ナタリー PowerPush - mishmash*Julie Watai
実験的ユニットが放つカルチャーミックス作品
mishmash*(ミシュマシュ)というユニットをご存知だろうか。Corneliusのサウンドプログラマーとして長年小山田圭吾の右腕を務めている美島豊明のソロプロジェクトで、ゲームや出版、映像などさまざまなカルチャーコンテンツを手がけてきたマスヤマコムがトータルプロデュースおよび作詞を担当している。
プロジェクト毎にゲストアーティストを迎える形をとり、mishmash*Julie Watai名義で発表されるデビューアルバム「mishmash*Julie Watai」では、元アイドル / モデルで写真家のJulie Wataiをボーカリストとしてフィーチャー。ポップだけど実験的で、クールだけど温かい、どこか退廃と空虚を忍ばせたエレクトロニカを展開している。
そして特筆すべきはCDのパッケージ。キュートな3人のイラストを表紙にしたブックレットには、マンガ家の大暮維人によるJulie Wataiを主人公にしたコミック作品「クォーター・ノート」が掲載されているのだ。さらにPVのダウンロードコードも封入され、さながら音楽を軸とした現代ポップカルチャーの集合作品といった趣。首謀者である美島とマスヤマコム、そしてJulie Wataiに話を訊いた。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 佐藤類
いっそ自分で作ってしまおう!
──まずはユニットの成り立ちから教えていただけますか。
マスヤマコム 元々僕はCorneliusファンだったんです。それがソーシャルネットワークを通じて美島さんと知り合ってやり取りしているうちに、Cornelius以外の仕事もやっていきたいという話を聞きまして。元々美島さんはフリーランスで、Corneliusの専属ってわけでもないですからね。それで僕がプロデューサーになっていろいろクライアントを探して動いてたんですが、なかなか決まらないので、いっそ自分で作ってしまおう!ということになりまして。僕も音楽をやっていたんですが、美島さんと話しているうちにこの人とだったら一緒にやれそうだなと思ったんです。音楽的趣味も合うし。Corneliusファンの僕にとってみれば彼は神ですからね(笑)。
──なるほど。マスヤマさんのユニットでの立ち位置というのは?
マスヤマ 僕の立場は、エクゼクティブプロデューサーですね。で、僕はポップスが好きで、歌モノが作りたくて。ボーカリストを探していたときに、元々Julieちゃんのことは全然別ルートで知っていたんですね。彼女がやっているJulieHallyっていうチップチューンのユニットのライブを観に行って、人前で歌うのも様になっていると感じて。で、あまり深く考えないで彼女に声をかけたんです(笑)。そうしたらあとで知ったんですが、彼女にとってカヒミ・カリィが神だったんです(笑)。美島さんは両方やってますからね。これは相性がいいなと。それで彼女と引き合わせて、やりましょうということになって、美島さんに曲作りをお願いして、私が歌詞を書いて。それで2011年3月15日に最初のレコーディングをやりました。それがこのアルバムに入っている「リバーブの奥に」という曲ですね。それで英語版の録音なども含めて去年の12月にはレコーディングが終わりまして。それから映像やパッケージの製作があって、ようやく作品として出せることになったという流れです。
やってるうちにこうなっちゃった
──美島さんは、mishmash*が始まる前にマスヤマさんとどんな話をしていたんですか?
美島豊明 なんか面白いことをやりたいねって話をしてたんです。Cornelius以外の、なんかそれまでとは違うことをやってみたかったんですよね。
──それはご自分がパフォーマーとして?
美島 いや、ここまで表に出るつもりはなかったんですよ(笑)。もっと裏方的なことを考えてたんだけど、結果的にこういうことになっちゃって……。
──マスヤマさんと話してるうちに、こういうコンセプトが生まれてきた。
美島 ……そうなのかな?
マスヤマ まあ、僕がそういうふうに仕組んだんですよ(笑)。美島さんは知らず知らずのうちにここまで来たかもしれないけれど、僕はある程度のイメージは持っていましたね。
──音楽を中心にさまざまなポップカルチャーを集合させたユニットという?
マスヤマ いや、あくまでも大事なのは音楽なんで、他のものはなくても僕は全然いいんです。ただ、Julieちゃんというボーカリストがいる。Julieちゃんはすごく強烈なキャラだから、それは活かしたい。かといってmishmash*は、彼女を中心に据えて彼女を売っていきたいわけじゃない。じゃあどうするかってときに、まずデザイナーのPansonWorksにキャラクターを描いてもらって、それからmishmash*Julie Wataiとしてのイメージが固まってきましたね。全員がキャラクター化することで対等に見えるというか。それからビジュアルや映像は昔からの知り合いに声をかけて……という感じです。マンガを描いてくれた大暮維人さんは、昔からの知り合いのマンガ編集者の紹介ですね。このプロジェクトの話をしたら、ぜひ協力したいと、会社の仕事を離れて大暮さんを紹介してくれた。だからポップカルチャーの集合とか、アキハバラ文化がどうとか、あまり考えてなくて。
美島 やってるうちにこうなっちゃったっていう。
CD収録曲
- リバーブの奥に
- 恋のタマシイ
- ゴー・ファービー・ゴー
- 3分シェイクスピア
- グラドルを撃たないで
- 砂に消えた涙
- Veiled by Reverb
- Roll of Love
- Go Furby Go
- 3 Minute Shakespeare
- Don't Shoot Me. I'm Only the Pin-up Girl.
- Un Buco Nella Sabbia
- グラドルを撃たないで(濱田祐子アレンジ版)
mishmash*(みしゅましゅ)
Corneliusのサウンドプログラマーを務める美島豊明と、ゲームや出版、映像などさまざまなカルチャーコンテンツを手がけてきたマスヤマコムによる音楽ユニット。作品ごとに異なるクリエイターをフィーチャーすることをコンセプトに掲げている。2012年12月リリースの1stアルバム「mishmash*Julie Watai」では、写真家として活躍する元アイドル / モデルのJulie Wataiをフィーチャーしている。