夢で歌ったメロディ

──蓮沼さんと一緒にやることになった経緯についても教えてください。

蓮沼執太フィルのライブを観てめっちゃくちゃいいなと思ってたんです。こんなにバラバラなミュージシャンたちを率いて、すごくドキドキする生なことをやってるのがうらやましくて。仲間に入りたいなあ、でももうボーカルいるしなあ、って思ってた（笑）。

──そうですね（笑）。

そしたら蓮沼くんがある日ダイレクトメッセージで音楽ファイルを送ってきてくれて。

──なんのファイルですか？

その日の朝に夢でこのメロディを私が歌ってるのを見て、起きてすぐにポロポロっとピアノで弾いて送ってくれたんです。本当に不意打ちで。それまでそんなに蓮沼くんとゆっくり話したこともなかったし。ただ一緒にやりたいなと思ってただけだったのに、突然その曲を送ってくれたの。それがとても美しいメロディだったから、ここからアルバムを始めようと思ったんです。

──それがアルバム1曲目の「ドア」という曲ですね。

うん。そういうことがあって、彼に最初に“おまじない”というテーマを投げてみたんです。そしたら「すごくよくわかる」って言ってくれて。彼は「祈りとか願いというものが音楽のテーマになるっていうのはすごく自然なことだし、いいことだと思う」って。そこがスタートですね。これにピンと来てもらえなかったらアルバム全体のプロデュースをお願いしますとは言えなかったと思うので。なんか本当にタイミングがあったというか。ほかのミュージシャンも蓮沼くんや私の周りにいる人たちが集まってくれて、すごくありがたかった。

──ジャケットを観て感じたんですけど、このアルバムに参加してるアーティストは全員いい人っぽいんですよね。

そうなの、全員いい人なんです（笑）。みんなスタジオで出された1杯のコーヒーをすごく大事にしたりするんですよ。なんかそういうのがいいっていうか、そういう村で暮らしていきたいというか。そういう村の音楽隊の歌い手の1人になりたいなって思った。

──皆さんのその人柄が演奏にも表れている気がします。

魔法の音楽を人間の演奏によって作るっていうのが今回の一番の理想だったんですよね。人間がそこで呼吸している、と感じられるような、すごくゆらぎがあるものになって。人間が作る魔法だから完璧じゃないし、粗削りで弱いところもあるんだけど、でもしっかり立って「大丈夫」って笑顔で言い切ってる。その感じがこのアルバムの歌と演奏で生まれたと思います。