ナタリー PowerPush - 蜜

“似てない2人”が奏でる絶妙ハーモニー

蜜のルーツはサム・クック、マイケル、宮本信子

──歌謡曲以外に、2人の音楽的なルーツってどのあたりなんですかね?

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橋詰 僕は元々ゆずが好きで音楽を始めたんですけど、そこからいろいろ聴いたものが、僕のルーツになってると思う。キリンジも好きだし、サム・クックのようなブラックミュージックも大好きですね。

──蜜とは、シンプルに歌の力が前に出るような音楽っていう共通点があるかもしれないですね。

木村 私は、歌だけじゃなくて、身体全部を使って表現するエンタテインメントにも興味があって。例えばマイケル・ジャクソンだったら踊るわ歌うわ、衣装もカッコイイしみたいな、そういうところに憧れる。あとはフラメンコをずっとやっていて、フラメンコの道で生きていこうと思ってた時期もあったんですけど(笑)。それと、習字の先生にもなりたかった時期があったり。

──ずいぶん振り幅ありますねえ(笑)。

橋詰 習字の先生なんて全然動かへんやん(笑)。

木村 (笑)。例えば、ひばりちゃんも日本舞踊を踊るみたいに首を傾げる角度がすごく色っぽかったりするじゃないですか。女優の宮本信子さんも大好きなんですけど、あの人はジャズダンスも日本舞踊もできるし、あと小唄もできるし。そういう感じで、その人自身の面白さやカッコよさが、自然と表現に出てくるものに憧れますね。

──確かにその人の中に備わったものが、歌ってる仕草のちょっとしたところに出てくるのが、表現の奥行きになったりしますからね。木村さんは最近、奥行きを出すためになんかやってたりするんですか?

木村 今は、えーと……フラフープとかやってます。

──えーと、それは体力作りですね(笑)。

橋詰 木村さん、フラフープ習ってるわけじゃないですよね?(笑)

木村 はい(笑)。あとは今、人生の中で一番映画を観てます。あとマンガも積極的に読んでます。

──いろんなストーリーを自分に入れていくって、何かしらの形で影響が出てくるかもしれないですからね。映画にしてもマンガにしても、好きなものの傾向とかあるんですか?

木村 いえ。タイトルと表紙を見て直感で決めちゃいますね。エピソードとか書いてるところはほとんど見ないで。今は、伊丹十三さんの作品を片っ端から観てます。あと、わざとらしいスクールミュージカルものとか。実際にマネしてみたり(笑)。

趣味が似てないからバランスが良い

──2人の趣味の傾向って似てるんですか?

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木村 似てないんじゃないかなあ? 私は常に音楽を聴いてるってことよりも、「Dr.スランプ」全巻揃えたりとか。そういうことに熱中しちゃうというか。なんかオモロいって感じることに向かっていくっていう感じなんですけど。橋詰くんは、音楽でオモロいって感じるところに向かっているのかもしれないですね。

──うまくつなげましたね(笑)。

橋詰 確かに趣味が似てない分、バランスは良いですよね。僕の場合は音楽が好きで、それが仕事になってってという意味では趣味の延長なので。あとはお酒ぐらいしか趣味がなくて……切なくなってきますね(笑)。

木村 だから、ライブのセットリストとかも、橋詰くんが全部考えてきて。それを私が見て、文句を言うだけっていう。

──文句は言うんですね(笑)。

橋詰 で、僕がその文句をなだめて。木村さんは音楽家というよりは演者気質なんだなって思いますね。

ライブは蜜にとってかなりの武器

──蜜にとって、ライブはどんなものですか?

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橋詰 ライブは蜜にとって、かなりの武器になってるなって思ってて。ライブでしか表現できないところが全面的に出るので、面白い部分であったり聴かせる部分であったり、そういうものが伝えられる空間なので。

──ステージに立つと、自分が解放されるような感じがありますか?

木村 ありますあります。怪我しても痛くないですもん。

──ええっ!?

橋詰 かなり踊り狂ってときありますからね(笑)。

木村 足に青アザできてるのに帰ってお風呂入ってから気付いたりしますもん。「普段、眠たそうにしてるのに、ライブだと他人の3倍ぐらい起きてる」って言われたことありましたね。

橋詰 かなりエネルギーを発してるなって、横にいて感じますね。

木村 でも、ライブがあんまり良くなかったときは、全然そんなことないんですけど。

橋詰 いやいや、そんなん言わんでええねん(笑)。

──お互いの歌に対しては意見を言い合ったりするんですか?

木村 思ったことがあったら、わりとちゃんとお互い言いますね。橋詰くんは私に技術的なところをアドバイスしてくれて、私は橋詰くんに対してちゃんと歌詞をイメージして歌ったほうがいいとか、あまり目をつむって歌わないほうがいいとか。気になるポイントが違うのかもしれないですね。

橋詰 お互いにないものを持ってますよね。元々はギターを弾いてくれって言われただけなんですけど(笑)。

──でも、お互いにない魅力を持ち合わせた2人の感性が溶け合っている感じって、なんとなく「蜜」というユニット名にも通じますね。

木村 元々は私の思いつきなんですけどね。「声」とか「歌」っていう言葉に変わる言葉がないかなと思って考えて、出てきたのが「蜜」だったんです。その人個人の匂いとか漂うものとか感性とかが抽出されて出てくるもの。

橋詰 甘く見えるし、かと思えば気持ち悪くも見えるし、ちょうどいいかなって。今は気に入ってますけど、最初はどういうユニットになるかわからなかったから、なんで蜜なのかなって思いましたけど(笑)。

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デビューシングル「初恋かぷせる」 / 2012年6月6日発売 / 1000円(税込) / EMI Music Japan / TOCT-45048 / Amazon.co.jpへ

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CD収録曲
  1. 初恋かぷせる
    ~蜜×西海孝(acoustic guitar)~
  2. HE
    ~蜜×佐野岳彦(harp)×松井泉(percussion)~
  3. 私がオバさんになっても
    ~蜜×小倉博和(electric guitar)×森 俊之(organ)~
レコチョクにて 着うた(R)、着うたフル(R)配信中! EMI Music SHOPへiTunes storeへ

プロフィール写真

(みつ)

木村ウニと橋詰遼の2人からなる男女ユニット。木村はロックバンドのボーカリストとして、橋詰はソロアーティストとして活動していたが、コンテストでの出会いをきっかけにユニットを結成。アコースティックスタイルを基本に、大阪でライブ活動を行う。どこか懐かしさを感じさせるキャッチーなメロディ、美しく伸びやかなツインボーカルの妙、躍動的なパフォーマンスが繰り広げられるライブなどでリスナーを獲得。2011年10月に「いくつかの恋」、2012年3月に「ひとひらの時」というミニアルバムをインディーズレーベルからリリースしたのち、2012年6月に「初恋かぷせる」でEMIミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。7月14日には自主企画イベント「voice dinner」を東京・渋谷7th FLOORで開催する。