トライアンドエラー

──楽曲制作やレコーディングはどのように進んだんですか？

Miss Monday　今回はSHOCKくんが実験的なことをやってくれて良かった。コラボをするとき私は、アーティストさんには遊んでほしいんですよね。だから「こういうのもやってみたんだけどどう？」って、私の引き出しにないモノをたくさん出してくれるのはうれしいんですよ。SHOCKくんはそういうのすごく多かったし、アイデアマンだと思ったな。

SHOCK EYE　トライアンドエラー、これが今年のテーマなんです。いろんな思いつきがポンポン頭ん中に浮かぶんですけど、それを自分でつかまえに行かないと消えてしまうんですよ。だから思い浮かんだことは全部相手に伝える。自分の中で勝手に解決する前に、良いも悪いもまず誰かに判断してもらおうみたいな。それに今回は自分がハンドル握らなくていいっていう無責任な気持ちもあったしね。

Miss Monday　ははははは（笑）。

SHOCK EYE　ハンドルは彼女にまかせて、とりあえず放りまくってみんなの反応伺おうと思って。で、そしたら結構みんなからもリアクションが返ってきたし、それをまた僕も引き取ってそれぞれに投げ返せたし。

Miss Monday　確かに、そういう言葉のキャッチボールや音を出しながらのやり取りが、すごく良い積み重ねになったね。相乗効果で「もっといいものを作ろう！」みたいな空気が生まれてたし。SHOCKくんがいろんな球を投げてくれたおかげで、みんなからいろんな意見が出て、私もそれに対して「これはダメだね」「これはいいね」みたいなことが言えたんだと思う。

SHOCK EYE　何か意見出したときに、ちょっと反応わりぃって思ったら「あっ、今のウソ」ってすぐ引っ込めて（笑）。

Miss Monday　あははは（笑）。

SHOCK EYE　でも、キヨサクは唯一マイペースだったね。曲のテーマをどう表現するか3人で話しあってるときも、ただ黙って「うんうん」って頷いてた（笑）。

Miss Monday　たまにパソコン立ち上げてカタカタカタッてやったりとかね。

SHOCK EYE　たぶんキヨサクは「まとめ役」っていう自分の役回りを一番わかってて、みんなのやり取りを全部把握した上で自分が何をすればいいかっていうのにちゃんと向き合ってたんだと思う。

Miss Monday　そうだね。SHOCKくんもあらかじめ歌詞を書いてきてくれたし、Salyuちゃんも本番前にプリプロを1回やってもらってたし、みんながそれで用意してきたものもありつつ、さらにその場で「じゃあこのパートをちょっと作ってみようか」って生まれたのがキヨサクくんの最後のパート。その場のやり取りから生まれたものが形になってるので、すごく建設的で充実したレコーディングだったなと思います。

アンラッキーな劣等生

──歌詞の内容はどのように決めたんですか？

SHOCK EYE　Miss Mondayから僕には一番最初のところを歌ってほしいってオーダーがあったんですが、曲の要は最初のパートで決まるから、どんな方向性でいくか決める前に4人で集まって話さないといかんなと思って。Miss Mondayが持ってきたバース16小節の歌詞を読んでみんなでそれぞれイメージを膨らませて、まず「雨」っていうキーワードが入ったサビができあがったんです。そのとき、普段僕がひとりで書いてるときによく使う手法みたいなのがあるんですけど、それをぜひやってほしいって言われて。優柔不断だからいろんなアプローチを考えて迷ってたんですけど、なんかレール敷いてもらった感じでした。

Miss Monday　昔からSHOCKくんの歌詞の情景描写がすごく好きなんですよ。「Life is Beautiful」は「人生は美しい」って意味ですけど、その裏にある痛みや苦悩の部分を描きたいなと思ったんです。SHOCKくんならではの匂い立つぐらいリアルな言葉で男の子の感情を描いてもらえればって。私はこの曲の「俺はアンラッキーな劣等生だと」っていう歌詞が好きで。これを歌詞にしてさらけ出すのは本人にとって勇気がいることだと思うんですけど。

SHOCK EYE　ああ、俺、よく思うんですよね。アンラッキーな劣等生って（笑）。俺は実際に「あいつはいろんなことで評価されてるのに、なんで俺は評価されないんだろうか」ってマイナス思考に陥ることがあるんです。でも、もしかしたらそれは自分の努力不足が原因かもしれない。それをちゃんと受け止めて反省すれば前向きになれるんです。

Miss Monday　そうやって気持ちをさらけ出してくれるからこそすごく響くんですよね。湘南乃風にたくさんファンがいらっしゃるのも、やっぱりそういうところが魅力なのかなぁ、って思います。

SHOCK EYE　あまり意識はしてないんだけど、例えば小説ってカギかっこで囲まれた会話文と普通の文がありますよね。歌も同じで、カギかっこの比率が多いとあんまり掴みどころのない詩的な表現になる。俺はどっちかっていうとカギかっこ的な歌詞が好きなんですよ。もちろん勇気づけるような言葉っていうのは必要なんだけど、あんまりストレート過ぎる表現よりも勝手に感じとって共感してもらいたい。特に今回の曲は2番で強くメッセージ性を出しているので、俺が同じことをしたら繰り返しになってしつこいし、2番の美味しいところを先に奪ってしまうなと思って（笑）。

価値感がひっくり返る

──なるほど、そういうことを考えながらそれぞれ歌詞を書くんですね。ちなみに「雨」をキーワードにした理由は？

Miss Monday　人生の苦悩とか痛みを「雨」っていう言葉で表現したつもりなんです。

SHOCK EYE　そのキーワードに絡めて言えば、俺は「晴耕雨読」って言葉が好きなんです。これは「晴れの日は畑を耕して雨の日は本を読む」っていう意味で、本来は悠々自適な生活のことを指してるんですけど、俺は「晴れていれば晴れであることを楽しむ、雨が降っていれば雨であることを楽しむ」って解釈してて。同じシチュエーションでも捉え方で気持ちは変わるんもんですよ。

Miss Monday　SHOCKくんの言うように、「雨」と表現した悲しさや苦悩、痛みを「充実してるじゃん」「がんばれてるじゃん」って変換できれば、辛い気持ちが楽になれると思ったんです。目の前に大きな壁を感じたときに「これ乗り越えたら、またひとつ成長できるんだ」って感じられれば、生きてること自体をもっとエンジョイできるはずって。

SHOCK EYE　結構落ち込みやすいほう？

Miss Monday　悪いほうに考えがちだからね（笑）。「成長痛は自分が大きくなれるための痛みなんだ」って、自分もそんな考え方ができたらいいなと思ってこの題材を選びました。

SHOCK EYE　それについては4人で集まってしっかり話しあって良かったよね。それぞれのセッションをただくっつけただけのフィーチャリングって多いんだけど、同じ言葉を使ってても人によってちょっとニュアンス違っちゃうと全然筋が通らなくなるんですよ。それをちゃんと最初に確認できたっていうのがね。作業自体もすごくスムーズにできたし。

──レコーディングの時期、ちょうどSHOCK EYEさんはお子さんが生まれた直後ですよね。やっぱり影響はありましたか？

SHOCK EYE　そりゃあ、ありましたよ！ まさに「Life is beutiful」だったんですよ！

Miss Monday　そうだね（笑）。

SHOCK EYE　最近まで、奥さんと遊園地とか行ってもつまんなかったんですよ。10年もつき合ってたし別にもう行くとこもないの。でも今は奥さんとの会話の中で、付き合ったばっかのときによく行ってたデートコースの話とか出てくるんです。「今度子供を連れてピクニックに行けるね！」なんて言って。自分がもう興味を失ってたモノクロな景色が、一気にカラフルな見え方に変わったわけですよ。なんかそういうきっかけで価値感がフッとひっくり返ってしまうことってあるんです。だから現状がどうであれ、そんなに悲観することでもないっていうことを教えてもらいましたね。で、これが「Life is beautiful」のテーマにぴったりだなって思って。

Miss Monday　激動の瞬間だったんだよねー。

SHOCK EYE　これが全然違うテーマの曲だったら逆に大変だったなー。現代社会を斬るような曲とか（笑）。それならそれで、子供手当てについてとか物申すかもしれないけど（笑）。

Miss Monday　あはははは！（笑）