音楽ナタリー PowerPush - 水樹奈々
オールタイアップの4曲入りシングル&国内外ツアーの舞台裏
自分のすべてを注ぎ込んだ「FLIGHT」ツアー
──今回はシングルと同時発売で、昨年のツアー映像を収めたライブDVD / Blu-ray「NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+」もリリースされます。千秋楽の横浜スタジアム公演と海外公演の中からシンガポールでのライブの様子、さらにツアー全体のドキュメンタリー要素と、これも毎度のことながら盛りだくさんの内容で。
はい! こちらもやっぱりてんこ盛りです(笑)。
──横浜スタジアム公演はレポートも掲載しましたが(参照:水樹奈々、横浜スタジアムで豪快フライト)、まあド派手なライブでしたね。
ツアーファイナルはやっぱり特別ですから、夏のスペシャルなお祭りというか。特に今回のツアーはいろんなことがあったぶん、本当にありがとう!という気持ちを全面に込めたいという思いが強くあったので、今持てる自分のすべてをこのステージに注ぎ込もうという気持ちで挑みました。それは歌だけじゃなく演出面でもそうですし、「FLIGHT」というツアーのテーマを踏まえつつ、みんなに楽しんでもらえる要素を最大限に盛り込んでいこう……と考えた結果、ド派手なステージになりました(笑)。
──そもそもなぜ今回はテーマに「FLIGHT」を選んだんですか?
全国、さらには海外までも飛び回るツアーということで、国内線と国際線の「MIZUKI AIR LINE」を作るとモチーフとしてもぴったりで楽しいんじゃないかなって。あと、私の曲には空をキーワードにしたものが多いので、そのリンクも楽しんでいただけると面白いかなと思ったんです。
──飛行機は飛ぶわ、水樹さん自身も上空15mに浮かぶわで(笑)。この縦横無尽に飛び回る“3Dフライト”というのは、シルク・ドゥ・ソレイユの技法を使ったとか。
はい。アメリカから本場のマシンをお借りして、エンジニアさんにも来ていただいて。「FLIGHT」だから水樹ならきっと飛行機で飛ぶだろう、と皆さんが予想されているであろうところに、クライマックスではなく1曲目から飛行機で登場しよう!と(笑)。1曲目に大型乗り物が来てしまうと、後半には何が……と予想を覆す展開にして、3Dフライトを初披露するというサプライズを用意しました。
──飛行機の「SUPERNAL077号」はレトロなデザインでしたね。
レトロな外観なんですけど、コックピットにはタッチパネルが付いているんですよ! 4月にリリースしたアルバム「SUPERNAL LIBERTY」(参照:水樹奈々「SUPERNAL LIBERTY」インタビュー)を携えてのツアーだったので、アルバムのテーマである「レトロ&フューチャー」に沿って舞台を作ったんです。曲線と直線で表現された造形の融合が面白いのでは……と思って。
──そういう細かいディテールをチェックできるのが映像作品の醍醐味でもありますよね。ライブ会場では遠くて見えないような場所まで細かく、しかもポーズボタンを押して確認できるので。
そうなんですよ! このプロペラ、曲によってちゃんと止まったり回ったりしてるんだなーとか(笑)。衣装も細部まで観ていただけるし、3Dフライトでの表情とか……実際に会場にいても観る場所によって全然違うと思うので、当日参加してくださった皆さんもぜひ、思い出と照らし合わせつつ楽しんでいただけたらうれしいです!
特別なツアーを隅々まで観てほしい
──ツアーの“国際線”、海外公演のほうはいかがでしたか?
ひとことで言うと、めちゃくちゃ楽しかったです! でも緊張もすごくありました。シンガポールでの単独公演は初めてで、皆さんとコミュニケーションがとれるのかな……とか不安も大きくて。去年イベントでシンガポールにお邪魔したとき、サイン会で直接現地のファンの皆さんとお話しできたり、その後ファンレターをいただいたりしていたのですが、ワンマンライブとなるとまた違う緊張感があって。でも、ステージに飛び出した瞬間、一気にその不安は吹き飛びました。みんな熱烈に迎えてくださって、日本から参戦してくださっていた77名の方々がサイリウムやコールなど、全力で引っ張ってくださっていて。
──日本からの精鋭たちによるレクチャーが。
すっごくうれしかったです。現地ファンの皆さんも映像を観てあらかじめ予習していてくださっていたみたいで、ライブが進むごとにどんどんコールが揃っていって……。まるでデビュー当時のライブを思い出すような雰囲気で、感慨深いものがありました。しかも最後にサプライズまで仕掛けてくださって! 本編最後の曲は国内のツアーでも全公演共通で「ミラクルフライト」(2004年12月発売のアルバム「ALIVE & KICKING」に収録)に決定していたんです。ほかのシーンの曲は公演ごとに変わって流れが読みづらいツアーだったと思うんですけど、きっと日本の公演のセットリストを調べて「最後だけは共通で『ミラクルフライト』だ」と確認してくれていたのか、そこでみんな一斉にフラッグを掲げてくれて! 「僕らの旅はまだ始まったばかり」という「ONE」(2012年6月発売のシングル「TIME SPACE EP」に収録)の一節が書かれたブルーのフラッグをみんなで一斉に振ってくれたんです。あとで日本から参戦していたファンの皆さんに教えてもらったんですけど、本番前に現地のファンの皆さんが配ってくださったんですって。途中バレないようにみんなキチンとしまっていてくれて(笑)。
──ものすごい一致団結ぶりですね。
予想外のことに私はこらえきれずに思わず泣いてしまって。しかもその旗に選んだフレーズが「ミラクルフライト」からではなくて、私が喉の不調で休演したあとの復帰公演(参照:休養中の水樹奈々、今週末よりツアー再開)で歌った「ONE」から引用していることに、さらにグッときてしまって。
──どんだけ優秀なファンなんだと(笑)。
本当にびっくりしました。国は違っていても同じ思いでつながっているということが、すごく幸せで。音楽や歌詞の解釈って、訳し方によってやっぱり微妙に違ってくると思うんです。でも会場の中は“チーム水樹”という絆でしっかりつながっていて……ものすごく感動しました。
──水樹さんは映像作品もやはり毎回盛りすぎで(笑)、2つのライブが1パッケージになっているのが常ですけど、今回は国内外の公演ながら1つのツアーを通して楽しめるというのがいいですね。ドラマチックな2014年の軌跡をまとめたような。
ツアー1本だけで1つのパッケージにしたのは今回が初めてで。やっぱり私にとってこのツアーはすごく特別なものだったので。FLIGHTツアーだけで1つのカタチに残したいと思ったんです。それは三嶋プロデューサーも同じ思いだったようで、「ぜひこのツアーを隅々まで観てもらいたいね」ということで、横浜公演で演奏してない曲も、休演で流すことができなかった映像も……と入れていった結果、こんなにてんこ盛りな作品になりました(笑)。オーディオコメンタリーでも熱く語っているので、そちらもぜひ楽しんでいただけたらと思います。
水樹奈々 2015年の7大目標
──最後に2015年の目標を挙げていただきたいんですけど……今回で水樹さんの単独特集記事は7本目なんですね。
えっ! そうなんですか?
──7にこだわる水樹さんとしては、ここで目標を7つ挙げてもらえないかなと。
7つ? なんでしょう……大きな目標としては「根っこの部分を太くする」。木が育っていくとどうしても土から上の部分に目が行きがちですけど、根っこがよわよわだと倒れちゃいますよね。その見えないところを鍛えるのが大事なんじゃないかなって。それは2014年いろいろなことを経験して改めて思ったことです。体幹トレーニングはもちろんですし、歌やお芝居も、ベーシックな部分を強化することでやれることも増えると思うんです。以前、荒川静香さんが金メダルを獲ったときに「大技に走るんじゃなくて、基本を大事にする。すべての技術点のクオリティを上げたことが金メダルにつながった」とお話されていたことがすごく心に残っていて。今まさに私がやるべきことはそれなんだなと。
──まず1つは「根っこの部分を太くする」と。
もう1つはそれとつながる話かもしれないのですが、音楽的にもっと削ぎ落としたカタチにもチャレンジしたいと思っていて。1月17、18日のアコースティックライブにも同じような思いがあるのですが、もっとストレートなメロディと表現力だけで勝負できる音楽にチャレンジしたいんです。もちろんカロリーの高いコテコテの曲も大好きなんですけど(笑)。「エデン」のような曲に触れて改めて、行間を読むように、空間があるところに思いや個性を乗せて自由に歌うことができるんだと感じたんです。より私らしさを追求していけるんじゃないかなって。
──2つ目は「削ぎ落とした表現の強化」。あと5つもありますけど(笑)、もっとライトな「こんなことやってみたい」「どこに行って何が食べたい」レベルでもいいですよ。
ずっと言ってる富士登山……に向けてのプロジェクトはそろそろ始めたいです(笑)。いきなり富士山は難しいでしょうし、今は世界遺産になったばかりですごく混み合っていると聞くので、まずは近場の山から(笑)、チェリーボーイズと一緒に。あとラジオの企画でサイクリングを始めることになったので、地元愛媛のしまなみ海道を走破したいです!
──「富士登山に向けての準備」と「サイクリングでしまなみ海道走破」。
あとは……また座長公演がまたやりたいです! 第4弾! そろそろやりたいなーって。
──あー、それはファンの皆さんも楽しみにしてますね。「水樹奈々座長公演 第4弾」。
あと基本的なことですけど、早寝早起きの徹底! 忙しくなっちゃうと遅寝早起きになっちゃうので、できる限り規則正しくして体調管理に気を付けたいです。
──これで6つまで上がりました。あと1つです。
もう1つ……これも前から言ってることですけど、英語と中国語をもっとがんばって勉強したいです。英語はもう1年ほどレッスンがストップしちゃってて、きっとゼロに戻っているので(笑)。
- 根っこの部分を太くする
- 削ぎ落とした表現の強化
- 富士登山に向けての準備
- サイクリングでしまなみ海道走破
- 水樹奈々座長公演 第4弾の開催!
- 早寝早起きの徹底
- 英語&中国語の勉強
収録曲
- エデン
- No Limit
- 終末のラブソング
- Necessary
- ライブDVD / Blu-ray「NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+」/ 2015年1月14日発売 / KING RECORDS
- Blu-ray Disc4枚組 / 8316円 / KIXM-185~8
- DVD6枚組 / 8316円 / KIBM-483~8
水樹奈々(ミズキナナ)
愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2013年には台湾にて初の海外公演を行い、2014年4月には通算10枚目となるオリジナルアルバム「SUPERNAL LIBERTY」を発表。同年末には6年連続となる「NHK紅白歌合戦」への出場を果たした。2015年1月には通算31枚目となるシングル「エデン」とライブDVD / Blu-ray「NANA MIZUKI LIVE FLIGHT×FLIGHT+」を同時リリース。