MIYAVIは変わりゆく世界で何を歌うのか 「Imaginary」で放つ未来へのメッセージ

音で人を解放するという役目

──キンブラのフィーチャリングはどういう経緯で?

たまたま(笑)。今回コラボしたアーティストとの出会いや参加の経緯は、本当に全部たまたま。この曲は「攻殻機動隊」の草薙素子じゃないけど、拙い発音の日本語で彼女が参加する感じってサイバーで斬新なんじゃないかなって。本当は違う曲で一緒にやろうって言ってたんだけど、今回タイミングあってこの曲に興味持ってくれたので、ぜひ!ということで。日本語での歌唱含め、素晴らしい歌声を披露してくれました。

──この曲のドラムのみメタル界隈のベテラン、ジェフ・マーティンが叩いているのもシブい人選ですね。

MIYAVI

そうそう。ビートもどんどんリバイバルするから、今だとかえって新鮮な音像かもしれないなって。

──MIYAVIさんのギターも確実に変わりましたね。ダンサブルにどうリスナーを踊らせるかというトライを経て、「NO SLEEP TILL TOKYO」(2019年7月発売)ぐらいで自身のシグネチャートーンを確立して、今回はより曲の中で精神性を解放するようなアプローチになったというか、リズムを刻むというよりも直情的なダイナミズムを表現するギアのような役割になった気がします。

そうですね。音で人を解放するという自分の役目により自覚的になったことでギターの使い方も変わってきた。ずっと弾いてなくてもいいというか、より歌に近くなったのかもね。

──「Imaginary」にはMIYAVIさんによるNirvana「Smells Like Teen Spirit」のカバーも収録されています。リリックはコロナ禍に照らし合わせて読むと違うハマり具合で聞こえて驚きました。

最初はそこまで深い意味もなかったんです。実はコロナ禍の前に録っていたし、単によくカラオケで歌うフェイバリットだからっていう(笑)。ただ、この曲、世界の音楽シーンをガラッと変えたじゃないですか。彼らが示したアティテュードをMIYAVIサウンドで2021年のアルバムに入れてみるのは面白いんじゃないかと思った。どうせやるなら自分のものにしたかったし、これくらい自由にやらせてもらえて本当に光栄でした。

なんでもありのバラエティ感

──「Living In Fire」のサビで感じられるちょっとカントリーウエスタン風なメロディも興味深いです。

これは「Holy Nights」に入れようか迷った曲だった。今回も実はちょっとダークなのもあってスルーしようかと思ったんだけど、チームのみんなからの勧めもあって入れました。メッセージ的な時系列で言うと「Holy Nights」と「Imaginary」の間の曲です。

MIYAVI

──「Hush Hush(feat. Kang Daniel)」はカン・ダニエルの参加も含めてMIYAVIさんとしては珍しいちょっとボーイズバンド風なテイストですね。

自由と束縛の矛盾とそこで感じる憤りを歌いました。カンくんの中性的な声と僕の声が混ざり合って不思議なデチューン感が生まれています。考えてみると今回はどの曲もまったく毛色が違う。正直、自分の中でのアルバムの作り方もだいぶ変わってきました。そこにはマーケットの変化も影響しています。アルバムを全体通して聴くよりも曲をピックして聴くリスナーが多いから、アルバム全体の世界観というより1曲1曲のポップさやキャッチーさに重きをおいて結果として何でもアリになったところもある。でもそれもまたアリかなって。

──いずれも毛色が違うとは言いつつも、8曲目「I Swear」、9曲目「Are You With Me?」とアルバムとしての起承転結も感じられますが。

そこは本当に成り行きというか結果的に収まった感じでした。もちろん曲順は大事だけど、今回チームとしては起承転結よりも曲単体の完成度に重きを置いていたから。どのみち僕の作品自体「未来への解放」というメッセージが一貫して入っているので、自然と辻褄が合ったという感じなのかな、と。

──ラストの「Dance With Me」も新鮮でした。レコードノイズっぽい演出とかチークダンスみたいなテンポとか、MIYAVIさんは意外とこういうのもハマるのかという発見がありました。それこそ「上を向いて歩こう」のようなスタンダード感もあって。

当初、自分の持ってたイメージは「美女と野獣」だったんだけど、ジェフはジェフでキャプテン・アメリカがバーにいる「アベンジャーズ」のシーンを勝手に思い浮かべてアレンジしてた(笑)。僕のレパートリーには離れた状況の歌が多い。この曲も実際に会えない人と夢の中でだけで会えるというストーリーで「インセプション」や「マトリックス」の世界じゃないけど、何をもってリアリティなのか? 夢の中でもリアルを感じられて、そこに存在し続けられるのであれば、それって幸せなことなんじゃないか? バーチャルリアリティやメタバースもそうですが、どんどんリアルとバーチャルの境目がなくなってきてる中で大切なものってなんだろうとよく考えます。

「Super Hero」で改めて考えた本当の愛し方

──ボーナストラックで雅-miyavi-時代の「Super Hero」を収録した理由は?

シンプルにファンのみんなに喜んでもらいたかったから。前回は「DAY 1」をセルフカバーしたので今回も今のサウンドで何か入れたいなと。「離れる事が 二人の為なら ここからずっとずっと祈ってるよ」というサビもアルバム本編のメッセージとリンクしていたので。

──さっきもMIYAVIさん自身が話していたけど、MIYAVIが改めてMIYAVIの役割を宣誓する意味合いもあったのかなと感じられました。

そうですね。10年以上前に書いた曲だから若干若さも感じるけど、世界を救うとか人を元気にするとかギターでロックするという思いや、自分が本当に大切な人やファンのみんなの人生にとってどうあるべきか、何が本当の意味での愛し方なのか?ということを改めて考えさせられたタイミングでもあったので。

──本作を完成させて、改めて今後の活動についてはどんな思いですか? MIYAVIさん自身がこの変容していく世の中を見つめ、音楽で記録していこうという速度はより増していくのでしょうか?

そこはまだわからないかな。コロナ禍の行方も不透明だし。その時その時に自分のやれることを全力でやっていく、それのみかなと。あと、9月末に京都の清水寺で無観客のバーチャルライブをやろうと思っていて。

──おお。

ずっとやりたかったんだけど、去年は改修工事もあったのでようやく。「オリンピック開会式、俺だったらこうするぜ?」みたいなステージをやってみようかなって(笑)。

──アメリカツアーのほかにも、Netflixの映画「KATE」やAmazon Prime Videoの番組「ザ・マスクド・シンガー」の配信もあって、ECCの活動も含めると相変わらず忙しく走り続けるようですね。

コロナ以前と比べたら全然余裕です。家族との時間も持てているし。もちろん日本でもガツンとツアーをしたいです。さらに年末に向かって新しい活動の情報解禁も予定しているので楽しみにしてください!

MIYAVI

ライブ情報

MIYAVI Virtual Live 6.0 in 京都・清水寺 "MIYAVI in KIYOMIZU"

配信日時:2021年9月26日(日)20:00~

<出演者> MIYAVI
上妻宏光 / 尾上右近 / 太鼓芸能集団 鼓童 / 剱伎衆かむゐ / 雷光炎舞かぐづち / Akari / コロッケ / BOBO / 櫻田泰啓 / Hanah Spring / カマタミズキ

配信はこちら

MIYAVI North America Tour 2021 "Imaginary"(※すべて現地時間)
  • 2021年9月30日(木) カナダ カルガリー MaCewan Ballroom
  • 2021年10月2日(土) カナダ バンクーバー Imperial
  • 2021年10月4日(月) アメリカ シアトル The Crocodile
  • 2021年10月5日(火) アメリカ サンフランシスコ Great American Music Hall
  • 2021年10月8日(金) アメリカ ロサンゼルス El Rey Theatres
  • 2021年10月9日(土) アメリカ メサ Nile Theater
  • 2021年10月11日(月) アメリカ ラスベガス House of Blues
  • 2021年10月13日(水) アメリカ ソルトレイクシティ Metro Music Hall
  • 2021年10月14日(木) アメリカ デンバー Marquis Theatre
  • 2021年10月16日(土) アメリカ オースティン Come and Take It Live
  • 2021年10月17日(日) アメリカ ダラス Trees
  • 2021年10月19日(火) アメリカ シカゴ Cobra Lounge
  • 2021年10月20日(水) アメリカ シカゴ Cobra Lounge
  • 2021年10月22日(金) アメリカ ピッツバーグ Thunderbird
  • 2021年10月23日(土) カナダ トロント The Opera House
  • 2021年10月25日(月) カナダ モントリオール Le National
  • 2021年10月27日(水) アメリカ ニューヨーク Sony Hall
  • 2021年10月28日(木) アメリカ ボストン The Paradise Rock Club
  • 2021年10月29日(金) アメリカ ワシントンD.C. State Theatre
  • 2021年10月31日(日) アメリカ アトランタ The Masquerade
MIYAVI Japan Tour 2021 "Imaginary"
  • 2021年12月9日(木) 北海道 Zepp Sapporo
  • 2021年12月14日(火) 東京都 Zepp Tokyo
  • 2021年12月18日(土) 福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年12月19日(日) 大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年12月21日(火) 愛知県 Zepp Nagoya
MIYAVI(ミヤヴィ)
MIYAVI
1981年大阪府出身のアーティスト / ギタリスト / 俳優。エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を浴び、これまでに約30カ国350公演以上のライブ、8度のワールドツアーを成功させている。近年ではコロナ禍の2020年4月にアルバム「Holy Nights」をリリースし、「どんな状況でも音楽を止めない」という思いからバーチャルプロジェクト「MIYAVI Virtual」を立ち上げてさまざまな配信イベントを実施。多彩な活動でも注目され、アンジェリーナ・ジョリー監督の映画「不屈の男 アンブロークン」(2016年日本公開)で俳優としてハリウッドデビューを果たしたのち「BLEACH」「ギャングース」「キングコング:髑髏島の巨神」「マレフィセント2」にも出演した。またY-3、Monclerなどでモデルとしても活躍。Gucciの広告キャンペーン「Gucci Off The Grid collection」に日本人として初めて選ばれ、昨年6月よりブランドアンバサダーを務める。音楽活動や俳優業、モデル業のかたわら、難民問題への知識を深め、2017年には日本人として初めてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使に就任した。2021年9月にはアルバム「Imaginary」をリリースし、9月から10月にかけて北米ツアー「MIYAVI North America Tour 2021 "Imaginary"」、12月に国内ツアー「MIYAVI Japan Tour 2021 "Imaginary"」を開催する。

衣装協力 / サンローラン ※カーディガン¥170,500、シャツ¥126,500(参考価格)、パンツ¥143,000、ベルト¥35,200、ネックレス¥44,000。すべて税込価格。ソックスは私物。 ※サンローラン クライアントサービス 0120-95-2746