当時の記憶が蘇る
──みゆなさんは9月18日に2ndミニアルバム「ユラレル」をリリースします。17歳になって気持ちの変化や、曲作りへの向き合い方は変わりましたか?
みゆな 収録曲は16歳の頃に書いたものが中心なんですけど、中には中学3年生で書いた曲も含まれてて。17歳になった自分が聴き返してみると、少なからず成長できているのではないかなと思いつつ、少し恥ずかしさもありました。「私は気に入ってるけど、人に聴かせるのは気が引ける」と閉じ込めていたところもあったんです。
──今というよりも、17歳に至るまでのみゆなさんが詰まっていると。
みゆな そうですね。それを改めて引っ張り出して形にしたときに、自分はこの子(曲)たちに救われているんだなと気付きました。なんか、ありませんか? 過去に作った曲を見て「こんな言葉がよく出てきたな」と思うことって。私、嫌なことがあっても自分の書いた歌詞を読んで元気が出てくることがあるんです。なので、今回のアルバムも本当に大事な曲たちが詰まった作品だと思います。
──Emiさんもご自身の書いた歌詞に元気付けられることはありますか?
Nakamura 元気付けられるというより、喝を入れられることが多いですね。私が書いた歌詞は、何か悩んだときや悔しかったときに出てきた言葉がすごく多くて。自分が苦しいときに書いた曲は、数年経ってから歌っても苦しくて歌えなくなるときがあるんです。
──それだけ当時の思いが克明にパッケージされているというか。
Nakamura はい。そのときの誰々さんとか、これはどこで何時頃に起きたとか、実際にある出来事を書いたものばかりだからですかね。だからこそ、歌っているとそのときにガーッと戻っていけるんだと思います。
飛行機の中で書いた「ユラレル」
──みゆなさんが曲を作るときは、どんなことを意識されてますか?
みゆな 私が曲を考えるときは、主人公を想像して小説のように作ります。例えば「ユラレル」だったら、すごく落ち込んでいる子をイメージしたし、「ふわふわ」だったら、好きな男の人にすがって生きるような女の子。そういう誰かを主人公に見立てて、かつ自分の思いも入れながら書いていくから、読み返しても小説を読んでいるような感覚になれるんです。しかも自分の本音をダイレクトに混ぜるというより、他人のフィルターを通すことで好きに言える気がして。私自身は本音を言えないから、誰かを立てることでその子が代弁をしてくれている感じなんです。だからメロディよりも、歌詞を書くほうが好きなんです。ちなみに「ユラレル」は、作詞の締め切りがギリギリで飛行機の中で書きました。
Nakamura そうなんだ!
みゆな 飛行機の中で一生懸命、女の子をイメージして書きました。そう考えると面白くないですか? テキトーに書いたわけじゃなくて、真剣に考えてはいるんだけど場所は飛行機の中っていう(笑)。
──移動中に作詞をすることは多いですか?
みゆな そうですね。あとは夜から朝方まで考えて書くことも多いです。それこそ「グルグル」は夜からパソコンと向き合って、完成したのが朝9時だったんですよ。だから深夜テンションの影響でラップを入れちゃって。
Nakamura あ、そうだったんだ。
みゆな 「なんでラップ入れちゃったんだー!」と思ったんですけど、初めてセリフっぽいのを入れたわりには完成度高く作れたかなって。それに昔の自分だったらラップ調の歌詞を書こうなんて思わなかったから、新しい挑戦ができてよかったです。実は作曲したTSUGEさんからデモ音源が届いたとき、仮歌が英語だったんですよ。どうやって英語から日本語に変えるかを試行錯誤しながら作詞しました。
それだったら私は歌えません
Nakamura 15歳のときに書いたのはどれなの?
みゆな 「進め」がそうです。初めて自分に向けてストレートな応援歌を作ったんですけど、最初は身近なスタッフから変更できないかと言われて。
Nakamura え、どうして?
みゆな 「ストレートすぎると思うから、歌詞をもう一度考えてみて欲しい」と言われたんです。だけど、「それだったら私は歌えません」って。そしたら「もう一度考えてみてくれ」と言われて、仮歌詞まで用意されたんです。それがめっちゃショックだったんですよ。私にとって「進め」は、不登校であんまり幸せじゃなかった頃に「憧れている人に近付きたい。だから私はがんばるんだ」と自分に対して言い聞かせるつもりで書いた曲だったんです。だからこそ、歌詞を変えることが嫌だったんですよ。あのときは、とにかく悔しかったし泣きました。「ふわふわ」を作ったときも「歌詞の内容が15歳とは思えない」と言われていたんです。確かに、周りが思う“中高生らしさ”とは違った歌詞を書いてきたから、そういうレッテルと葛藤していたんですね。だから「進め」にしたって、「ストレートで何がいけないの?」と思ってた。そういう攻防を繰り返した結果、なんとか今回のアルバムに収録できることになったんです。
Nakamura 歌詞は変えることになったの?
みゆな それは嫌だったので「歌詞は絶対に変えないですよ」と意見を突き通しました。中学3年生の頃に考えたそのままの歌詞でアルバムを作ることができて、めげないでよかったなと思ってます。自分はまだ17歳で未熟だから、大人の意見に押しつぶされそうになることがあるんですよね。私の立場上、あんまり否定することができないんですよ。だって経験の少ない私は、それが成功するかわからないから。支えてくれている周りのスタッフさんのほうが実績はあるから、先のことをわかっているじゃないですか。だけど、“この子”だけは他人に任せたくなかった。
Nakamura そうか、そうだったんだね。
みゆな そもそも「進め」は「ふわふわ」の次に書いた曲なんですよ。だから人生で2つ目に作った曲だった。なので、コードも歌詞もすごく単純なんですけど、初めて自分が自分に対して歌えた曲だからこそ、これは遠回しに言うものじゃないなって。1文字も変えずに、この曲を世間に出せるのがうれしいんです。自分にとって生まれてくる曲って、子供みたいなものじゃないですか。私のためを思って言ってくださっているのはわかるんですけど、私はまだ考えが子供だから変な方向にとらえちゃうときがあって。もしかしたら17歳だからこそ、こんなに反抗しても許してもらえたのかもしれないですね。……うん、一生懸命考えてそれでも「ここは譲れない!」と思うなら、意見は押し通すべきだと思います。
Nakamura 17歳でそれをわかっているのが、本当にすごいと思う。
みゆな それはEmiさんのおかげでもあるんです。だって「YAMABIKO」や「メジャーデビュー」の歌詞に私自身はとても助けられたから。私は歌を日記みたいなものだと思っていて、先ほどEmiさんが言ったように苦しいとき、悔しいときもそうだし、いつどんな思いをしたのか、そういうときに出てくる歌詞って日記のようだなって。だから、たまたまこのときの日記がストレートな内容だったというだけなんですよね。
スッと入ってきて刺さる
──みゆなさんは、本当にEmiさんからいい刺激をもらっているんですね。
みゆな いやあ、本当にそうですよ。「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6」(2019年2月発表のNakamuraEmiのアルバム)も聴かせていただきましたけど、やっぱりすごかったです。「おむかい」だったり「甘っちょろい私が目に染みて」とか大好きなんですよ! Emiさんの声って、スッと入ってくるんですよね。しかも歌詞はドスンと刺さるからさらに聴き入っちゃうんです。私、こんなに人の歌詞を心から聴き取ろうとすることってなかった。ライブだと歌詞が聴き取りにくいときがありますけど、Emiさんのライブのときだけは、リリースされてない曲なら余計に一生懸命歌詞を覚えたいと思う。それぐらい、いつも私を熱くさせてくれる方なんです。
Nakamura うれしいな、本当に。
みゆな あ、あの……「甘っちょろい私が目に染みて」の「1000円で買ったワンピース 似合ってなくてもいい 丈があってなくていいこの色を着てみたかったんだ」って部分が本当にヤバいんですよ! 情景が浮かぶんです。前にEmiさんがMCで「今までは“意地でもがんばろう”とか“自分の背中を押すような曲”ばっかりだったけど、やっと自分をヨシヨシとしてあげられるような曲ができたんだ」と言ってましたよね。
Nakamura 言ってました……覚えてるなんてすごいね。
みゆな それを聞いて、さらに「こういう大人になりたい」と思いました。歌詞もそうですけど、MCだって忘れないですよ!
次のページ »
アルバムを聴いて恐ろしくなった