miwa|ベスト盤に込めた濃厚な8年間

自分の声が好きじゃなかった

──今回はリリース順に楽曲が並べられています。その歴史を眺めてみて、ご自身の中でターニングポイントだと感じる部分はありますか?

どうだろうなあ。私の中ではアルバム単位で第1期、第2期といった区切りは一応あるのかなって思ってるんですよ。今作で言うと5曲目の「春になったら」までが1stで、「片想い」までが2ndで、みたいな。アルバムを出せばツアーもあるので、そこで新たに見えることがあるんですよね。

──なるほど。アルバムとツアーで見えたものを、次のフェイズに反映させていくと。

そういうところはある気がしますね。アルバムを作り終えると1回気持ちがリセットされるので、次の一手としては新しいことに挑戦しやすいところもあるんですよね。そうやって新しいスタートを繰り返して、その都度生まれ変わりながらここまでやってきたような気がします。ベストに関してもそういう流れを意識しながら聴いてもらうと面白いかもしれないですね。

──楽曲単位で言うと、2012年8月リリースの「ヒカリへ」がその後の活動に大きな影響を与えているような気もしていて。

「ヒカリへ」は月9ドラマの主題歌ということで、これまでmiwaの楽曲に触れたことがなかった方にも聴いていただく機会に恵まれた曲なんですよね。そういう意味ではたくさんの出会いをくれた1曲だなって思います。

──エレクトロテイストの楽曲が幅広く受け入れられたことで、サウンド的にもより自由になっていった印象もあります。

miwa

うんうん。それまでもアルバムではいろんなタイプの曲をやっていたんですけど、シングルでそういったサウンド的な挑戦ができたのは大きかったですよね。「あ、こういうサウンドも受け入れてもらえるんだな」って、リスナーさんたちの懐の深さを感じることができたと言うか(笑)。同時に、miwaというアーティストに対してのイメージが人それぞれだということもわかったので、よりいろんなタイプの楽曲に挑戦してみたくなりました。

──その挑戦は作詞作曲のみならず歌に関しても、ですよね。

そうですね。作る曲の幅が広がってくると、当然ボーカルの幅も一緒に広がっていくことが求められるので、毎回挑戦している気持ちはあります。新しいタイプの曲を作ったなら、それにふさわしい歌を歌わなきゃなと思うので。

──これまでにシンガーとしての表現で悩んだり迷ったりすることもありましたか?

そこまでどっぷりハマって抜け出せなくなる、みたいな感じはないですけど、昔は自分の声があまり好きじゃなかったんですよ。でも今は昔よりは愛せるようにはなったので、より自分の声に対して向き合えるようにはなったかなって。それはいいことだなと思ってます。

──自分の声が好きになるきっかけはあったんですか?

活動していく中で自然と、ですかね。私の声が好きって言ってもらえることが自信になったところもありますし、いろんな人とのコラボを経験することで自分なりの声を見つけられた瞬間もあったりして。自分1人で歌ってるといいも悪いもよくわからなくなったりしますからね。今回のベストにはハジ→さんと歌った「夜空。」という曲が入ってますけど、そういった経験が自分の声を好きにさせてくれたんだと思います。

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──先ほど「ヒカリへ」のお話を伺いましたが、あの曲以降、“光”をテーマにした曲がいくつか生まれていて、2017年10月リリースの「We are the light」につながっていったような印象もあります。“光”は“希望”に言い換えられるとも思うのですが、miwaさんの活動の中でそれが1つの大きなテーマになっているところもあるんじゃないですか?

曲を書いているときはそれほど強く意識しているわけではないんですけど、自分の中にはそういうテーマがずっとあるので、それがときどき直接的に出るんだろうなとは思いますね。この8年の活動の中で歌が持つ可能性、音楽が持つ可能性を実感する瞬間がすごく多かったんですよ。ライブでお客さんを目の前にしたり、私の音楽を聴いてくれる人に触れたりすると、その気持ちはどんどん強くなる。誰が聴いてくれるかわからない状態で音楽を始めた頃とはそこが明らかに違いますよね。

──だからこそ、曲を聴いてくれる人が自分にとっての“光”だし、同時に自分もみんなにとっての“光”でありたいと願うようになった。

そうです。ライブで楽しんでくれるみんな、私の歌を待っててくれるみんなを見ると、音楽ってほんとにすごいなって思いますからね。そういった思いから曲も生まれるんだと思います。その気持ちはこれからも忘れることなく、大事にしていきたいですね。

「Unchained Love」で手に入れた新たな表情

──本作には新曲も収録されています。まずはドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」の挿入歌となっている「Unchained Love」。すごく大人っぽい雰囲気で、今までにない表情が出ていますね。

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ドラマのお話をいただいてから書き下ろしたので、意図的にmiwaっぽくないものをテーマにしたんですよ。作風や歌い方を今までと違うものにして、1回聴いただけじゃ誰が歌っているのかわからないくらいの曲にしたいなって。かなり難しかったですけどね(笑)。

──歌声はすごくシリアスですよね。

「歌いすぎない」みたいなところを意識したんですよ。あまり熱量がありすぎると暑苦しくなっちゃうし、でもクールに歌うとそれはまた違ってくるので、その狭間な感じ。心の中が乱れていても決して取り乱した行動はできない……それが大人の女性なのかなって(笑)。今の自分と同世代、もしくはちょっと上の年齢のお姉さんが部屋で1人で聴いたときに共感できるようにと。

──新たな歌い方を手に入れた実感もあるんじゃないですか?

これはまだレコーディングでしか歌ってないから、その実感はまだないんですよね。新たな歌い方を自分のものにできたって感じるのは、ライブで何度か歌ってからなのかもしれないですね。ライブではどんな雰囲気になるのかな? ムーディな感じになりそうですよね(笑)。