「CDは付いてません」

マスヤマ　まずは僕から全体の話をしたほうがいいですよね。

伊藤ガビン　そうですね。

マスヤマ　えー、mishimash＊Julie Wataiのプロデューサー・マスヤマです。まず、今年の5月に「起電力ロマンス」という曲を配信限定でリリースしたんですが、これがけっこう好評で。「CDにしてほしい」という声もかなりあったんですが、「CDを出してもどうせ買わないでしょ？」というのもありつつも（笑）、僕としてもパッケージされた作品を出したいという気持ちはあったんですよね。ただ、CDに対してはモノとしての魅力をそんなに感じていなくて。例えばCDを人からもらっても、「外付けドライブどこだったっけ？」ということになったりするので。それで、そうじゃないパッケージを考えたわけですけど、今回の作品って要は“本”なんですよ。そこにダウンロード用パスワードが付いていて、音楽コンテンツに関しては、ダウンロードして聴いていただくという。本のほうには「起電力ロマンス」のビデオクリップにも参加してくれたタカハシヒロユキさん、「あま絵」で知られる青木俊直さんのイラスト、あとは写真やインタビューなどもたくさん入れて。楽曲に関しては「起電力ロマンス」と新曲が2曲（英語 / 日本語の2バージョン）、さらにリミックスを含めて「セカンド・アルバム」と言ってみる、という感じですね。流通などについては、まずタワーレコードさんに置いてもらう予定です。実際に店に並べたときに「CDは付いてません」ということをどうやって見せるかが難しいんですけど。

ガビン　本屋には置かないんですか？

マスヤマ　置かないです。書店の流通は特殊じゃないですか。ヴィレッジヴァンガードみたいなところだったら置けるのかもしれないけど……。それって昔のカセットブック（※書籍や雑誌にカセットテープを付けたアイテム。1980年代前半に流行）のときと同じで、ちょっと難しいところがあるじゃないですか。

ガビン　まさにそうですよね。

マスヤマ　今はいい意味で過渡期だし、こういう形の作品も今後は増えていくかもしれないですけど。つまりね、音楽を作る人間として何が最終形態なのか？ということだと思うんですよ。人によって考え方は違うし、ライブだったりCDだったり、いろいろあると思うんだけど、僕らがメインとして考えているのは、実はビデオクリップなんですよね。「起電力ロマンス」のPVもフルバージョンでYouTubeにアップしてるし、今回の新曲（「回れ右、逃げるんだ」「ハートブレイカロイド」）もそうしようと思っていて。

ガビン　結局、楽曲を聴こうと思ったときもYouTubeを観てしまいますからね。

マスヤマ　うん、そこで観てもらえればいいかなって。前段の話はこんなところかな。

今日は催促に来た

──そして今回、ガビンさんがビデオクリップの制作を担当することになったわけですね。

マスヤマ　mishmash＊についても、わりと初期の段階からガビンちゃんと話してたんですよ。「こういうプロジェクトをやろうと思ってるんだけど」って。この人ね、要所要所で大事なところにいるっていう才能があるんです。だからこうやって業界で暗躍してるんだけどね（笑）。こう見えても偉い人だから。

ガビン　偉くないですよ（笑）。

マスヤマ　僕がこうやって外に出るようになったのも、ガビンちゃんに「マスヤマさんが出たほうがいいですよ」って言われたからなんです。ガビンちゃんはすごく忙しい人だし、なかなか絡めなかったんですけど、今回「ビデオクリップをやってくれない？」ってメールしたら、そのときだけはすぐに「やります」という返信があって。

ガビン　たまたまタイミングが合ったんです。

マスヤマ　その後、1回だけ打ち合わせをしたんですよ。そのとき話したのは「回れ右、逃げるんだ」のビデオクリップにはアニメーターの水尻自子さんを使いたいということと、ガビンちゃんが撮る「ハートブレイカロイド」に関しても「アイデアがあります」ということだったんですが、それから1カ月くらい、メールを出しても出しても返事がないっていう。

ガビン　すいません（笑）。

マスヤマ　だから今日はむしろ催促に来たんですよ。どうなの？