ナタリー PowerPush - 宮野真守
初の武道館ワンマン目前 “未来”を描いた4thアルバム完成
宮野真守のアイデンティティ、日本人であること
──そしてシングル曲「ULTRA FLY」を挟んでの「Identity」ですが、これも衝撃でしたね。現代的なダンストラックと古典的な“和”の世界観が融合していて。PVもまたすごくて……。
ええ、攻めてるPVになりましたね(笑)。
──攻めてましたねー(笑)。PVはアルバムリリース前に公開されましたし、リードトラックとしてアルバムを象徴する1曲になっていますけど、ここまで極端に“和”のモチーフを導入したのはどういう意図で?
和をモチーフにしたR&Bを以前からずっとやりたいと思っていたんです。今回のアルバムのテーマは「未来」ですが、「過去から続いた先の未来」という形でメッセージも込められるなって。それに、この先の日本武道館公演を見据えたときに、武道館で和をモチーフにした楽曲ができたら、素敵だろうなと思いました。
──そうですね。まさに日本武道館というハコをイメージしたときに、この曲はかなり映えるだろうなと。また似合うんですよね。あの攻めたビジュアルが(笑)。
ありがとうございます(笑)。実はずっと、映像でも和を取り入れたビジュアルをやってみたかったんです。PVは自分が曲に込めた思いと、監督が持っているイメージをすり合わせて作っていきました。和のイメージと現代的なサウンドの融合は、Jinさん(Jin Nakamura / 作・編曲担当)にとっても大きなチャレンジだったそうで。Jinさんが海外で感じた思いと、今回僕が作りたかった曲のイメージが運命的に合致して、できあがったのがこの曲です。
──一方で8曲目の「辻の華」も二胡の音色が取り入れられていて、アジア的な、オリエンタルな雰囲気を持っていますよね。このアルバムで日本、アジアを感じさせるものを取り入れたのは、まさにアイデンティティというか、日本人としての自分を強く意識したのかなと感じたのですが。
今回特別に意識したというわけではないですけど、Jinさんが曲作りの際に聞かせてくださった海外での活動を通して感じた思いを伺って、より強く「日本人であること」を意識するようになりました。
振り切ったキラキラのアイドルソングを
──さらに「愛の詩~Ulyssesの宴~」にはジャズの要素があったりと、アルバム用の新曲には新しい要素がいろいろと盛り込まれていますよね。9曲目の「スーパーノヴァ」も……。
この流れで来たらビックリしますよね。「何事?」って1回止めたくなるような(笑)。ライブで盛り上がる曲が欲しいなと思って、みんなで一緒に盛り上がれるような、参加型の曲にしたかったんです。じゃあ思い切ってキラキラのアイドルソングをやってみようか、という流れから、歌い方もああいう感じになりました(笑)。これはもう完全に振り切ろうって。
──相当振り切れてますね(笑)。目的通り、間違いなくライブで盛り上がる曲になるかと思います。
アルバムのリリースから武道館まではそんなに時間がないですけど、皆さんもぜひしっかり聴き込んでから会場に足を運んでくださるとうれしいです!
──でも声優としての仕事やキャラソンなどで、自分以外の何かになりきるのとは違って、あくまで宮野真守として振り切ったことをやるのは抵抗なくできるものですか?
あはははは(笑)。それはもう今さらですよね(笑)。ライブで鼻をたらしたり、ワサビ食べたりしていているのに、今さら「歌えません!」なんてことはないです(笑)。逆に、今だからこそ意味のある曲になったと思います。
人生の旅路を「passage,」という言葉に込めて
──終盤は「Calling」「passage,」と宮野さん自身が歌詞を書いた曲が続きます。「Calling」の歌詞を読み解くと……現代のデジタル社会に対しての警鐘とも取れるのですが、実際は?
この曲は自分自身に向けてのことなんです。僕自身、お互い顔を合わせないやり取りって危ないなって感じることがあって……。自分の気持ちをきちんと伝えられなかったり、相手の気持ちを正しく受け取ることができなかったり……。デジタルなつながりだけじゃなく、もっとアナログで、お互いが顔を合わせた密なコミュニケーションを取ったほうがいいなと思い、それを歌にしたかったんです。
──「passage,」はアルバムのタイトルトラックでもありますし、内容的にもアルバムのコンセプトがストレートに表現された、非常に重要な1曲だと思います。この曲はSTYさんとスタジオで1から作り上げたと聞きましたが、制作過程を詳しく教えてもらえますか?
STYさんとは、1から一緒に曲を作りたいというお話はずっと前からしていたんですけど、アルバム曲「UNSTOPPABLE」の制作を進めていく中で、今回挑戦してみようという話になりました。STYさんと一緒にスタジオに入って「さあどういう曲を作ろうか」というところから始まったのですが、そういう作り方をする上で、歌詞は絶対に先にあったほうがいいと思って……。実は初めて歌詞先行での曲作りに挑戦しました。題材に関しては迷いはなく、とにかく自分の言葉でアルバムのコンセプトを表現したいと思ったんです。
──それが冒頭に話していただいた「しっかり歩いた先の未来」。
はい。STYさんには「UNSTOPPABLE」で、ucioさんには「未来」という楽曲で、それぞれアルバムのコンセプトである未来をクリエイターさんの言葉で表現していただいたのですが、自分の言葉でも未来の形がしっかりと描ければいいなって。でも、歌詞先行での曲作りは初めてだったので、テーマは決まっていても、どういう構成で書けばいいのか、どういう思いをつづればいいのか、なかなか形にならなかったんです……。そんなときちょうどジャケット撮影が北海道であったんです。それもいわゆる旅の1つで、違う地に足を運ぶことによって見えてくるものがあるんだなって実感しました。いろいろ悶々と考えているタイミングだったのですが、行きのフライトのときから感性がもうビンビンになっていて(笑)。
──あはははは(笑)。
その日は曇りだったんですけど、飛行機が雲を抜けて光が差した瞬間の風景がとても美しくて。そのとき感じた前向きでポジティブな思いを言葉にしたらどうなるんだろうと考えてみたら、何かに背中を押されたようにどんどん言葉が沸いてきたので、旅を終えて東京に戻ってからじっくり歌詞としてまとめました。短いながらも自分の道のりを書けたらいいなって。人生の旅路を「passage,」という言葉に込めて。
──曲のタイトルがただの「passage」ではなく、「,(コンマ)」が付いているのも気になりました。ただの単語ではなく、ピリオドでもなく、コンマが打たれているのにはどんな意味が込められているのかなと。
コンマは「ここからまだ続く」という意味です。この曲ができあがってから、アルバムタイトルを決めようということになったのですが、一番「PASSAGE」という言葉がこのアルバムを表すのにピッタリだなと思い、大文字の「PASSAGE」にしました。
- ニューアルバム「PASSAGE」/ 2013年9月18日発売 / KING RECORDS
- 初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / KICS-91964
- 通常盤[CD] 3000円 / KICS-1964
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CD収録曲
- UNSTOPPABLE
- ULTRA FLY
- Identity
- THANK YOU(reprise)
- 愛の詩~Ulyssesの宴~
- GOLDEN NIGHT -futuremix-
- カノン
- 辻の華
- スーパーノヴァ
- Calling
- passage,
- 未来
初回限定盤DVD 収録内容
- ULTRA FLY(MUSIC VIDEO)
- カノン(MUSIC VIDEO)
- Identity(MUSIC VIDEO)
- MAKING
宮野真守(みやのまもる)
1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でメジャーデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2012年5月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにてワンマンライブ「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2012~FIGHTING!~」を大成功に収めた。2013年9月18日には通算4枚目となるニューアルバム「PASSAGE」をリリース。10月4日には初の日本武道館公演「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2013 ~TRAVELING!~」を行う。