体像はどのように固めていったのでしょうか。
宮本 メジャーで発表したシングル(「行くぜっ!怪盗少女」「ピンキージョーンズ」「ミライボウル」)は全部入れると決めた上で、今後のライブの構成なども考えながらバランスを取っていきました。
──作家の選定は?
佐藤 コンペでも2~300曲ぐらいチェックしたのですが、その中から選んだのは「スターダストセレナーデ」だけで、最終的には決め打ちでお願いしました。そのほうが後々まで細かく密なコミュニケーションを取ることができるし、作家さんにもももクロがどういう存在なのかを把握した上で書いてもらえるので。
宮本 僕はコンペと並行して、ももクロをやり始める前から一緒に仕事していて信用のできる20代の作家さんに、とにかくガンガン書いてもらってました。
──名のある大御所作家さんに依頼するというのも、ブレイクポイントを生む方法のひとつだと思うのですが。
宮本 ももクロの場合、新しい音楽を吸収して作れる若い世代の作家さんのほうが、良さを引き出してくれると思うんですよね。
このアルバムは「ももいろクローバーZ」の新たな歴史の始まり
──普通はアイドルの1stアルバムって、いわゆる「1stにしてベスト」、悪い言い方をすると「寄せ集め」みたいな作品になるものだと思うんですけど、本作は新曲9曲に過去のシングルの別バージョン、さらにライブ定番曲ながら初CD化となった「オレンジノート」と、すべて新曲&新録なんですよね。加えて初回限定盤Aには早見さん含む6人のソロ曲が収録されるという。これだけ充実した1stアルバムってあまりないんじゃないかと思います。
宮本 そう言っていただけるのはうれしいですね。
佐藤 ありがたいです。
──5人バージョンに変わった3曲はミックスも変わってます?
宮本 ええ、全部ミックスし直してます。アイドルっていうジャンル分けでなくて、ももクロはももクロなんだよっていう気持ちで僕らも仕事をしてますから。
佐藤 古い曲に関しては、早見がいるバージョンを入れたほうがうれしいんじゃないか、「オレンジノート」は6人バージョンがいいんじゃないかと迷ったんですよ、やっぱり。でもそんなとき、前山田健一さんが「ヲタさんは古い音源みんな持ってるじゃないですか。新しく5人バージョンを入れたら、ミックスとかヲタ芸もそれで練習できるじゃないですか」って(笑)。まあホントにそのとおりですよね。このアルバムは「ももいろクローバーZ」の新たな歴史の始まりですから。
CD収録曲
- Z伝説 ~終わりなき革命~
- CONTRADICTION
- ミライボウル
- ワニとシャンプー
- ピンキージョーンズ
- キミノアト
- D'の純情
- 天手力男
- オレンジノート
- 行くぜっ!怪盗少女
- スターダストセレナーデ
- コノウタ
- ももクロのニッポン万歳! (Bonus Track)
初回限定盤A / DISC 2収録曲
- 太陽とえくぼ/百田夏菜子
- fall into me/早見あかり
- …愛ですか?/玉井詩織
- だって あーりんなんだもーん☆/佐々木彩夏
- ありがとうのプレゼント/有安杏果
- 恋は暴れ鬼太鼓/高城れに
初回限定盤B / DVD収録内容
- 「Z伝説 ~終わりなき革命~」ビデオクリップ
- 「D'の純情」ビデオクリップ
ももいろクローバーZ(ももいろくろーばーぜっと)
スターダストプロモーションの次世代新人プロジェクト「ももいろクローバー」として2008年に結成。数回のメンバーチェンジを経て、高城れに、百田夏菜子、早見あかり、玉井詩織、佐々木彩夏、有安杏果の6人構成となった。
「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。翌2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。
その後スターチャイルドレーベルに移籍し、2010年11月にシングル「ピンキージョーンズ」、2011年3月9日に最新シングル「ミライボウル」を発表した。そして早見あかりが2011年4月10日に行われた中野サンプラザ公演を最後にグループを脱退。このコンサート終了直後に突然「ももいろクローバーZ」へ改名した。
7月6日にはももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を2枚同時にリリース。7月27日には1stアルバム「バトル アンド ロマンス」を発表する。