音楽ナタリー Power Push - MIYAVI
さらなる高みへの飛翔
自分のプレイがギターのコンディションに左右されるのがイヤ
──ギターの全体的なサウンドも、よりしなやかになったという印象を受けましたが。
弦の太さを変えたせいかな。これまでは(1弦が)0.13(から始まる)弦を使っていたんだけど……。
──えっ!? それ、かなり太いですね。
ドロップチューニング(※レギュラーよりも低い、低音を強調するためのチューニング)だったこともあって、単音で強い音を出したかったから。だから(1弦が)0.09とか一般的な太さのセットの弦で弾くと、何だか糸を弾いているみたいで……。
──ああ、大リーグ養成ギブスを外したような感じですか?(笑)
そうそう、「軽っ!?」みたいな(笑)。でもそういう細い弦から得られるバイブレーションもいいなと最近になって思えてきて、チューニングもレギュラーに戻しました。昔の曲をやるときは演奏するキーそのものを1音上げて演奏してます(笑)。ステージで何度もギターを持ち変えるのがあまり好きじゃないので。特別な意図があるときを除いて、できればライブでは最初から最後まで1本のギターで通して弾きたい。
──共同プロデューサーはレニー・スコルニック、マスタリングはハウィー・ウェインバーグ。「Raise Me Up」を除く各曲のミックスエンジニアにはクリス・ロード・アルジが参加していますね。
ミックスとマスタリングもだいぶ変わりました。ハウィーはNirvanaの「Nevermind」、Red Hot Chili Peppersの「母乳」や「Blood Sugar Sex Magik」、Beastie Boysの「Licensed To Ill」とか、西海岸系の傑作をひと通り手がけたような人で、クリスもロック系では知られたミキサーで、SUM41とかいろいろやっている人。まずクリスがあまり突っ込まずにガーッと太めにミックスして、最後にハウィーがブリブリに仕上げたって感じかな。アルバム全体の音像としては彼ら2人の存在もデカいと思います。
──ドラムの音色も変わりましたよね?
いつも叩いてくれているBOBOくんには、去年の年末に日本で叩いてもらって、そのデータをロスに持ち帰って切り貼りさせてもらいました。向こうで作った曲は、ブレンダン・バックリーというずっとシャキーラをやってるドラマーが今回叩いてくれています。
自分にはロックギタリストとしてのアイデンティティがある
──特にアルバムの前半、ピーキーなノリが途切れない感じは、昨今のEDMのトレンドも加味されているような気がしました。
グルーヴについてはそうですね。逆にビートについては完全に時代へのアンチテーゼというか。だって今のアメリカのメジャーシーン、ギターミュージックなんて聞こえてこないんだもん。テレビを付けてもMTVかけてもグラミー受賞式にしても、ロックバンドの姿がほとんどない。Alabama ShakesやTame Impalaとかいいバンドもいるけど、どちらかというと、ロックより少しスペーシーでほわっとした感じでしょ? でもやっぱ自分はロックギタリストとして、血湧き肉躍るビートの上で奏でたい。そしてそれをどう現在のシーンにぶち込むか。だからカリフォルニアロールなんですよ。
──なるほど。MIYAVIはこれまでもブッ飛んだサウンドを鳴らしてきた。でもどこか頭の芯はクールに冷えていたという印象があった。でもこの「Fire Bird」では、初めてリミッターが外れたという印象を受けました。そして「Another World」から「Hallelujah」までの全10曲目までで1つの曲というか、“Fire Bird”(=火の鳥)の視点から描いたストーリー仕立てのアルバムだと感じられましたね。
そうですね……あの、そもそも俺自身が鳥なんですよ、たぶん。
──「俺自身が鳥」とは?
俺ね、何だか鳥に縁があるんですよ。酉年生まれだし、映画の役名も“The Bird”だったでしょ(笑)、この前ロスでやったフォトセッションのときも、向こうのフォトグラファーが異常にデカい鷹を用意してくれて(笑)。今回も「Fire Bird」という曲から膨らんだイメージだったというか。自分自身、とにかく「飛び続けるんだ」という精神性でここまでやってきたし、「心さえ折れなければ何度だって飛べる」と信じてきた。だからある種スポ根的なのかもしれないけど、音楽で時空を旅する感覚というか、火の鳥が音楽という目に見えない芸術表現で時空を超えて、人と人の心を結び付けていくという物語をイメージしました。俺が俺自身を開放させるという行為が、今の自分にすごく必要だと感じられたんだと思う。やっぱり日本で暮らしていると、知らず知らずのうちにどこかで自分を抑制してしまってて。でも向こうの生活にもようやく慣れて、「ああ、全然抑えなくていいんじゃん。ここならもっともっと高く飛べるんじゃん」ということを学んだというか。解放はまさに大きなテーマの1つでしたね。
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- ニューアルバム「Fire Bird」 / 2016年8月31日発売 / Virgin Music
- 初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット] / 5378円 / TYCT-69105
- 通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60089
CD収録曲
- Another World
- Fire Bird
- Dim It feat. Bones
- Raise Me Up
- You Know It's Love
- Afraid To Be Cool
- She Don't Know How To Dance
- Steal The Sun
- Long Nights
- Hallelujah
<ボーナストラック> ※初回限定盤に収録
- Cocoon
初回限定盤DVD収録内容
- 「Raise Me Up」Teaser Video
- 「Afraid To Be Cool」Music Video (short version)
- Introduction to "NEW BEAT, NEW FUTURE"
※全国ツアー「MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"」のステージをイメージさせるスタジオパフォーマンス映像を収録- Cocoon
- Another World
- Raise Me Up
- Fire Bird
- Steal The Sun
MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"
- 2016年9月19日(月・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2016年9月21日(水)宮城県 Rensa
- 2016年9月22日(木・祝)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2016年9月24日(土)愛媛県 WStudioRED
- 2016年9月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2016年9月27日(火)熊本県 熊本B.9 V1
- 2016年9月29日(木)福岡県 DRUM LOGOS
- 2016年10月1日(土)大阪府 なんばHatch
- 2016年10月2日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2016年10月10日(月・祝)千葉県 幕張メッセイベントホール
MIYAVI(ミヤヴィ)
1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で注目を集めている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。2016年4月には前作から約1年ぶりとなる音源「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」を両A面シングルとして配信でリリースした。8月にニューアルバム「Fire Bird」を発表。9月からは全国ツアーを開催する。