ここからは改めて総力戦で

──そして「Long Nights」が配信版限定のボーナストラックになるそうですが、これは前作「Fire Bird」の中に収録されていましたよね？

完成直前に無理矢理ねじ込みました。俺は前にもナタリーで話した通り、UNHCRという国連の中の「難民高等弁務官」と呼ばれる団体の人たちとお仕事をさせてもらっていて、これはそのレバノンでの仕事から帰ってきてすぐに作った曲。「Fire Bird」のバージョンは俺が歌っているけど、もともとは誰かをフィーチャーしたくって、去年観た「ソニータ」という映画にインスパイアされて、主人公でもあるソニータにオファーさせてもらいました。実際、映画自体も10月から日本で公開されると聞いたので、ぜひ、今だと思いました。

──「ソニータ」は、アフガニスタンのタリバンから逃れてきた難民であるソニータが、女性が歌うことが許されないイランで、不法移民として施設でカウンセリングやアドバイスを受けながら、ラッパーを夢見る姿を捉えたドキュメンタリー映画ですね。本人はむちゃくちゃ驚いたんじゃないですか？

そりゃもうビックリしてた（笑）。彼女はアフガニスタンの子なんだけど、イランに移って、そこからこの映画がきっかけで、アメリカのユタ州にある大学が奨学金を出して呼んでくれて、今はアメリカで勉強中。ロサンゼルスまで飛んでもらいレコーディングしました。先日はニューヨークの国連のイベントでパフォーマンスして、本当はトロントの映画祭にも行く予定だったのに、例のトランプの大統領令の影響で、ビザが下りなかったらしくて。いろいろな意味でインパクトの強い映画なので、日本の人にも知ってほしいし、映画もチェックしてほしいですね。

──これで全曲分について聞きました。思えば“雅-MIYAVI-”が“MIYAVI”になってからのこの4年だけでも、いろいろな出来事や変化がありました。この「SAMURAI SESSIONS vol.2」は、結果としてそうしたMIYAVIのセルフプロデュース能力やアレンジ能力の目覚ましい成長を物語る1枚になったと言えるのではないでしょうか？

ありがとうございます。多くのものを得た一方で、いらないものはもういらないというのも明確になってきた。それが“DAY 2”の始まりでもある。以前も話したかもしれないですけど、戦車が撃ってくる弾に対して、俺は今までずっと刀で斬ってきたわけです。でも運よく弾の数発や戦車の1台くらいは斬れたとしても、所詮それは局地戦でしかなくて。

──何か「ルパン三世」の石川五ェ門みたいだけど（笑）。

しかもその後にパッと振り返ってみれば、後ろには何千万という戦車の大群が控えているわけですよ（笑）。本当は勝ち負けではないんだけど、「世界をギターで踊らせる」ということはつまりそういうことなのかなと。じゃあ、そこを突っ切るにはどうすればいいのか。もちろん、いつも全力だけど、ここからは改めて総力戦で臨むつもりです。

──なるほど。20周年までにどんな勝敗表と地図が描けているのか、楽しみですね。

冬のジャパンツアー“DAY2 Begins”も新たなチャレンジになると思うので、“DAY 2”がどんな景色になるのか、自分でも楽しみでゾクゾクしています。ぜひ、みんなにも体感しに来てほしいですね。