MISIA|多様な出会いの集大成

堂本剛から送られてきた曲

──堂本剛さんの作詞・作曲による「あなたとアナタ」では、剛さん自身も歌っています。剛さんとはどんな交流があったんですか?

レーベルメイトのTIGERが彼のライブでコーラスをやっていて。私もライブを観せてもらったんですが、ファンクに振り切っていてすごく面白いなと。その後、私のラジオ(NHK FM「星空のラジオ」)で剛さんと一緒にスタジオライブをやって、その感じもすごくよかったんです。そのときに「いつか一緒に曲を作れたらいいですね」と話していたんですが、しばらく経ってから「この曲、MISIAさんにどうですか?」と曲を送ってくれたんですよ。剛さんがメロディを歌っていて、その時点で完成されていたから、「私が歌っていいのかな」と思ったんだけど、黒田くんにアレンジしてもらったら“SOUL JAZZ”のスタイルになって。ただ、私の声だけでは物足りなかったので、剛さんにも歌っていただいたんです。彼もライブ中で忙しかったんですけど、時間を作ってくれて。

──そして「愛はナイフ」は、オーセンティックなバラードナンバーです。曲名もそうですが、及川眠子さんの歌詞が強烈だなと。

デモの段階から「愛の歌が似合うだろうな」と思っていたんですが、こういう言葉を乗せてもらえるとは想像してなかったです。「最後に見せた涙は あなたの愛を揺さぶり いつまでも忘れさせないため」という歌詞は私からは出てこないし、人の言葉を歌うのは楽しいなと改めて感じました。愛のナイフを心の奥に突き刺して、相手の記憶に残したいという歌なんですけど、実は自分のほうが心をえぐられているんですよね。眠子さんとのやり取りもすごかったんです。歌詞をお願いした次の日に送られてきて、「この箇所をこうしてほしい」ということにもすぐに対応してくれて。「MISIAが歌う曲として、できるだけいいものにしたい」という気持ちが伝わってきたし、ありがたかったですね。

──“SOUL JAZZ”をさらに追求した充実のベストだと思います。MISIAさんにとって、このプロジェクトはどんな意味を持っているんですか?

生のバンドで「今の音」を追求できる場であり、自分とは違う土俵のミュージシャンとコラボレーションできる場であり、刺激をもらえる場であり、インスピレーションを与えてくれる場です。そこで感じたドキドキワクワクを皆さんにも届けられたらいいなって。今回のベストアルバムは「今のベスト」が詰め込まれたアルバムです。「これまで」と「これから」を楽しんでもらいたいです。1つの集大成というか、これまでの出会いも含めて、かなり濃厚な作品になったと思いますね。

MISIA

紅白歌合戦でのパフォーマンスの真意

──大阪城ホールと横浜アリーナで行われる「MISIA SOUL JAZZ BIG BAND ORCHESTRA SWEET & TENDER」も楽しみです。

最初にも言いましたが、もともとは「ビッグバンドのライブをアリーナでやる」というところから始まってますからね。ホーンは大きい会場にすごく合うので、アリーナ公演では本領発揮になるんじゃないかなって。今回のベストアルバムを中心に、SOUL JAZZ BIG BANDな音楽をお届けしたいと思ってます。

──年末の音楽特番「テレビ朝日開局60周年記念 ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2019」でも、SOUL JAZZスタイルのパフォーマンスを披露されました。

ニューヨークのApollo Theaterからお届けしたのですが、レコーディングに関わってくれたミュージシャンやSing Harlem Choirも一緒で、タイミングよく、みんなのスケジュールが合ったのはうれしかったし、観てくださった方も楽しんでくれたみたいでよかったです。なんて言うか、いろんな音楽を知っているから開けるドアがあると思うんですよね。リスナーの皆さんにもぜひ、いろんな音楽に触れてもらって、どんどんドアを開いてほしいなって。

──「NHK紅白歌合戦」のレインボーフラッグを掲げたパフォーマンスも話題になりました。

ハウスミュージックも、MISIAの音楽の1つ。そしてハウスミュージックが生まれたカルチャーと、その音楽性は、レインボーフラッグに込められた思いへのリスペクトなしでは表現できません。あのステージで行ったことは、デビューから20年ずっとやってきたこと。一緒に出演していたDJ EMMAさんやドラァグクイーンのメンバーなど、20年以上のお付き合いの方々もたくさんいました。今回、初めて一緒にステージに上がったメンバーを紹介してくださった方とも、やっぱり20年以上の長いお付き合いですし。同性婚が法律でも認められた台北からDJ Noodlesも来てくれて。これまで一緒に音楽、ライブを作ってきた皆さんとの愛の願いを込めたステージであり、思いの結晶のようなステージでした。紅組のトリで、あの愛のメッセージを伝えさせていただいたことにも、出演者の方がフラッグを振ってくださったことにも、感謝の気持ちでいっぱいです。フラッグの意味をお伝えしたうえで、フラッグを持っていただいているという話をNHKのスタッフさんから聞いたときは、胸が熱くなりました。

もっと多様な世界が開けたら

──ベストアルバム「MISIA SOUL JAZZ BEST 2020」で始まる2020年は、どんな展開になりそうですか?

“ミュージック・イズ・ミュージック”“ラブ・イズ・ラブ”と言いますか、ジャンルを取っ払ったところに行きたいですね。初めてのことにも挑戦したいです。いろんな人、いろんな音楽に出会うことで、自分が見えてくることもあると思うんですよ。旅と一緒というか、ずっと日本にいる人の「日本が好き」という言葉と、世界中を旅した人の「日本が好き」では言葉の背景にある経験が違いますよね。

──まだまだ知らない自分がいるし、可能性もあるはずだと?

あまり難しく考えてはいなくて、とにかく楽しいほう、ワクワクするほうに進んでいきたいんです。そうすることで「こっちもアリなんだな」と気付けるというか。そうやっていろんな人とつながりながら、“ビッグ2020”を目指したいですね(笑)。オリンピックも開催されるし、もっと多様な世界が開けるといいなという気持ちもあります。私たち自身もね。

ツアー情報

MISIA SOUL JAZZ BIG BAND ORCHESTRA SWEET & TENDER
  • 2020年1月25日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2020年1月26日(日)大阪府 大阪城ホール
  • 2020年2月1日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2020年2月2日(日)神奈川県 横浜アリーナ