動画配信サービス・TELASAでは、K-POP関連の映像コンテンツが続々と配信されている。中でも韓国で30年あまりの歴史を誇る人気音楽番組「SBS人気歌謡」はTELASAが日本最速配信となり、旬のパフォーマンスを本国に近いスピード感で楽しめるのが大きな魅力だ。
音楽ナタリーでは、韓国カルチャーをこよなく愛し、韓国語も独学で習得したAKB48の宮崎美穂にインタビュー。TELASAのラインナップでオススメの番組や、K-POPの楽しみ方を聞いた。また「SBS人気歌謡」の新MCを3月から務めているアン・ユジン(IZ*ONE)の印象や、彼女と共演した2018年放送の日韓合同オーディション番組「PRODUCE48」の思い出もたっぷりと語ってもらっている。
取材・文 / 岸野恵加 撮影 / 堀内彩香
狂ったように渡韓
──昨年の新語・流行語大賞に「第4次韓流ブーム」がノミネートされるなど、韓国のコンテンツは近年また大きな盛り上がりを見せていますが、宮崎さんはだいぶ前からお好きなんですよね?
はい。毎年韓国で行われる「ASIA SONG FESTIVAL」へ、AKB48が2010年に出演させていただいたのがきっかけです。それまでは韓国と言ったら「冬のソナタ」しか知らないくらいだったんですけど、そのイベントでKARAや4Minute、BEASTのような同世代の韓国アーティストたちがリハーサルなどに臨む姿勢を間近で見て、どハマりしました。
──彼女たちのどんなところに魅了されたんでしょう?
まず、AKB48は歌やダンスが苦手でもがんばっている姿が評価されたりするんですけど、韓国のアーティストはパフォーマンスが完璧にできて当たり前で、みんなの憧れとなるような存在。自分とは全然違うスタイルのアイドルを見て、「私もこうなりたいな」って思ったんです。
──そのすぐあとの2011年には、宮崎さんがMCを務めるMnetのK-POPバラエティ番組「宮崎美穂のMnetが行く」が放送スタートしています。これはたまたまだったのでしょうか?
「ASIA SONG FESTIVAL」を終えてからずっと、「韓国でお仕事がしたいです!」ってマネージャーさんに言い続けていたんです(笑)。それでMnetさんとご縁があって、やらせていただきました。
──直談判の成果だったんですね。街角でK-POP好きの人を突撃してリクエストされた楽曲をかけるという番組でしたが、1人で街頭インタビューし続けるというのもきっとなかなか大変でしたよね。
いやもう、大変でした(笑)。新大久保での街ロケが多かったんですけど、当時は街を歩いてる人が今に比べたら本当に少なくて。なかなかインタビューを受けてもらえずロケ時間がめちゃくちゃ長かった記憶がありますね。でも番組のスタッフさんと仲よくなって、韓国でのお仕事の仕方とかもいろいろ聞かせていただいて、すごくいい経験でした。
──実際に韓国にもよく足を運んでいたんですか?
はい、狂ったように行ってました。
──(笑)。どのくらいのペースで?
月に2回は行ってましたね。1泊とか日帰りでも。ある年は、お正月休みで1月5日まで休める予定だったので元日から5日間韓国に行こうと思ってたんですけど、4日に急遽お仕事が入っちゃって。でもできるだけ長く行きたかったから、1日から3日まで渡韓して、一度日本に帰ってきて4日に仕事して、また5日に韓国へ……というスケジュールを組んだり。どっちが家なのかわからないくらいの感じでした(笑)。
「なんでAKB48がプデュとコラボすんの?」
──宮崎さんは韓国語も堪能で、ご自身のYouTubeチャンネル「みゃおちゃんねる」でも韓国語講座を行うほどですが、その実力は現地で培ったところも大きいんでしょうか。
はい。教材でハングルを覚えることはもちろん最初にやりましたが、読み書きができるようになってからは、現地で人とコミュニケーションを取るときにとにかく韓国語を使うようにして、会話力が身に付きました。とにかく韓国人の方と話がしたかったんです。書いて覚えるよりも、私にはそっちのほうが簡単でしたね。
──熱意の賜物ですね。2018年に日韓合同で行われ、IZ*ONEを輩出したオーディション番組「PRODUCE48」でも、宮崎さんは現地のトレーナーの先生に発音を褒められていましたよね。それだけ韓国がお好きだったら、あの番組への参加は念願の機会だったのでは?
念願というか……。私はイチK-POPファンとして、それまでの「PRODUCE」(通称プデュ)シリーズをずっと観てきたんですね。だから最初はちょっと嫌だったんですよ。「なんでAKBがプデュとコラボすんの?」って。
──それは……ファンの視点ですね(笑)。
そのときもK-POP人気が高まってきていたので、「BTSが好きだから」「TWICEが好きだから」とかそういう気持ちで受ける人もいるんじゃないかって考えたら、それがすごく嫌で(笑)。でも逆に、「私が出ないで誰が出るんだ」「こんなチャンスをもらえてAKB48にいてよかった」と思ったし、参加は迷わず決めました。
──「PRODUCE48」ではエピソード1からさっそく日韓のアイドル文化の違いが浮き彫りになり、歌やダンスの実力においてAKB48メンバーは軒並み厳しい評価を受けました。視聴者からすると「ここまで徹底的に見せるのか」と驚きもあったのですが、あの結果は、宮崎さんからしたら想定の範囲内でしたか?
「PRODUCE」シリーズはすでにすごい人気があったし、韓国の大手の事務所から参加する練習生がいたりして、過去のシリーズより絶対にレベルが上がってるだろうなと思ってました。だから実力の差にAKB48の子たちが衝撃を受けてる姿を見ても「でしょ? これがK-POPだから」って、向こう側の視点でいたんです(笑)。でも自分が実際やるとなると、やっぱりパフォーマンスの実力が足りなくて、うまくできない自分にすごくモヤモヤして。「今までもっとちゃんとやっておけばよかった」って、ネガティブな気持ちになっちゃったのは事実です。あまりにもK-POPの世界への憧れが強すぎて、番組の前半は特に、そこに自分が足を踏み入れていることに対してすごく縮こまっちゃったんですよね。もしあの頃に戻れるなら、自分のお尻を叩きに行きたいです(笑)。
──ですが、そのあと宮崎さんは努力を重ねて勝ち残り、最終回の手前では最高順位2位まで上りつめました。思い出深いパフォーマンスを挙げるとするとどれになるでしょう?
ポジション評価で歌った、BTS(Feat. Steve Aoki)の「The Truth Untold」ですね。選曲も自分たちでしたのですごく思い入れがあって、鮮明に覚えています。メンバーは竹内美宥ちゃん、岩立沙穂ちゃん、(チャン・)ギュリの4人だったんですけど、ギュリだけが韓国人だったので、なかなか意思疎通ができなくて苦しんでいたことがあって。でも、4人の空気感が似ていたので、全然ケンカとかがなかったんですよ。ほかのグループのときはだいたい何かしらストレスが生まれてしまってたんですけど、あのグループは先生にも初めて褒められて。自信がすごくありましたね。
──呼吸の合った歌声が感動的なステージでした。実際にK-POPの本場でトレーニングを受けてどういうふうに感じましたか?
やっぱりまったく違うなと。「ここまで徹底的に練習していたらそりゃうまくなるな」って、身に染みてわかったし、逆にここまでやらないとダメなんだなとも思いました。スタイルはまったく違うけど、うまくなっていく過程を皆さんが応援してくださる日本のアイドルも、すべて完璧にしてからデビューする韓国アイドルもどっちも正解。でも韓国のアイドルになりたかったらこのレベルじゃダメなんだなって。練習生たちはみんな私より年下でしたけど、すごく刺激になりました。
──「PRODUCE48」が終わってから、高橋朱里さんや竹内美宥さんはAKB48を卒業して韓国でデビューしています。宮崎さんもその道を目指そうと思ったことはないですか?
ああ、そうですね、行くことを考えたこともあるし、今でも行かないと決めてはいない、という感じなんですけど……韓国に行くイコール成功、ではないと思うんです。少しでも不安要素があるなら行かない、行くならばちゃんと整理してから決断して、向こうでまたイチからがんばりたいなと。アイドルとは違う形も考えているし、やりたいことが決まったら、しっかり勉強して韓国語も完璧にしてから踏み出したいです。
──なるほど。ちなみに「PRODUCE48」が終わってから、IZ*ONEのメンバーや韓国の練習生仲間とは連絡を取り合ったりしていますか?
出演中はスマホ使用禁止だったので、カカオトーク(メッセージアプリ)のID交換ができなかったんですよ。のちのちInstagramから連絡をくれて、今でも交流している子はいます。(シン・)スヒョンちゃんとはついこの間DMしましたね。「また韓国で会おうね」って。
──このコロナ禍ではその日もいつになるやらという感じで悲しいですね……。韓国へ最後に行ったのはいつですか?
去年の1月が最後ですね。もうそこからは行けてないので韓国が恋しすぎて。Google Earthで韓国の道を眺めたりとか、現地に住んでいる方のYouTubeとかを毎日観たりしては、浸ってます(笑)。
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