音楽ナタリー Power Push - MIYAVI

さらなる高みへの飛翔

自分はアボカドのないカリフォルニアロールだった

──そのほかにロサンゼルスで得たものや感じたことは?

結論めいた考えはそう出ないものだし、出てもまた変わっていくものだと思うんだけれど……大まかな例え話で言うと“カリフォルニアロール”という存在が自分の中にはあって。

──それってアメリカの寿司屋で出てくる巻き寿司ですよね?

MIYAVI

うん。MIYAVIというアーティストは日本発で、ワサビも乗っているし、サーモンやら何やらといった寿司ネタも乗っていれば醤油も付いている。シャリもある。でもアボカドは持ってなかった。そのアボカドとは、メロディ、リリックにおける言葉選び、全体のコンポジションのすべてに関わるもので。日本人が中国やインドの音楽を聴くと、その国独自の匂いを何かしら感じ取るように、俺の中にも日本人でありJ-POPアーティストとしての匂いというか、クセのような臭みがあるんだなと気付いた。無論それはときには強みになるし、別に全否定したいわけでもないんだけど。ただ、アメリカ人にいきなり「寿司食えよオラ」っつって、無理矢理に口をこじ開けさせてもしょうがないし、誰もそんな寿司屋、また来たいって気持ちにはならないよね?(笑)

──確かに(笑)。

だからそのアボカドの作り方と、作品の中におけるアボカドの分量、アジャストメントについては、向こうでいろんなプロデューサーやらソングライターと幾度となく意見をぶつけ合いました。今回、特にソングライターは20代前半から後半の連中だったので、すごくフレッシュな制作環境でした。

──自身よりも若いソングライターからの刺激や学びは?

たくさんありますよ。彼らはこれまで組んできたJam&LewisやDrew&Shannonといったベテランとはまた違う意味で、俺が持っていないものをたくさん持っている。彼らがルーツ、つまりアースというか、根っこからの発信であるのに対して、俺は雲の上とか宇宙とか“上から”発信するタイプなので、彼らにとっても面白い作業のようでした。

自分のアイデンティティをどうリスナーにプレゼンテーションするのか

──「The Others」はナッシュビル産ということもあって、ギタープレイには寿司というよりもカントリーの要素が感じられたし、ルーツミュージック的なアメリカの泥臭い要素も感じられました。つまりステーキもマッシュポテトも添えてあったというか。

そう。パンで巻いてみたり、ケチャップを試してみたり(笑)。俺自身のキャリアはもちろん、音楽シーン全体も、まだ過渡期のようなタームにあるという実感もあったし。であれば、アボカドをどう添えて自分のアイデンティティをリスナーにプレゼンテーションするのか? その答えの1つが、今回の「Fire Bird」です。

──「Fire Bird」を聴いて、まず感じたのは、サウンドがすごくピーキーで、MIYAVI史上もっとも獰猛だということでした。特にギターはフレーズ、音色共に荒れ狂った火の鳥が鳴いているような音を出しているし。

そうですね(笑)。まずギターが変わりました。前作のときはLSL INSTRUMENTSというブランドのテレキャスタータイプを作って、取材を受けたり雑誌の表紙を飾ったりしていたんだけど、ある日FENDERから「本物のテレキャスターはどう?」と連絡が来て(笑)。だから「そんなに自信があるなら弾かせてみてよ」と(笑)。

──おおー!

MIYAVI

ロスから2時間くらいのコロナという街にあるカスタムショップのファクトリーまで行って、10人ぐらいのギタービルダーとも話して。日本、アメリカのFENDERチームと意見交換しあってできたのが、トレモロアーム付きのテレキャスター。しかも他社のアームを積んでいます。

──それ、正直FENDERとしてはあまりウエルカムなオーダーではないですよね?(笑)

かもね(笑)。たぶんFENDERのカスタムショップでも初めてのことだと思う。でもそのサウンドが今の自分には必要だったので。テレキャス全部、アーム付きにしちゃった。10年前くらいまではアームを使っていたんだけど、スラップ奏法を始めてからは使わなくなってたから。今回、鳥のいななきみたいなサウンドはアームを使っています。

ニューアルバム「Fire Bird」 / 2016年8月31日発売 / Virgin Music
初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット] / 5378円 / TYCT-69105
通常盤 [CD] / 3240円 / TYCT-60089
CD収録曲
  1. Another World
  2. Fire Bird
  3. Dim It feat. Bones
  4. Raise Me Up
  5. You Know It's Love
  6. Afraid To Be Cool
  7. She Don't Know How To Dance
  8. Steal The Sun
  9. Long Nights
  10. Hallelujah

<ボーナストラック> ※初回限定盤に収録

  1. Cocoon
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Raise Me Up」Teaser Video
  • 「Afraid To Be Cool」Music Video (short version)
  • Introduction to "NEW BEAT, NEW FUTURE"
    ※全国ツアー「MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"」のステージをイメージさせるスタジオパフォーマンス映像を収録
    • Cocoon
    • Another World
    • Raise Me Up
    • Fire Bird
    • Steal The Sun

MIYAVI Japan Tour 2016 "NEW BEAT, NEW FUTURE"

2016年9月19日(月・祝)北海道 札幌PENNY LANE24
2016年9月21日(水)宮城県 Rensa
2016年9月22日(木・祝)石川県 金沢EIGHT HALL
2016年9月24日(土)愛媛県 WStudioRED
2016年9月25日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2016年9月27日(火)熊本県 熊本B.9 V1
2016年9月29日(木)福岡県 DRUM LOGOS
2016年10月1日(土)大阪府 なんばHatch
2016年10月2日(日)愛知県 DIAMOND HALL
2016年10月10日(月・祝)千葉県 幕張メッセイベントホール
MIYAVI(ミヤヴィ)

1981年大阪府出身のソロアーティスト / ギタリスト。ピックを使わず指でエレクトリックギターを弾く、独自のスラップ奏法で注目を集めている。2010年10月リリースのアルバム「WHAT'S MY NAME?」では、ギターとドラムのみの編成でオリジナルのサウンドを確立。2012年11月にさまざまなジャンルの“サムライアーティスト”とのコラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.1」を発表し話題を呼んだ。ほかにも布袋寅泰、野宮真貴、Good Charlotteらの作品への参加など精力的な活動を続け、2013年6月には自身の名を冠した海外デビューアルバム「MIYAVI」をリリース。さらに2014年にはSMAPのシングル「Top Of The World」を作曲し話題を集めた。また同年の12月には俳優として出演したアンジェリーナ・ジョリー監督によるハリウッド映画「UNBROKEN」が全米で公開された。2015年4月にDrew & Shannonをプロデューサーに据えロサンゼルス、ナッシュビルにて制作されたフルアルバム「The Others」を発表。2016年4月には前作から約1年ぶりとなる音源「Afraid To Be Cool / Raise Me Up」を両A面シングルとして配信でリリースした。8月にニューアルバム「Fire Bird」を発表。9月からは全国ツアーを開催する。