ナタリー PowerPush - 宮野真守

なんでも大好き、だからこだわる

「DEATH NOTE」の夜神月役、「機動戦士ガンダム00」の刹那・F・セイエイ役など数多くの主人公役を担当し、声優として確固たる地位を築いてきた宮野真守。その一方で歌手としても精力的な活動を見せ、2008年のデビュー以降、7枚のシングルと3枚のアルバムをリリース。声優の活動で培った豊かな表現力と魅惑の歌声を武器に、アーティストとしても高い評価を得てきた。そして11月14日に8thシングル「ULTRA FLY」を発表し、年末からは自身初となるカウントダウンライブを含む全国ツアーを開催する。

ナタリーでは声優としての宮野真守はもちろん、アーティストとしての宮野真守の魅力に迫るべくインタビューを実施。これまでの経歴に加え、アーティストとしてのこだわりや仕事への向き合い方についてたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 増田桃子

「そこに演じる人がいる」って青天の霹靂

──まずは宮野さんが声優になられたきっかけについて教えてください。

子供の頃から(現在の所属事務所)劇団ひまわりに入っていたんです。元々は兄が入団していたんですが、僕が「お兄ちゃんと同じことをやりたい」って駄々をこねて一緒に入れてもらったらしいです(笑)。7歳のときから演技をメインにレッスンを受けてきました。

──ということは、最初は俳優を目指していたんですか?

うーん……。正直言って小・中学校の頃は真面目にレッスンに通ってるっていうような子供ではなかったので(笑)、最初は習い事の延長線上だったと思います。でも、小さい頃から芸能のお仕事に触れていたので、刷り込みのように「自分の仕事はこれなんだな」とは思ってはいました。それが、高校に入ったあたりで「そろそろやべえな……」って気持ちが芽生え始めて。

──将来のことを考え始めたんですね。

ちょっとレッスンを真面目にやろうかなと(笑)。その後、高校3年生のときに受けた「私はケイトリン」というNHK海外ドラマのオーディションで運良く拾っていただいて、声優としてデビューすることができました。

──劇団では声優の勉強もしてきたんですか?

いえ、当時「声優」としてのレッスンはなかったので。そもそも、そのオーディションのお話をいただいて初めて、「そっか! 自分が好きで観ていたアニメや洋画の声も演じる人がいるんだよな」と意識したといいますか。まさに、青天の霹靂みたいな。なのでオーディションには受かったものの声優のノウハウも知らず演じることになって、先輩の声優さんを見て学んだり、ディレクターさんに教えてもらったりと必死でした。

──俳優と声優とでは、演じる上で違いはなかったですか?

俳優も声優も、芝居に対する心構えやスタンス、演じる役への向き合い方は同じだと思います。違うのはテクニカルな部分ですね。専門的な収録の方法やルールを身につけるのには時間と経験が必要でした。最初はマイクを意識しすぎるあまり、マイクと喋っている状態になってしまっていたり。それを監督に指摘してもらって、環境を気にせず、今まで勉強してきたことを信じてお芝居ができるよう導いてもらいました。

田中真弓の「ゴムゴムの気円斬」!

──声優を意識されなかったということは、あまりアニメは観られてなかったんですか?

いやそんなことないです。めちゃめちゃアニメっ子でした。僕が小・中学生の頃はゴールデンタイムにジャンプアニメをたくさん放送していて、「ドラゴンボール」「幽☆遊☆白書」「SLAM DUNK」「るろうに剣心」とか大好きでよく観ていましたし、妹がいたので「セーラームーン」とかも普通に観てました。子供心に声優さんについて感じてたのは「悟空と悟飯が一緒の声だ! すげえ!」くらいかな……(笑)。普通に視聴者として楽しんでいたので、オーディションのときに「自分もテレビの中に入れるのかな」とワクワクしちゃいました(笑)。

──声優としてデビューした後、共演してうれしかった方はいますか?

そりゃもうたくさんいますけど……。田中真弓さんにお会いしたときはやばかったです。実はアニメのお仕事ではまだ共演したことがないんですが、僕がことあるごとに「『ONE PIECE』大好き!」って言い続けていたので、ラジオのスタッフが僕に内緒で真弓さんをゲストに呼んでくれたんですよ。スタジオに入ったらいきなり真弓さんがルフィの麦わら帽子をかぶって「よう!」って……(笑)。

──それはすごいサプライズですね。

もう緊張して何も喋れなくなってしまって(笑)。でも勇気を振り絞って「僕は『ONE PIECE』が好きなんですけど、『ドラゴンボール』も大好きでずっと観てたんです!」って言ったら真弓さんが「ゴムゴムの気円斬」をやってくれたんですよ!

──クリリンとルフィのコラボ!

「ワーッ!」って真っ二つにされました(笑)。贅沢な時間でした。

宮野真守(みやのまもる)

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降はアニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍し、2003年にはミュージカル「『テニスの王子様』 Remarkable 1st Match 不動峰」でも高い評価を集めた。ミュージカルや出演アニメのキャラクターソングで歌手としての実力も発揮し、2008年にシングル「Discovery」でメジャーデビュー。2009年3月には1stアルバム「BREAK」を発表した。ライブ活動も積極的に行っており、2012年5月には神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにてワンマンライブ「MAMORU MIYANO SPECIAL LIVE 2012~FIGHTING!~」を大成功に収めた。2012年11月14日には通算8枚目となるニューシングル「ULTRA FLY」をリリース。