「現実見ろ」って言ってくるヤツはもう古い
──バーチャルYouTuberとYouTuberの違いはどういうところにあるんでしょうか?
僕はミソシタ、バーチャルYouTuberだ。一言で言うと、YouTuberってリア充色が強いヤツが多い。対して、バーチャルYouTuberっていうのは2Dオタクコミュニティのものだと思ってる。だから関係ないヤツには全然響かないカルチャーかもな。でも僕はこれで救われたんだ。そこのあんたもバーチャルに来いよ。
──なぜミソシタさんはバーチャルの世界で活動をしているのですか?
現実(リアル)をうまく生きられないからね。だから現実を生きるのが苦手なヤツらもバーチャルに来るべきだ。バーチャルに逃避し、そこから抵抗する。まさに最新の表現形態だよ。「現実見ろ」って言ってくるヤツはもう古いよな。これからはバーチャルも見ないと置いてかれるぜ。
──ミソシタさんの投稿動画の中には「ミソシタ相談室」というコーナーがあります。なぜ現実世界の人の相談を受けているんでしょうか?
パッケージのコンテンツが売れないから、体験やコミュニティケーションを売る方向に音楽業界がシフトしてきてる中で、ミソシタは昔ながらの人生相談で“スケベ”を稼ぎたいんだよ。リアルでも人生相談される奴って絶対スケベな思いしてるでしょ。ミソシタもスケベを期待してるんだ。つまりギャルからの相談を待ってる。
──常に暗い、アンダーグラウンドな雰囲気を醸し出している動画のシチュエーションにはどういう狙いがあるんでしょうか?
そりゃーミソシタは闇の中で活動してんだから当然、動画の背景もダークなものになるよ。逆にお前らがミソシタを明るいところに連れてってくれないか。動物園とか市民プールとか、ショッピングモールとか。ミソシタは全裸だけどいいかな?
大体が下ネタだ。でもミソシタはそこで終わらない
──曲作りはどうやっていますか? 歌詞はすべてミソシタさんが書いているんでしょうか?
もちろん自分で書くよ。曲作りはまず、深夜の公園に全裸で繰り出す。当然バーチャルだから全裸ウォークはOK。リアルとバーチャルを履き違えるなよ。リアルで全裸歩きは即、逮捕だからな。公園に着いたらシーソーに独りまたがり、上がったり、下がったりするわけ。そこでビートを感じながら言葉をゆっくり紡いでみる。大体が下ネタだ。でもミソシタはそこで終わらない。下ネタと世界を接続してみる。そうやって曲のパーツになるアイデアをいくつか作っていく。そしたらそのまま個室ビデオに繰り出すわけだ。そこからは、いわゆるスタジオワークだよ。とにかくトライ&エラーで1曲を仕上げていくんだ。
──「俺は俺の中の弱さ 知ってるぜとっくに その上で全裸」や「バーチャルモデルなら 喋るの平気 中身おっさんが ここでの正義」など、歌詞で描かれているのは“こじらせた自意識“と呼べるものが多いと感じます。自意識を美化することなくポエムに落とし込むことの狙いや意味は?
ポエムコアの三大要素に「ナイフのような自意識」がある。自意識を極限まで尖らせるんだ。冷笑やメタ視点で誤魔化さず、極限まではき違え続けるんだ。そうすることで天使になれる。これがポエムコアだ。
──「天使になれる」とはどういうことですか?
極限まではき違えることで、世間の基準とは違う、自分なりの強固な基準ができる。そうなることで自然と世間から浮いちまってるように見える状態。でもしっかりと地に足は着いてるんだよ。
──world’s end girlfriendやarai tasukuとコラボしていますが、その経緯を教えてください。
あれは、6年前、僕が砂漠で野垂れ死にそうなときに、ホースで水を撒き散らしながらラクダに乗った道化師がたまたま通ったんだ。それがWEGだった。おかげで僕は生き返り、絶対一緒に曲を作ろうって約束したんだ。arai tasukuは部屋の壁から急に現れたんだよ。「ヌゥー」って口で言いながら。それでそのまま朝までセッションして曲作ったんだ。
──コラボ曲以外のトラックはご自身で手がけているんですか?
自分でやってるよ。個室ビデオにこもって作成するってとこまでは説明したよね。その工程を詳しく説明するよ。まず6枚のディスクをチョイスするんだ。いわゆるAVもしくは着エロなどのDVDを6枚選ぶってことだね。曲作りには直接関係ないように思えるけど、曲作りの休憩中に何を観るかってことがすごく重要なんだよ。さらにフロントでTENGAを購入し、パソコン接続のVRの部屋をチョイスする。僕はバーチャルYouTuber、当然VRAVは必須だよね。とにかく15分猛烈に集中して作曲作業、その後15分でスケベAV鑑賞、このサイクルで作成していくんだ。
「これは目一杯ふざけていい案件だ」
──メジャーデビューが決まったときの心境を教えてください。
公園で寝ていたミソシタの糸電話が強くしなった。電話の主は「P」とだけ名乗り、「あんたと直接話がしたい、倉庫街に来い」そう告げてきた。でも面倒くさくてそのまま寝ていたら、屈強な眼鏡の大人たちに叩き起こされて「メジャーからCD出さねーか」そう言われたんだ。僕はその人たちの目を見て瞬時に悟った、「これは目一杯ふざけていい案件だ」。
──どんなアルバムにしようと思って制作したのでしょうか?
ミソシタしか作れないアルバムを作ろうと思ったよ。だってそうでしょ、全裸でバーチャルがありきたりのものを作ってもしょうがないじゃない。でも結婚式で流してほしいなって思って制作してたよ。全編ミソシタの音楽がかかる結婚式とか最高にめでたいよね。新婦がお色直しでミソシタのコスプレなんかしたりしてね。
──アルバムには100本の未公開動画が収録されるとのことですが、その創作の源泉的なものはどこにあるんでしょうか?
一流のクリエイターは1本の動画で黙らす。僕は自分が三流だって知っているから100本作る。真剣な悪ふざけがしたいだけなんだよ。
──ミソシタさんがポエムコアを通じて伝えたいこと、広めたいことは?
夜繁華街を歩いてると、悪絡みしてくるヤバいジジイが目に入る。こういったジジイに限って善良な市民に絡んでくるが、同タイプのヤバい奴同士で揉めたらどうなるのだろうか? こういった、一般的にはどうでもいい取り留めのない片隅の思考を真剣に表現していきたいね。
──メジャーデビュー後に目指すこと、実現してみたいことは?
メジャーデビューとは言ってみたものの、とにかく僕は現在も工場勤務なんだ。なんとか工場を辞めてバーチャルYouTuberだけで食べていきたいよ。昔いろいろあって借金がかさんでいるから、あとは借金返済かな。バーチャルと言っても世知辛いよな。
- ミソシタ「ミソシタ」
- 2018年8月17日発売 / ポニーキャニオン
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[CD+DVD]
1944円 / PCCG-01709
- CD収録曲
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- ミッドナイト・ファイティングブリーフ
- ヘンリー・ダーガー
- 地下二階のレジスタンス feat. world's end girlfriend
- Dive Deep
- Life is Dark feat. world's end girlfriend
- 我闇ナリ feat. arai tasuku
- エロ本WALK
- Video Box Underground
- アタラシイヘブン
- 革命前夜
- DVD収録内容
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- 特典映像:新作未公開動画100本
- イベント情報
ミソシタ「ミソパーティー ~地下二階のレジスタンス~」 -
- 2018年10月7日(日)東京都 WWW
- ミソシタ
- 2018年3月に活動を開始したバーチャルYouTuber。ポエムコアと呼ばれるジャンルの作品を中心に22本(2018年8月時点)の動画を投稿している。2018年8月にアルバム「ミソシタ」をリリースし、バーチャルYouTuberとして初めてメジャーデビューを果たした。同年10月には東京・WWWにて初の単独ライブ「ミソパーティー~地下二階のレジスタンス~」を開催する。