ナタリー PowerPush - MISIA
世界を駆け回る歌姫の15年 新たな一歩も提示したベストアルバム
明日へ向かっていくために、さらに光の差したリアレンジに
──2011年に発表された「明日へ」も、今回のベストアルバムではリアレンジをして新録されています。
アルバム「SOUL QUEST」(2011年7月発売)に収録した「明日へ」はピアノ1本で歌っているんですが、東日本大震災が起きた直後ということもあり、当時は哀しみを癒すという側面を大切にして歌いました。今回の新録バージョンは「明日へ向かっていくために、さらに光の差したリアレンジにしてみよう」ということで、大編成のオーケストラを招いて新しくレコーディングしています。バイオリンは10人、コントラバスは4人という編成なので、重厚なサウンドをたっぷり味わっていただけると思います。
──近頃では生のオーケストラを招いてレコーディングすること自体が珍しくなりましたよね。
最近はコンピュータの、いわゆる宅録レコーディングでオーケストラの音も簡単に作れてしまうので、大人数のオーケストラでレコーディングが可能なスタジオを見つけること自体が大変だったんです。この曲のストリングスアレンジは服部隆之さんにお願いしているんですが、服部さんのレコーディングというのはご本人が指揮をされて、演奏者の皆さん全員がそれに合わせて演奏するというスタイルなので、ピアノも歌も指揮者が見える広いスタジオが必要で。ですから、今回の「明日へ」は、すべての演奏者と私が、服部さんの指揮にあわせて一斉にレコーディングしたというテイクなんです。
──いわゆる一発録り。ある意味、本当のライブレコーディングですね。
そうなんです。とても貴重なレコーディングでした。ベストアルバム全体を通して、昔ながらのレコーディング技術と最新鋭のレコーディング技術を同時に体験できたなあと実感しましたね。曲によっては完全なデジタルレコーディングもありますし。そういう意味でも15年という時間が凝縮されたベストアルバムになったのかなあ、と。自分自身の音楽のレンジを象徴している気もします。
「HOLIDAY」の空回りな女の子は自分そのもの
──このベストアルバムでCD初収録となる「HOLIDAY」はご本人出演のCMソングにもなっていますが、まさにドライブにジャストなテンポ感が心地よい曲で。
作曲は林田健司さんで、アレンジはGOMIさんですね。爽快感、疾走感のある曲で、本当に運転が楽しくなる楽曲ですよね。歌詞は、好きな人のもとへクルマを走らせる女の子が主人公なんですけど、ちょっと遅刻しちゃいそうで空回りをしているっていう(笑)。こういう身近な設定の歌詞を書くのはひさしぶりだったんで、とっても楽しかったですね。このところ大きな愛をテーマにした歌詞が多かったので、スタッフからも「あ、それ、よくあるある!」っていう身近なことを歌詞にしてみたら?って言われて、「身近なこと……そういえば近道しようとしたときに限って渋滞にハマります」って言ったら、プロデューサーに「それ、採用!」って言われて。急いでるときに限って携帯電話を忘れるあたりは、もう自分そのものという感じです(笑)。
──意外ですね(笑)。
ついこの間も「あ、ウチの鍵がない!」とスタッフも巻き込んで大騒ぎしちゃったことがあったんですけど、後からポケットの中から鍵が出てきて「本当にごめんなさい……」みたいな(笑)。
変わっていく時代に、変わらないものをちゃんと届けていく
──こうしてベストアルバムをリリースすることは、改めてこれまでを振り返るきっかけにもなると思うんですが。
私の中でのひとつの大きな区切りになったのは、2003年のドームツアー(女性ソロシンガー史上初となった全国5大ドームツアー「THE TOUR OF MISIA 2003 KISS IN THE SKY」)だったと思います。そのあと初めての長期休暇も取って、充電することもできましたし。お休みの後にリリースした作品が「SINGER FOR SINGER」(2004年12月発売)という、いろんなシンガーの方々に作っていただいた楽曲を歌う……というコンセプトのアルバムだったんですけど、長年歌い続けてこられた皆さんにあれこれお話を聞くことで、あらためてシンガーとして考えることが多かったんですよね。
──GLAYのTAKUROさん、TERUさん、久保田利伸さん、藤井フミヤさん、CHARAさん、宮沢和史さん……とそうそうたるシンガーの皆さんが曲を書かれていますね。「どんな歌でも歌える」という自信にもつながったんでしょうか。
逆に「どんな歌でも歌えるわけじゃないんだ」と思ったことがひとつの答えでした。他人の言葉を歌ってみて、改めて自分の言葉が自分の中でどういう位置付けにあるかということがよくわかったんですね。自分の言葉で歌う、自分の言葉で届けるということの大切さも実感できて、自分のスタイルを知ることができたといいますか。その次にリリースしたのは、上昇、昇天という意味の「ASCENSION」(2007年2月発売)というアルバムなんですけど、文字通りポーンとひとつ高みにいけた感覚があったんです。そこで歌い手としての覚悟が決まった……という手応えがありましたね。
──15年というひとつの節目を迎えられましたが、今後まだまだトライしてみたいこともたくさんあるのでは?
日本のいろんなところを訪ねて歌いたいですね。もちろん日本以外でも「歌を聴きたい」と言ってくれる方がいれば訪ねてみたいし、まだまだ演ったことのない場所ってたくさんありますから。デビュー当時からライブを大事にしながら活動していこうという軸は変わらないですね。カセットやレコード、MD、DAT、CD……と音楽ソフトがいろいろ変遷していく時代を生きているわけですけど、何が変わらないか?といえば、ライブは変わらないだろう、と。変わっていく時代に、変わらないものをちゃんと届けていく。これからの15年もその先も、ライブは私の基本であり続けると思います。
- ベストアルバム「MISIA SUPER BEST RECORDS -15th Celebration-」/ 2013年2月20日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [Blu-spec CD 3枚組+DVD] / 4200円 / BVCL-30001~4
- 通常盤 [Blu-spec CD 3枚組] / 3980円 / BVCL-30005~7
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DISC 1収録曲
- つつみ込むように…(15th ver.)
- DEEPNESS
- 恋は終わらないずっと
- 逢いたくていま
- SNOW SONG
- To Be In Love
- THIS IS ME
- BACK BLOCKS
- Color of Life
- Royal Chocolate Flush
- Don't stop music!
- Back In Love Again(feat. 布袋寅泰)
- 陽のあたる場所
- LUV PARADE
- CATCH THE RAINBOW(15th ver.)
DISC 2収録曲
- Everything
- 少しずつ大切に
- 忘れない日々
- 眠れぬ夜は君のせい
- そばにいて…
- Let It Smile
- It's just love
- 星のように…
- EDGE OF THIS WORLD
- BELIEVE
- 太陽のマライカ
- THE GLORY DAY
- MAWARE MAWARE
- いつまでも
- 果てなく続くストーリー
DISC 3収録曲
- INTO THE LIGHT(15th ver.)
- HOLIDAY
- 太陽の地図
- Escape
- 名前のない空を見上げて
- 地平線の向こう側へ
- 冬のエトランジェ
- 飛び方を忘れた小さな鳥
- 心ひとつ
- キスして抱きしめて
- MELODY
- We are the music
- LIFE IN HARMONY
- つつみ込むように…
- 明日へ(15th ver.)
初回限定盤DVD収録内容
- MISIA HISTORY DVD ~15th Celebration~
MISIA(みーしゃ)
長崎県生まれの女性シンガー。1998年2月にシングル「つつみ込むように…」でデビュー。同年6月に発表した1stアルバム「Mother Father Brother Sister」は200万枚以上を売り上げ、R&Bブームの火付け役存在となる。2000年に発表したシングル「Everything」はドラマ主題歌にも起用され、200万枚を超えるセールスを達成。2013年2月にデビュー15周年記念ベストアルバム「MISIA SUPER BEST RECORDS -15th Celebration-」をリリースし、直後より全国ツアー「MISIA 星空のライヴVII -15th Celebration- Schedule」を行う。