ナタリー PowerPush - ももいろクローバーZ
ももクロちゃぶ台トークだZ!! 「バトル アンド ロマンス」全曲解説
「このジャンプがアイドル史を更新する」
──このインタビューでは制作サイドのお2人に、ももクロの音楽制作現場、「バトル アンド ロマンス」完成までの道のりを具体的に伺いたいなと考えています。まずは、ほんの1年前まで「HMVの佐藤さん」としておなじみだった佐藤さんの、激動の人生を振り返るところから始めてもいいでしょうか(笑)。
佐藤 アハハ、わかりました。僕はHMV渋谷に閉店まで(2010年8月22日閉店)ずっといまして、元々クラシックや映画音楽の担当だったんですね。でも2009年ぐらいから「アイドル面白いな」「なんでこれ売れるのにあんまりうちの店で扱ってないんだろうな」と思い始めて、J-POPのフロアで「俺やっていい?」って。そうやっているうちに……「MUSIC JAPAN」(NHK総合)でアイドル特集が放送されることになり(2010年5月放送)、特集に絡めた売り場のコーナーを作ろうかなと思って番組を観たら、一発目に出てきたももいろクローバーに衝撃を受けたんです。
──あの放送はアイドルファンの間で語り草になっていますよね。
佐藤 元々1stシングルの「ももいろパンチ」の頃からももクロの存在自体は知ってたんですね。変なグループがいるなっていうのは。でも、あの番組の中のももクロは、すべてが過剰でツッコミどころ満載で、これはとにかく面白いぞと。売り場のコーナーは最初いろんなグループが横並びのアイドル特集にするつもりだったんですけど、ガッツリももクロに寄ったコーナーになってしまって(笑)。
──まったく個人的な判断だったんですね。
佐藤 そうです。CDショップのレコメンドのあり方も昔とは変わってきてるんですけど、このときはもうHMV渋谷の閉店が決まってたこともあって、最後は好き放題にやろうよっていうお店の雰囲気があったんです。だからこんないびつな特集もいいんじゃないかなって。百田夏菜子のえびぞりジャンプがももクロの個性を集約したものだと思ったので、勝手にキャプチャ画像を使って「このジャンプがアイドル史を更新する」ってキャッチコピーを付けたんですよ。
──それがファンの間で噂になって、一気に話題が拡散しましたよね。
佐藤 「なんでももクロ推してんだ、ここは」って(笑)。それを聞きつけた川上マネージャーが、ある日メンバーを連れて挨拶に来たんです。「なんてフットワークの軽い事務所なんだ」というのが最初の印象ですね。
「HMVの佐藤さん」から「スターダストの佐藤さん」へ
──HMV渋谷と言えば、センター街の中央にお店を構えていた1990年代から、東京のカルチャーを象徴する場所だったと思うんです。そのHMV渋谷が幕を下ろす最後の20分間、店内BGMとして延々ももクロの曲を流していたというのは、非常に大きな意味を持つエピソードだと感じました。
佐藤 1990年代のHMV渋谷がいわゆる“渋谷系”という流れを作ったのは、まさにレコメンデーション、ローカリゼーションの精神だったと思うんですよね。Amazonなどネットで気軽に安く商品が買える今、お店に足を運ぶ意義って結局なんだろうと考えたとき、やっぱりあの精神が大事なんじゃないかなと思って。最後は好き放題でしたね(笑)。
──その後佐藤さんはHMVの他店舗に異動せず、スターダスト音楽出版に入られたわけですが、これはどういう経緯で?
佐藤 他店舗に行く選択肢もあったんですけど、もうちょっと別のことをやってみたいなという気持ちがあったので、閉店の節目で一旦辞めようかなと。でもその段階で何か仕事のアテがあったかというと、全くそんなことはなく。
──事務所側から声をかけられたんですか?
佐藤 8月ぐらいに川上マネージャーに会う機会があって。「HMV渋谷、閉店ですね。どうするんですか、どこか移られるんですか?」「いや、僕はもう辞めることに」みたいな話だけでその日は終わって。その後閉店翌日ぐらいに電話がかかってきて「ところで次どうされるんですか?」「いやー決まってなくて。なんだったらスターダストさんでも」って冗談で言ってたら「じゃあちょっと1回会いましょう、改めて」と、音楽担当の上席と会う機会を設けていただいて。
──音楽制作部の一員として入られたんですね。
佐藤 いえ、当時制作担当はすでにいたので、最初はももクロチームの宣伝やファンクラブ周りのスタッフという形で入りました。
──入るまではファンの立場だったわけですよね。ファンからスタッフへの視線の入れ替えは大変ではなかったですか?
佐藤 僕はどちらかと言うと、CDショップで働いている立場上、ファンとしてよりも商品として見てたところが大きいんですよ。アイドルという現象が面白くて、その中でもひときわ輝いてたのが彼女たちだったんです。
会って1週間で名刺が変わっていた
──佐藤さんの転職と、ももクロのスターチャイルドへの移籍は同じぐらいの時期ですよね。
宮本 スタチャへの移籍が決まったのがもうちょっと前だったんですね。僕、一番初めに佐藤さんに会ったのはHMVの施策打ち合わせで、その次に会ったときはもうスターダストの人だったんですよ。
佐藤 移籍第1弾シングルの「ピンキージョーンズ」が出るタイミングで、HMVでもももクロの企画をやろうとしてしていて。その打ち合わせで宮本さんと名刺交換を(笑)。
──会って数カ月で名刺が変わってるわけですね(笑)。
宮本 いや、ほんの1週間ぐらいで(笑)。
CD収録曲
- Z伝説 ~終わりなき革命~
- CONTRADICTION
- ミライボウル
- ワニとシャンプー
- ピンキージョーンズ
- キミノアト
- D'の純情
- 天手力男
- オレンジノート
- 行くぜっ!怪盗少女
- スターダストセレナーデ
- コノウタ
- ももクロのニッポン万歳! (Bonus Track)
初回限定盤A / DISC 2収録曲
- 太陽とえくぼ/百田夏菜子
- fall into me/早見あかり
- …愛ですか?/玉井詩織
- だって あーりんなんだもーん☆/佐々木彩夏
- ありがとうのプレゼント/有安杏果
- 恋は暴れ鬼太鼓/高城れに
初回限定盤B / DVD収録内容
- 「Z伝説 ~終わりなき革命~」ビデオクリップ
- 「D'の純情」ビデオクリップ
ももいろクローバーZ(ももいろくろーばーぜっと)
スターダストプロモーションの次世代新人プロジェクト「ももいろクローバー」として2008年に結成。数回のメンバーチェンジを経て、高城れに、百田夏菜子、早見あかり、玉井詩織、佐々木彩夏、有安杏果の6人構成となった。
「週末ヒロイン」「いま、会えるアイドル」というキャッチフレーズのもと全国津々浦々でライブ活動を行い、2009年7月には1stシングル「ももいろパンチ」をリリース。翌2010年5月にはシングル「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たした。
その後スターチャイルドレーベルに移籍し、2010年11月にシングル「ピンキージョーンズ」、2011年3月9日に最新シングル「ミライボウル」を発表した。そして早見あかりが2011年4月10日に行われた中野サンプラザ公演を最後にグループを脱退。このコンサート終了直後に突然「ももいろクローバーZ」へ改名した。
7月6日にはももいろクローバーZ改名後初のシングル「Z伝説 ~終わりなき革命~」「D'の純情」を2枚同時にリリース。7月27日には1stアルバム「バトル アンド ロマンス」を発表する。