大好きなんです、サンボマスターさん

──続いてサンボマスターは、MINMIさんの主催フェス「FREEDOM」に出た経緯があるとは言え、もっとも驚いた参加アーティストでした。

私にとっては、とにかく自分が大好きな人とコラボしたいっていうことで、すごく自然に選んだアーティストですね。大好きなんです、サンボマスターさん。レコーディングのときは、にわかキーボーディストの私にも一緒にやりましょうって言ってくださって「せーの」で一発録りしたセッションを収録しました。目と目を合わせてみんなで盛り上がったり、静かに歌ったり、生のグルーヴっていうのは本当にすごいなと思いました。

──私も最初は「異色だなあ」と思ったんですけど、曲を聴いたらものすごくしっくり来ました。お互いハスキーな声質でとっても相性がよかったですし、熱いスピリットを持っているところも共通してるんじゃないかなって。

ありがとうございます。うれしい。本当に楽しかったです。

──3人と曲作りをともにして、印象に残ったエピソードはありますか？

この曲、初めはもっとスローだったんですね。でも私はサンボさんのアグレッシブなビートにもすごく元気をもらうから、自分の曲でもビートを上げていきたいって伝えて。「『できっこないを やらなくちゃ』とか聴いてるとノれるんですよね」って言ったら、「ああ、『できっこないを やらなくちゃ』？ どんなテンポだっけ？」とか言って3人で弾き出して、私しかその場にいないのに3番くらいまでやってくれたんです。思い出すんだったら8小節やるくらいでいいじゃないですか。でも私があんまりうれしそうに聴いてるから。1人のためにね、特別コンサートをしていただいて、本当に優しいなと思いました。

──今、その話をしてるMINMIさんがすごくうれしそうです（笑）。本当にサンボマスターがお好きなんですね。

はい！（笑）

空中戦みたいな中田さんとのやり取り

──「風に乗せて」をプロデュースした中田ヤスタカさんは、普段Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの曲では、熱唱を避けてなるべく平坦に歌うよう指示しているそうなんですよ。

へえ。初めて聞きました。

──でも今回はMINMIさんらしい歌唱を生かした形でコラボレーションを図ってますね。2人の個性が5対5で混ざっているような印象を受けました。

中田さんからは何もアドバイスというか、リクエストをいただいてなくて、実は私も中田さんに「こういう曲を書いてください」っていうリクエストはしていなくて。中田さんの作ってくれた曲に対して、私なりに「こうかな」と思いながら歌ってたんです。お互い空中戦みたいな（笑）。

──それでうまくいくのもすごいですね。

中田さんの場合は、詞曲全部中田さんなんです。ほかの曲は詞とかメロディは私も作ってるんですけど、中田さんは詞まで書いてくださるんです。それも私の個性を考えてくださってるのか、なんか合うんですよね。

──自分のことをちゃんと理解して作られている気がする？

はい。中田さんから楽曲をいただくのは2回目で、1回目もミラクルを感じたんですよ。きゃりーちゃんとかPerfumeとまた全然違う歌詞だし、サウンドもちょっと南米っぽいというか、MINMIをわかって作ってくれてるのかなとはすごく感じました。そういう経緯もあってすごく信頼してるので、今回も何もリクエストせずに歌ってます。いただいたそのまんま。

──MINMIさん自身も詞を書いたりトラックを書いたりプロデュースを行うわけですが、ほかの人の詞曲で歌うとき違和感や拒絶感を感じることは一切ないんですか？

ないですね。2011年にカバーアルバムを出して（参照：MINMI青春時代の名曲カバー＆5年ぶりツアーは自己最長）自分が書いたり作ったりしていない曲を歌う楽しさを、以前にも増して感じたというか。

──それより前は？

抵抗っていうのはないですね。ただ自分の声と自分の言葉を発したいっていう欲はもちろんありましたし、今もあるんですけど。人が書いた曲を歌う楽しさはまた別のところにある感じです。

──m-floとのコラボ曲「TONITE」なんかはm-flo側のアルバムに入った曲ということもあり、いい意味でMINMIさんを材料として使ったEDMチューンですが、このように他人が作った世界観の中に自分が入っていくのも楽しいですか。

大好きですね。それは単純に気楽に楽しいっていうスタンスでできるから。自分の作るものへのこだわりとはまた違うかな。

私は職がなくなったときに、これを聴いて泣きます

──そしてアルバムの最後には、「ポジティブ音頭 ～D.P.P～ feat. SHINGO★西成」というめちゃくちゃテンションの高い音頭が収められています。歌詞カードに並ぶ言葉が3分の1くらい「ドンドンパンドンドンパンドン」で驚きました（笑）。

けっこうみんなに笑われるんです、「最後これ？」って（笑）。自分では100回以上聴いたので、もうよくわかんないんですよ。どうですか？

──冷静に考えて、1曲目が息を呑むほど繊細な「Lavender」で、紆余曲折13曲を堪能してきて、最後にこれで締めるってすごい振り幅の大きいアルバムだと思います（笑）。

いや、もう私冷静じゃないからわからんなあ（笑）。

──お祭りソングで、さっきご自分で言っていた「MINMIと言えばバーンッとアッパーで思わず踊りたくなる曲」というのに沿ってますよね。

だけどね、実は底抜けに明るいサウンドの中で「仕事がなくなった」とか「フラれた」とかかなり重いことを歌ってて。SHINGOくんと私としては、すごいシリアスで絶望してるからこそ、底抜けに明るいバカな曲にしたかったんです。聴いてくれる人の中には実際ハッピーじゃない状況の人もいるだろうし、なんか泣き笑える曲になればいいなと思って。

──ただのブチアゲソングではないと。

ただの意味ないブチアゲソングに聞こえるかもしれませんが、私は職がなくなったときに、これを聴いてきっと泣きます。よくわかんないですけど、そうなんです。で、サウンド面でも、普通の盆踊りにせずに新しいものにしたかったり。聴けば聴くほど味わえる要素は入れたつもりなので、聴き流していても2年目3年目にグッと来ますよ。きっと味わい深いと思います。