今年デビュー20周年を迎えたMISIAが10月31日にライブBlu-ray / DVD「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」をリリースする。今作には4月に大阪・大阪城ホール、神奈川・横浜アリーナで開催された20周年記念ライブより4月28日の横浜アリーナでのファイナル公演の模様をほぼノーカットで収録。R&B、ソウル、ヒップホップ、ジャズ、J-POPなどが融合した多彩な音楽性、国内外のミュージシャンやダンサー総勢約50名を迎えたステージ、そして卓越した技術と奥深い表現力を併せ持ったボーカルを堪能できるこのライブ映像は、MISIAの20周年のアニバーサリーを華やかに飾ると同時に、常に変化と進化を繰り返してきた彼女の現在地を示す作品に仕上がっている。「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」はデビューからの20年を振り返ることができるだけではなく、“2018年のMISIA”をリアルに体感できる映像作品なのだ。
音楽ナタリーではMISIAの20年間の歩みを総括しながら、本作の見どころを紹介。さらに8月にリリースされ、表題曲がテレビドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌として注目を集めた最新シングル「アイノカタチ feat. HIDE(GReeeeN)」がロングヒットを続けている理由を紐解く。
文 / 森朋之
1998年のデビュー以来、海外のR&B、ソウル、ヒップホップを取り入れた楽曲、圧倒的なボーカル力によって、ジャパニーズR&Bを牽引してきたMISIAは、ライブにおいても革新的なトライアルを続けてきた。それを象徴するのが「THE TOUR OF MISIA」とタイトルされたライブシリーズ。DJ、バンドを交えて構築されたサウンド、ダンサー、ドラァグクイーンと共に繰り広げられるステージは、アンダーグラウンドなカルチャーをオーバーグラウンドへと結びつける画期的なものであり続けた。そして20周年を目前にしてMISIAは既存のフォーマットにとどまることなく、ライブのスタイルを大きく変化させた。従来の“アンダーグラウンドのカルチャーをメジャーに”というコンセプトを外し、自由な発想とアイデアに貫かれた演出、幅広い音楽性を取り込んだエンタテインメントを目指す──その最初の到達点こそが20周年を記念したライブ「THE SUPER TOUR OF MISIA」なのだと思う。
アリーナの中央にデビュー当時のMISIAのビジュアルが描かれた大きな幕が切って落とされると、タワー型のステージが現れる。その頂上にいるのは、もちろんMISIA。強烈なハイトーンシャウトと共に最初のナンバー「INTO THE LIGHT」が始まった瞬間、観客の熱気は一気に上がっていく。さらに彼女はEDM、R&B、ロックなど融合させた「君のそばにいるよ」(映画「鋼の錬金術師」主題歌)でダンサーを率いて迫力あるパフォーマンスを見せつけ、1998年発表の2ndシングル曲「陽のあたる場所」ではファンキーなバンドグルーヴで観客を気持ちよく踊らせる。新旧の楽曲が行き来する豪華なステージは、20周年のアニバーサリーにふさわしいクオリティをしっかりと実現している。ターンテーブルを模した舞台美術、臨場感に満ちた映像も素晴らしい。
「来るぞスリリング」のパフォーマンスからも、さらにアップデートされたMISIAの姿が伝わってきた。世界的なトランぺッターである黒田卓也を中心にしたバンドがジャズ、R&B、アフロビートなどを融合させたサウンドを体現。その中でMISIAはしなやかでソウルフルなボーカルを響かせる。昨年7月に発表されたMISIAと黒田によるコラボレーションミニアルバム「MISIA SOUL JAZZ SESSION」に収録された「来るぞスリリング」の新アレンジは、“最新型のMISIA”そのものだ。さらに未発表曲である「LADY FUNKY」も披露される。「来るぞスリリング」同様に黒田がアレンジを手がけた「LADY FUNKY」は、濃密なファンクサウンドと現代女性への強いメッセージが1つになったダンスチューン。ルーツミュージックに対するリスペクトと真摯な思いを込めた歌がまっすぐ伝わってくるこの曲もまた、現在の彼女のモードと直結している。
キャリアを象徴する名曲に斬新な演出を加え、新しい魅力を引き出すシーンも今回のライブの見どころだ。「逢いたくていま」では、ダンサーの菅原小春が登場。コンテンポラリーダンスの世界で高い評価を得る一方、2NE1、三浦大知らの楽曲の振り付けを手がけてきた菅原は、「逢いたくていま」に込められた哀切な感情を豊かな身体表現と高いダンス技術で美しく描き出している。また弦一徹が率いるストリングス隊、男性舞踏家のnousesの2人によるシアトリカルなダンスのセッションを挟んだバラードコーナーでは、代表曲「Everything」が届けられる。白を基調にした衣装に身を包んだMISIAが叙情豊かにこの曲を歌い上げる場面は間違いなく、このライブの大きなハイライトだった。その後ステージに巨大な馬のオブジェが現れたライブ後半で彼女は、「BELIEVE」「幸せをフォーエバー」「THE GLORY DAY」などのソウルフルなナンバーを熱唱。楽曲の中で「20年間歌え続けたこと、たくさんの愛をありがとう」というラインを響かせると、客席からは大きな歓声が巻き起こる。さらに「SUPER RAINBOW」「HOPE & DREAMS」「MAWARE MAWARE」といったポジティブなバイブスにあふれた楽曲が高らかに歌い上げられ、本編は終了。アンコールでは1998年発表のデビュー曲「つつみ込むように…」が披露され、万感の思いを込めたボーカルからはデビュー20年を迎えられたことに対する感謝、そして、この先の音楽人生に向けられた強い意志がはっきりと感じられた。
このライブのMCの中で「“THE SUPER TOUR OF MISIA”は20周年の始まりのツアーです」と語ったMISIA。その言葉通り、6月からはロングツアー「20th Anniversary MISIA星空のライヴX - Life is going on and on」が開催されている。さらに彼女は7月に「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演するなど、精力的な活動を続け、8月にはシングル「アイノカタチ feat. HIDE(GReeeeN)」をリリース。TBS系テレビドラマ「義母と娘のブルース」の主題歌として制作され、“MISIA×GReeeeN”初のコラボレーション楽曲として話題を集めた本作の表題曲は、ドラマのヒットも追い風となり現在もロングセールスを続けている。
作詞作曲をGReeeeNが担当し、メンバーのHIDEがコーラスに参加したほか、編曲に亀田誠治を迎えるなどJ-POPシーンを代表するヒットメーカーが集結した「アイノカタチ」は、ピアノやストリングスを軸にした有機的なサウンドとドラマティックなメロディライン、そして「あのね 大好きだよ あなたが心の中で広がってくたび 愛が溢れ 涙こぼれるんだ」という歌詞が1つになったミディアムバラードだ。この曲のヒットの最初の要因は、ドラマのストーリーとの親和性の高さだろう。綾瀬はるか扮するキャリアウーマンの主人公が娘を持つ男性と結婚し、理想の母親になろうと家事や育児に取り組みながら家族として過ごす日々を描いた「義母と娘のブルース」。お互いにさまざまな葛藤と悩みを抱えながら、本当の家族になろうとする母と娘の関係性を主題歌である「アイノカタチ」は見事に描き出している。その中心にあるのはやはりMISIAの歌声だ。この楽曲に対してMISIAは「脚本を読んで、とても心が揺さぶられました。こんな素晴らしいドラマが今の時代に必要だと思います。“アイノカタチ”は人それぞれだけど、愛することは素晴らしい。たくさんの“アイノカタチ”に寄り添い、大切な人に『あのね 大好きだよ』と伝えるお手伝いが出来るよう、心を込め歌いました」とコメントしているが、1つひとつの言葉に生き生きとした情動を与え、サビのフレーズと共に強烈なカタルシスを感じさせてくれるボーカリゼーションは、シンガーとしての彼女の奥深い魅力を改めて証明している。「アイノカタチ」はドラマの放送が終了しても幅広い層のリスナーに支持され続け、YouTubeでのミュージックビデオの再生回数は900万回(10月26日時点)を突破。GReeeeNによる王道のJ-POPマナーに則した楽曲、MISIAのブラックネスを交えたボーカルが融合したこの曲は、今後新たな代表曲として認知されることになりそうだ。
ライブBlu-ray / DVD「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」、そして最新シングル「アイノカタチ feat. HIDE(GReeeeN)」によって20年間の軌跡を総括すると共に、アーティストとしての現在と未来のビジョンを示したMISIA。12月26日にリリースされる約3年ぶりのオリジナルアルバム「Life is going on and on」にも大いに期待したい。
- 「20th Anniversary THE SUPER TOUR OF MISIA Girls just wanna have fun」特別先行上映会
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2018年10月27日(土)東京都 ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場
[第1部]START 13:30 / [第2部]START 17:00
- ライブ情報
20th Anniversary MISIA 星空のライヴX Life is going on and on (※終了分は割愛) -
- 2018年11月7日(水)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年11月8日(木)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年11月18日(日)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
- 2018年11月23日(金・祝)福島県 けんしん郡山文化センター 大ホール
- 2018年11月24日(土)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
- 2018年12月14日(金)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年12月15日(土)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年12月21日(金)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第一ホール
- 2018年12月23日(日)福岡県 福岡サンパレス
- 2018年12月24日(月・祝)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
- 2019年1月5日(土)新潟県 新潟テルサ
- 2019年1月6日(日)富山県 オーバード・ホール
- 2019年1月12日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年1月13日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2019年1月19日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2019年1月20日(日)山形県 シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
- 2019年2月1日(金)山口県 周南市文化会館
- 2019年2月3日(日)島根県 島根県芸術文化センター「グラントワ」大ホール
- 2019年2月11日(月・祝)千葉県 千葉県文化会館(※振替公演)
- 2019年2月14日(木)北海道 旭川市民文化会館 大ホール
- 2019年2月16日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2019年2月20日(水)東京都 NHKホール
- 2019年3月1日(金)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
- 2019年3月3日(日)徳島県 鳴門市文化会館
- 2019年3月8日(金)石川県 本多の森ホール
- 2019年3月9日(土)長野県 まつもと市民芸術館 主ホール
- 2019年3月22日(金)福岡県 アルモニーサンク北九州ソレイユホール
- 2019年3月23日(土)福岡県 福岡サンパレス