ナタリー PowerPush - 蜜
“似てない2人”が奏でる絶妙ハーモニー
シンプルすぎて毛嫌いしてた「初恋かぷせる」
──メジャーデビューシングルのタイトル曲「初恋かぷせる」は今回のリリースにあわせて作られたものなんですか?
木村 実は、さっき話にも出ていた初めて出会ったコンテストで橋詰くんが1人で歌ってた曲が、この「初恋カプセル」なんです。その曲を歌わせてもらいたいなって思って、連絡をしたんです。だから、蜜にとって一番古い曲でもありますね。
──じゃあ、蜜として長く親しんできた曲だと。
木村 それが、橋詰くんにとってはこの曲が自分の青臭い時期のイメージがあったらしくて、あまりライブではやってきてなかったんです。
橋詰 17歳とか18歳ぐらいに作った曲なんですけど、その年頃ってちょっと背伸びしたくなる時期じゃないですか。最初ピアノで作ったんですけど、シンプルに構成されすぎてて、それを毛嫌いしていた時期はありましたね。
木村 なんか、お母さんからもらったシンプルなセーターを、モノが良いってわかってるんだけど、今の自分にはシンプルすぎて着れないみたいなのが、5年後に着られるってことがあるじゃないですか。そういう感じだよね?
橋詰 ……う、うん。そうかもしれない。
──あれ? あんまりノッてないみたいなんですけど?(笑)でもちょっと年を重ねて吹っ切れると、シンプルな魅力に気付いたり、青臭い頃の記憶も客観的に見られるようになったりしますからね。
木村 私にとって「初恋かぷせる」は、想像力を刺激してくれるというか、シンプルだからこそ自分の記憶と重ね合わせたりできる曲だなって思ってて。ライブで歌ったら、聴いている人たち全員が自分の何かしらの記憶と重ねて、パッとイメージが広がるっていうようなの歌を歌いたかったんで。すごく好きですね。
主人公は短大で見かけた女の子
──2曲目の「HE」も同じく、以前からあった曲なんですか?
橋詰 そうですね。作った当初はキャッチーな、爽やかな曲があればいいなと思ってた時期で。イントロをまず思い付いて、そこから派生して作っていって。聴きやすいキャッチーな感じの曲になったと思います。
木村 歌詞を作った当時、私は短大に通ってたんですけど、短大の女の子が楽しそうに男の子としゃべってて。それをイメージして作りました。守ってもらいたい、愛されたいっていう欲が身体中からにじみ出てて、それがいやらしくなく、むしろキラキラして見えたっていう感じ。
──木村さんの中には、歌詞に出てくる女の子のような部分はないんですか?
木村 とってもあると思います(笑)。でも、この曲は自分じゃない子を主人公にしてストーリーを作ってみました。
ラフさを残した「私がオバさんになっても」
──3曲目の「私がオバさんになっても」は、森高千里さんのヒット曲を、ブルース調のアレンジでカバーしているのが新鮮でした。
木村 この曲は、森高さんのこと全然知らないのに、勝手にこういう感じかなってイメージして歌いました。すごくなよなよ歌ってみたり、勇ましく歌ってみたり、いろいろやりつつ最終的にレコーディングした形になったんですけど。
橋詰 元々ライブでもよくカバーしてた曲なんですけど、大体のアレンジを蜜で固めて、そこでキーボードの森(俊之)さんと細かい部分も一緒に作っていって。ギターの小倉(博和)さんにはあとからダビングしてもらいました。
──小倉さんのギターも素晴らしいですよね。
木村 小倉さんの笑い声が途中で入ってるんですけど、思わず出ちゃった笑いをそのまま使ったんです(笑)。
──ダビングでも、ひとつの部屋の中ですごく楽しそうに演奏してるような雰囲気がありますよね。
橋詰 そう、このアレンジでは、そういうラフさは残したかったんですよね。
2人の共通項は“歌謡曲好き”
──今回のシングルでカバーしてる「私がオバさんになっても」以外にも、蜜として過去に岩崎宏美さんの「あざやかな場面」などの歌謡曲をカバーしていますよね。
橋詰 基本的には僕から提案して、あとは一緒に制作しているスタッフのアイデアも聞いて。歌謡曲はかなり好きですね。
木村 私も歌謡曲好きです。
橋詰 (山口)百恵ちゃんとか(美空)ひばりちゃんとか、よく聴いてるよな。
木村 ひばりちゃんは、最初はCDを聴いてたんですけど、DVDでコンサート映像の歌を聴いてからそっちを繰り返し聴くようになりましたね。やっぱり全然違うから。
橋詰 岩崎宏美さんの曲に関しても、もちろん世代は違うんですけど、普遍的なものを感じて、スッと耳に入ってくるんですよね。それを今、僕らが歌ったら面白いんじゃないかと思って。
CD収録曲
- 初恋かぷせる
~蜜×西海孝(acoustic guitar)~ - HE
~蜜×佐野岳彦(harp)×松井泉(percussion)~ - 私がオバさんになっても
~蜜×小倉博和(electric guitar)×森 俊之(organ)~
蜜(みつ)
木村ウニと橋詰遼の2人からなる男女ユニット。木村はロックバンドのボーカリストとして、橋詰はソロアーティストとして活動していたが、コンテストでの出会いをきっかけにユニットを結成。アコースティックスタイルを基本に、大阪でライブ活動を行う。どこか懐かしさを感じさせるキャッチーなメロディ、美しく伸びやかなツインボーカルの妙、躍動的なパフォーマンスが繰り広げられるライブなどでリスナーを獲得。2011年10月に「いくつかの恋」、2012年3月に「ひとひらの時」というミニアルバムをインディーズレーベルからリリースしたのち、2012年6月に「初恋かぷせる」でEMIミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。7月14日には自主企画イベント「voice dinner」を東京・渋谷7th FLOORで開催する。