宮下遊|絵を描くように歌うボーカリストが向かう先

特定の声色にこだわる必要はないんじゃないか

──アルバムにはボカロ曲のカバーやボカロPの書き下ろし曲が並んでいるわけですが、「VORACITY」だけ毛色が違いますよね。MYTH & ROIDのアニソンをカバーした理由は?

もう2年ぐらい前になるんですけど、同じくMYTH & ROIDさんの楽曲で「JINGO JUNGLE」というアニソンがあって、そのカバーを動画で公開したことがあったんです。普段ボカロ曲のカバーを歌っていたから、僕にとって当時はけっこう冒険的なことで。今回はそのときのことを思い出して、アルバムでもアニソンのカバーを入れてみました。

──ボカロの曲とアニソン、カバーするときの違いってどういうところにありますか?

ボカロの場合は自分なりの解釈でアプローチを考えるんですけど、例えば今回の「VORACITY」の場合は本家のMYTH & ROIDさんの歌をメチャクチャ参考にしました。「VORACITY」って「オーバーロード」というアニメのオープニングテーマなんですけど、自分で歌うにあたって、アニメはもちろん、原作の小説も読み込みまして。歌詞に書かれていることの意味も必死に考えて、すごく慎重に歌いました。

──ボカロ曲をカバーするときはどんなことを考えているんですか?

曲を聴いたときに湧いてきたアイデアを詰め込むと自分らしい感じというか、けっこう理想的な形になることが多いですね。感覚的に作っているので、ちゃんと説明するのは難しいんですけど……。

──遊さんが今おっしゃった「自分らしい感じ」ってどういうものか言語化できますか?

自分で言っといてなんですけど、それがわからなくなってきてしまったんですよ(笑)。いろんな声色で歌いすぎて、どれが本当の自分らしい声なのかわかんなくなっちゃって。でも最近は、ある特定の声色にこだわる必要はないんじゃないかって考えているんです。1つの曲の中にいろんな歌い方を詰め込む歌手がいてもいいじゃないかって。1曲の中でも展開があるわけですから静かな部分と激しい部分で、それを同じ声色で歌わなきゃいけないってルールはないはずなんですよ。僕はそのパートごとに合う声色で歌いたいから、自分の解釈で最適な声を選んで歌っているんです。「いろんな声がとっ散らかってる」とか言われることもありますけどね。

──いろんなことができるがゆえに、発想が自由になっているわけですよね。

はい。例えばみきとPさんの「少女レイ」って曲をカバーするとき、僕は最初「演歌っぽく歌ったら面白いかもな」と思って試してみたんです。面白すぎて、明らかに合ってなかったのでボツにしました(笑)。そうやってボツになるアイデアがたくさんある中で、曲に対してどういう声が合っているかは常に試行錯誤しています。

宮下遊といえば歌だ

──2018年の最後にソロアルバムをリリースし、2019年には発売記念イベントなどの稼働も決まっています。

僕のこれまでの活動を振り返ってみて、今年1年間の活動って動画の再生回数のような数字で見てもけっこう好調だったんです。Doctrine Doctrineでの活動やソロアルバムをリリースしたことでその規模がまた1つ拡大して、さらに次のステージに向かいたい気持ちが強くなっています。まずは動画制作に力を入れて、ちゃんと数字で規模が大きくなっていることを証明していきたいです。

──アルバム制作に注力していたとはいえ、今年は“歌ってみた”などの動画公開の本数も多かったですよね。

そうなんです。1つ悔しかったのが、今年の7月くらいで去年アップロードした動画の本数を上回っていたんですけど、「アルバムの作業ばかりやってないで、動画をもっと公開してほしい」みたいなコメントをいただいたことで(笑)。ちゃんと本数で見てくれよと思いつつ「いいだろう、もっと公開してやろうじゃないか」みたいに燃えましたね。

──それくらい、遊さんの作品が求められている証拠だと思います。

ちゃんと歌で求められているのがうれしいんですよね。イラストが描けたり、曲が作れたりで、いろんなことができる分、歌に集中するのが遅くなってしまったので。10年もかかっちゃいましたけど、「宮下遊といえば歌だ」ってことをしっかり定着させて、来年は歌で本格的に勝負していく1年にしたいですね。

宮下遊「青に歩く」
2018年12月19日発売 / EXIT TUNES
宮下遊「青に歩く」初回限定盤

初回限定盤 [CD+グッズ]
3240円 / QWCE-00697

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宮下遊「青に歩く」通常盤

通常盤 [CD]
2700円 / QWCE-00698

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収録曲
  1. テレストテレス[作詞・作曲:かいりきベア]
  2. 少女レイ[作詞・作曲:みきとP]
  3. アンノウン・マザーグース[作詞・作曲:wowaka]
  4. 青年よ、疑問を抱け[作詞・作曲:てにをは]
  5. ロキ[作詞・作曲:みきとP]
  6. VORACITY[作詞・作曲:MYTH & ROID]
  7. 舞台性ナニカ[作詞・作曲:きくお]
  8. Fading ghost[作詞・作曲:蜂屋ななし]
  9. メルティランドナイトメア[作詞・作曲:はるまきごはん]
  10. [作詞・作曲:Mah]
  11. 青へ向かう[作詞・作曲:シャノン]
イベント情報
宮下遊「青に歩く」発売記念イベント
  • 2019年1月5日(土) 東京都 タワーレコード新宿店 7階イベントスペースOPEN 14:00 / START 14:30
  • 2019年1月12日(土) 京都府 タワーレコード京都店 イベントスペースOPEN 12:00 / START 12:30
  • 2019年1月12日(土) 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペースOPEN 16:30 / START 17:00
宮下遊(ミヤシタユウ)
動画共有サイトで活動する男性ボーカリスト。作詞、作曲、編曲、イラスト制作などを幅広く手がけるマルチクリエイターとして動画共有サイトを中心に活動している。2008年からニコニコ動画やpixivで自身の作品を発表し始め、2016年には1stアルバム「紡ぎの樹」をリリース。2018年2月にはボカロPのseeeeecunとのユニット・Doctrine Doctrineとしてアルバム「Darlington」を発表した。同年12月、ソロ名義で2枚目のアルバム「青に歩く」をリリースした。