ナタリー PowerPush - モーモールルギャバン”
ライブ活動休止の理由と“これから”
5月17日をもってライブ活動の無期限活動休止に入ったモーモールルギャバンが新作ミニアルバム「モーモールル・℃・ギャバーノ」をリリースする。全5曲入りの本作は、新曲の「ハイヒールブルース」をリードに据え、そのほかは初期のレア曲の再録で構成されている。今回ナタリーではメンバー3人に、新作についての話はもちろん、ライブ活動休止に至った経緯もたっぷり語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一 [ONBU](インタビュー)、田中和宏(PV撮影レポート)
撮影 / 堀弥生(インタビュー)、田中和宏(PV撮影レポート)
より深く濃いものを、腰を据えて作りたい
──まず、いろんなところで聞かれていると思うんですけど、無期限のライブ活動休止を決めた理由から話してもらいたいなと。
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo) まあ、僕らが皆さんに知られるようになったのはここ数年の話なんですけど。バンド自体はもう10年近くここまで突っ走ってきまして。うしろを振り向かず、脇目も振らず、曲を作って、それをライブでやって、また曲を作って、ということをずっとやってきたんですよ。でも、一度ちゃんと立ち止まってより深く濃いものを、腰を据えて作りたいという欲求が湧き起こりまして。
──ということは、ここで止まろうと言い出したのはゲイリーさんなんですね?
ゲイリー 僕がというよりはなんとなく……。
ユコ・カティ(Key, Vo) みんな空気がそういう感じになってたんですよね。だからあんまり誰が言い出したとかはなくて。
ゲイリー このままズルズルやってもね、みたいな。
──ちょっと発展しづらいと。
ゲイリー そうですね。レコーディング最中でもライブがあるから制作を中断して、ライブが終わったらまたレコーディングをやってみたいなことが続いたので。もっと作品作りに向き合わないといけないなと。曲のストックも切れてきましたし。断片的なものはいっぱいあるんですけど、ライブをやってるとそれを形にしてる時間があんまりないんですよね。
──メジャーの活動サイクルだとそれがより顕著だろうし。
ゲイリー でも、メジャーのサイクルというのはそんなに関係ないんですよ。というよりも、やっぱり僕らはライブをやってるとどうしてもライブに本気になりすぎちゃうので。そうなるとライブの翌日は使い物にならない。で、その翌々日とかに体力を振り絞ってレコーディングスタジオでドラムを叩くけど力が入らないみたいなことが続くと、集中力が途切れてしまうんですよね。
──どちらも完全燃焼するからライブと制作のバランスがうまくとれないと。
ゲイリー そうですね。どちらかというとライブのほうがキツいですね。お客さんが観てるから。僕、基本的に人に観られてると120%の力を発揮せざるを得ない性格だから。そうなると、レコーディング真っ最中に「なんで、ここでライブが入ってるんだろう?」と思いながらも手が抜けないってことが続いちゃって。
──じゃあもうちょいライブの数を減らして対処することはできなかったんですか?
ゲイリー うーん、やっぱりこのバンドはライブでここまできたんだぞという自負もありますし。そこはどうしても妥協できなかったんですよね。ただ、このままズルズルやってるとここから先が見えないという気分になってきて。じゃあいっそのこと自分たちの売りであるライブを1回完全に止めて、しっかり制作と向き合おうかっていう。ある意味ではものすごく怖い賭けではあるんですけど。
──でも、気持ち的には未来を見据えたポジティブな決断でもあるし。
ゲイリー はい。すごくポジティブです。ずっとそうしたいと思ってたし。
もうお前の顔なんて見たくないもん!
──いつくらいからそういうムードに?
ユコ どうだろう? ここ1、2年はずっとそういう感じでしたね。
ゲイリー うん。
T-マルガリータ(B) どっちにも集中したいけど中途半端になりがちっていう。
──この3人でこれからもバンドを続けたいと思わなければ、こういう決断はしなかったってことですよね。
ユコ そうですね。長く続けるために、息切れしないように。
ゲイリー 今は息切れしまくりだからね! だって、もうお前(ユコ)の顔なんて見たくないもん!
──あはははは!(笑)
ユコ だからさ、そうやってみんなが精神的にもまいっちゃう前にもう1回、自分の欲求とかを見つめ直そうってことじゃん!
──じゃあ活動休止後はしばらくそれぞれの時間を大切にしたいと。
ユコ しばらくはそうですね。この人(ゲイリー)に「しばらくは会わなくていい」とか言われていて(笑)。
ゲイリー 僕、今、めっちゃ読書してますから。「カラマーゾフの兄弟」と「成りあがり」を読んでます。
──ドストエフスキーと永ちゃん(笑)。究極の2冊みたいな。
ユコ ヘビーなの読んでるね(笑)。
ゲイリー こういう機会がないと読めないからね。特に「カラマーゾフの兄弟」は。
ユコ 特に上巻だよね。
ゲイリー 上巻はヤバい。
──こうして話してるとお互いの顔も見たくないって感じでもなさそうだけど。
ゲイリー 音楽以外の話をしてるときはいいんですよ。でも、音楽の話になるともう大変なんで。
──ぶつかるし?
ゲイリー エネルギーの消耗がすごいんですよ。
──それだけ真剣勝負でやってるから。
ゲイリー そう、ガチンコでやってきましたからねえ。
ユコ 私はあんまり顔も見たくないとかはないんですけどね。現場を離れるとすぐにスイッチオフできるので。
──女性だけに切り替えが早い。
ユコ そう、男の人ってずっと1つのモードにガーッとなっちゃうじゃないですか。
ゲイリー この人はね、基本的に音楽を仕事だと思ってないんでね。僕はもう危機感がすごいから、起きてまずスティックを握るっていう生活ですから。ここ3、4年は特に。
──メジャーデビュー以降は。
ゲイリー はい。ずっとそういう感じでしたし。お湯が沸いてうどんが茹で上がるまでにひと通りの基礎練習をやって。
ユコ どんだけ危機感もってんの(笑)。私はないわー。
ゲイリー 純粋に音楽とは向き合ってきたんですけど。でも、純粋に向き合う=本人が楽しむってことではないじゃないですか。純粋に楽しむ=掘り下げていくっていうことでもあるので。
──確かに。
ゲイリー そうなるとレベルをどんどん上げていくという発想にならざるを得ない。それでしんどくなって毎日悪夢を見たりとか、スーパーの野菜売り場で突然、涙が出てきたりして。
──ああ、野菜で涙が出るのは病院に行ったほうがいいかも(笑)。
ゲイリー そういう状態になっちゃっていきましたね。だいたい食べ物って心の柔らかい部分に迫ってくるので(笑)。
ユコ わかる、わかる。
- 2ndミニアルバム「モーモールル・℃・ギャバーノ」/ 2014年6月25日発売 / Victor Entertainment
- 「モーモールル・℃・ギャバーノ」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4860円 / VIZL-686
- 通常盤 [CD] 1728円 / VICL-64182
CD収録曲
- ハイヒールブルース
- クソまみれの僕ら
- 最後の青春パンク
- 頭が臭いと君に言われ5日ぶりに風呂に入った
- 愛のテーマ
初回限定盤DVD収録内容
<ライブ>
- 「“ライブ活動休止前”ラストワンマンツアー!! 『乱れうち。』からの、『打止め!』」初日の磔磔公演ライブ映像。
<ビデオクリップ>
- ユキちゃんの遺伝子
- Hello!! Mr.Coke-High
- ワタシハワタシ
- Good Bye Thank You
- サノバ・ビッチェ
- LoVe SHouT!
- MAD MADONNA
- ハイヒールブルース
モーモールルギャバン
ゲイリー・ビッチェ(Dr, Vo)、ユコ・カティ(Key, Vo)、T-マルガリータ(B)からなる3ピースバンド。2005年4月に5人編成で活動を開始し、紆余曲折を経て現在の体制となる。関西地区を中心に活動を展開し、インパクトたっぷりのサウンドと破壊力抜群のライブパフォーマンスでリスナーを獲得。2009年11月に初の全国流通作品となるアルバム「野口、久津川で爆死」をリリースする。2010年1月には「第2回CDショップ大賞」関西ブロック賞を受賞。同年6月にミニアルバム「クロなら結構です」をビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterからリリースする。その後、「僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ」「BeVeci Calopueno」という2作のフルアルバムやシングル「LoVe SHouT!」を発表。ライブも精力的に行い着実に動員を延ばしていく。2014年5月より制作に集中するためライブ活動を無期限休止中。