「歌手とはなんぞや?」と自問自答してきた
──「Life is going on and on」というタイトルは、現在行われているツアーの題名と同じですね。
はい。ツアーのタイトルを決めたのは総合プロデューサーなんですけど、実はその由来について詳しくは聞いてなくて。最初はアルバムのタイトルは別に考えていたんですよ。いろいろと候補があって、「これでいく!」と決めたあとにひっくり返すということを続けていたんですが(笑)、あるときから「Life is going on and on」ってアルバムタイトルにもすごくいいなと思えてきて。ライブで歌っていて20年前と今とで何が違うかといえば、「そこに20年の人生がある」ということを感じられることなんです。聴いてくださってる方もきっと同じじゃないかな。人生の中に音楽があり、音楽の中に人生があるというか、デビューした頃はリスナーやお客さんに共感を求めていたけど、今は共に生きているような感覚があって。そういう思いが「Life is going on and on」というタイトルにつながっているし、私が伝えたいメッセージにも一番合うと思ったんです。
──音楽と人生が共にある、と。
そうですね。だから私にとっては、「Music is going on and on」でもあるんです。私はたぶん引退しないし、一生歌い続けていくと思っているので。あとね、「やっと歌手になれた」と思えるようになったんですよ。ずっと「歌手とはなんぞや?」と自問自答してきたんですけど、20年経ってやっとその答えがわかった気がしていて。このことは「THE SUPER TOUR OF MISIA」のステージでも話したんです。「皆さんがいたから私は歌手になれた。みんなに歌手にしてもらえた」って。
──デビューしてから時間をかけて、オーディエンスとのつながりの中で「歌手になれた」と実感できた?
はい。私がデビューした1990年代後半は、歌手に特化したミュージシャンは少なくて、自分で曲も作る方が主流だったと思うんです。シンガーソングライターが次々に出てきた時期だし、歌手が作り手として自分のメッセージを伝えながら活動する流れもあって。私自身も「作る」ということを意識していたし、歌手という感じではなかったんですよね。でも、やっぱり歌が大好きだし、歌うことが自分の軸になっていると少しずつわかってきたんです。
今、ニュージャックスウィングをやったらどうなるか?
──ここからはアルバムの楽曲について詳しく聞かせてください。まず1曲目の「アイノカタチ(feat.HIDE GReeeeN)」はドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌として注目を集め、大きなヒットを記録している楽曲です。
ライブで歌うと歓声が沸くし、いろんな年齢層の方に聴いてもらえている実感があります。私と同世代の方も知ってくれているし、友達の子供もおじいちゃん世代の方も歌っていて(笑)。世代の壁を超えて口ずさんでもらえているのはうれしいですね。なかなか出会わないミュージシャン同士で作った曲だから、楽曲の幅が広がったことも大きいかもしれません。
──MISIAさんとGReeeeNのプロデューサーのHIDEさんの組み合わせは、確かに新鮮でした。
そうですよね。歌詞の世界観は自分と決して遠くないというイメージは持っていたんですが、音楽のジャンルやビートの刻み方はかなり違うので「歌うのは難しいだろうな」と思っていたんです。でも、実際に制作の作業に入ったらすごく面白かったんですよ。HIDEさんはとにかくアイデアも多いし仕事が早い方で、こちらが投げたアイデアに対してもすぐにレスポンスを返してくれて。メロディを決めたあとに、ドラマから受け取ったメッセージをもとに話し合う場を設けてもらって、その後それぞれリリックを書いたんです。それを照らし合わせてみたら、意外と似ている箇所もあったし、とにかくHIDEさんの歌い出しの歌詞が素晴らしかったんですよね。「愛に もし カタチがあって」というフレーズが決まった時点で、「できた!」と思えたというか。アレンジには亀田誠治さんにも参加していただいて。亀田さんとは以前「ap bank fes」でご一緒したことがあったんですが、楽曲を一緒に制作するのは初めてでした。
──初顔合わせが多い楽曲だったと。アルバムは「アイノカタチ(feat.HIDE GReeeeN)」「君のそばにいるよ」で始まり、そのあとの「Interlude」と「Sparks!!」で雰囲気が大きく変わりますね。
「Sparks!!」は「今、ニュージャックスウィングをやったらどうなるか?」というテーマで制作した楽曲なんです。サウンドメーカーのSAKOSHINさんはニュージャックスウィングの時代の音楽の影響を強く受けている方だし、一緒に面白い曲ができるかもしれないと思って。実際、すごくいい曲になったので「THE SUPER TOUR OF MISIA」で歌おうと思って制作を進めていたんですよ。歌詞の中にライブのサブタイトルになっている「Girls just wanna have fun」というフレーズが入っているのもその流れです。でも、ライブが3時間くらいになることがわかって、泣く泣くセットリストに入れなかったんです。実はアルバムに入れるかどうかも迷っていたんですが、この曲次第で作品の濃さが変わってくるなと思って、やっぱり入れることにしました。ただ、アルバム全体の中でだいぶ異色な曲だから、その前に「Interlude」を作って「Sparks!!」につなげることにしたんです。
──インパクトが強い曲ですからね、本当に。
そうなんですよ(笑)。でも、SAKOSHINサウンドも私の音楽の中にある大きな要素なんですよね。根底にあるのはソウルなんですけど、いろんなタイプの楽曲を歌ってきて。そういう多種多様なミュージックスタイルも、20年間変わらないところですね。
──ニュージャックスウィングも聴いていたんですか?
私がリアルタイムで聴いていたのは、ニュージャックスウィングをR&B、ヒップホップのアーティストが取り入れるにようなった1990年代前半ですね。TLCとか、ジャネット・ジャクソンとか。「Sparks!!」のサウンドはもっと前、80年代後半あたりのニュージャックスウィングをイメージしていて。私のメロディは90年代っぽいけど、アレンジを含めて結果的に2018年のニュージャックスウィングになったと思います。歌詞はちょっと難しかったですね。ニュージャックスウィングって、“あまり真面目にやりすぎない”みたいなイメージもあるじゃないですか(笑)。だから歌詞にも遊びを入れたかったんですが、私はそういうのは得意じゃないから、キヨシさんに手伝ってもらって言葉遊びみたいな要素を入れました。
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音楽は “going on and on”であるべきもの
- MISIA「Life is going on and on」
- 2018年12月26日発売 / アリオラジャパン
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初回限定盤
[CD+フォトブック]
4536円 / BVCL-945~6 -
通常盤 [CD]
3240円 / BVCL-947
- 収録曲
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- アイノカタチ(feat.HIDE GReeeeN)
- 君のそばにいるよ
- Interlude
- Sparks!!
- 来るぞスリリング(Album Version)
- LADY FUNKY
- 恋人失格(feat.米倉利紀)
- 変わりゆく この街で
- LOVED
- SERENDIPITY
- AMAZING LIFE
- SUPER RAINBOW
ライブ情報
- 20th Anniversary MISIA 星空のライヴXLife is going on and on(※終了分は割愛)
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- 2019年1月12日(土) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年1月13日(日) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年1月19日(土) 宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年1月20日(日) 山形県 シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
- 2019年2月11日(月・祝) 千葉県 千葉県文化会館
- 2019年2月14日(木) 北海道 旭川市民文化会館 大ホール
- 2019年2月16日(土) 北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2019年2月20日(水) 東京都 NHKホール
- 2019年3月1日(金) 高知県 県民文化ホール オレンジホール
- 2019年3月3日(日) 徳島県 鳴門市文化会館
- 2019年3月8日(金) 石川県 本多の森ホール
- 2019年3月9日(土) 長野県 まつもと市民芸術館 主ホール
- 2019年3月22日(金) 福岡県 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
- 2019年3月23日(土) 福岡県 福岡サンパレス
- MISIA 平成武道館 LIFE IS GOING ON AND ON
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- 2019年4月26日(金) 東京都 日本武道館
- 2019年4月27日(土) 東京都 日本武道館
- MISIA(ミーシャ)
- 長崎県生まれの女性シンガー。1998年2月にシングル「つつみ込むように…」でデビューした。同年6月に発表した1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は200万枚以上を売り上げ、R&Bブームの火付け役となる。2000年発表のシングル「Everything」はドラマ主題歌に使用され、200万枚を超えるセールスを達成した。2013年2月にはデビュー15周年記念ベストアルバム「MISIA SUPER BEST RECORDS -15th Celebration-」、2017年7月にはジャズアルバム「MISIA SOUL JAZZ SESSION」を発売。同年11月に映画「鋼の錬金術師」の主題歌であるニューシングル「君のそばにいるよ」、ライブBlu-ray / DVD「MISIA SOUL JAZZ SESSION」を同時リリースした。2018年6月からは全国ホールツアー「20th Anniversary MISIA 星空のライヴ X Life is going on and on」を行っており、8月に表題曲がテレビドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌に使用されたシングル「アイノカタチ(feat.HIDE GReeeeN)」、10月にデビュー20周年記念ライブの模様を収めたBlu-ray / DVD「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」を発表。同年12月に約3年ぶりのオリジナルアルバム「Life is going on and on」をリリースし、2019年4月には東京・日本武道館で2DAYSワンマンライブを行う。