ツアーへの架け橋になるアルバム
──ここからは2ndアルバム「BLUE COMPASS」について伺います。制作が始まるにあたって、水瀬さんの中で思い描いていたアルバムのテーマはあったんですか?
1stアルバムとは違った表情を見せたいという思いがありました。挑戦したいことを自分からスタッフの方にたくさん伝えたので、「Innocent flower」よりも私のやりたいことが明確に見えるアルバムになっていると思います。「Innocent flower」では等身大の私を表現したのに対して、「BLUE COMPASS」では「違う世界に行ってみたい」という私の気持ちが表れていて。また、この1年間でライブが私に与えてくれた影響がとても大きかったので、ライブを通して濃くなったファンの方への思いをこのアルバムで表現したいとも考えました。
──アルバムタイトルにはどのような思いが込められているのでしょうか?
2ndアルバムの制作と6月に始まる初のライブツアーの開催が同時に決定したので、今作はツアーへの架け橋になるアルバムにできたらいいなと思ったんです。ツアーはいろんな場所にファンの方に会いに行く、ある意味旅のようなもので、その旅に必要なものと言えばなんだろうと考えたときに羅針盤、コンパスが思い浮かびました。あと、タイトルにある「COMPASS」には私を行きたい場所に導いてくれるファンの方への思いも込めていて。そこに私らしさを取り入れたくて、自分のイメージカラーである「BLUE」を頭に付けました。
見てもらいたい表情が明確になってきた
──アルバムにはリード曲として、未来へ進んでいくことへの決意を歌った「Million Futures」が収められています。
この曲は「乖離性ミリオンアーサー」というアプリゲームの主題歌で、タイアップとして作品のカラーに沿った曲になっています。アルバムの制作が始まる段階ですでに形ができあがっていた曲で、レコーディングではこの曲の主人公になりきって歌うことを意識しました。
──タイアップ曲とそうではない曲では、歌うときの気持ちの込め方が違ってくるんですね。
そうですね。タイアップ曲では作品の雰囲気をまず考えます。例えばアニメ「徒然チルドレン」のオープニングテーマである「アイマイモコ」では、自分自身の気持ちよりも私がアニメで演じたキャラクターの気持ちを優先して歌いました。私だったら歌うのが少し恥ずかしいようなフレーズでも、キャラクターに合わせてまっすぐ歌って。完全にキャラクターになりきるわけではないですけど、ベースにある自分の気持ちに、タイアップ作品のキャラクターや曲の主人公の気持ちを重ねていますね。
──「Million Futures」のミュージックビデオでは、彫刻が並んでいる部屋で歌う水瀬さんの姿が印象的です。
今回、私は歌詞に沿う形で2人の人物を演じていて、同じような景色の中に白い衣装を着た私と、赤い衣装を着た私が登場するんです。最初は交わることのなかった2人の思いが重なっていって、共鳴し合うストーリーが描かれています。2人を演じるときはアプローチの仕方が違って、白い衣装を着た私は凛々しくて快活な表情をしているのに対して、赤い衣装を着た私は少し内向的で引っ込み思案な女の子なんです。終始明るいものが多かったこれまでのMVとは違ったテイストに仕上がっていると思います。
──赤い衣装と白い衣装では、どちらのほうが演じやすかったですか?
うーん、そうですね……どっちとははっきり言えなくて。どっちも普段の私とは違って、実際の私はその間くらいにいると思います。なので両方にお芝居をしている部分と、素の私に近い共感できる部分があります。映像での演技はそんなに得意ではないんですが、デビュー当時と比べるとファンの方に聴いてもらいたい曲が明確になってきたのと一緒で、見てもらいたい表情も固まってきて。監督さんが求めているものを理解しながら、自分が見せたいものも表現できたと思います。
新しいジャンルに挑戦してみたかった
──「違う世界に行ってみたい」「新しいことに挑戦したい」という水瀬さんの思いが反映された曲は特にどの曲なんでしょうか?
どの曲もたくさんいただいたデモ音源の中から悩みながら選んでいったので思い入れが強いんですけど、8曲目の「アルペジオ」は四つ打ちのダンスナンバーになっていて。今までの私の曲にはなかったジャンルに挑戦してみたいという思いから、こういった曲に仕上がりました。ダンスナンバーがレパートリーにあったら、ライブがより盛り上がるんじゃないかなとも思ったんです。
──ツアーへの架け橋になるアルバムだとおっしゃっていたように、ライブで披露することも考えて収録曲を選んでいったんですね。4曲目の「Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap!」はハネるようなリズムのナンバーで、この曲もライブで盛り上がりそうです。
「Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap!」では「かわいさの中にあるパワフルさ」を表現しています。明るい雰囲気の歌詞にもちゃんとメッセージ性があって、私は「あとほんの少しだけ足りないなって思うから私たちは夢を見るの」という歌詞が好きなんです。かわいくて元気な曲の主人公が思い描いている夢を、明るいメロディに乗せて歌っている曲で。前奏部分にはクラップの音が入っているので、ライブではファンの方と一緒にクラップできたらいいなと思っています。
──そういったライブで盛り上がりそうな曲もあれば、アルバムには7曲目の「これからも。」のようにゆったりとしたバラード曲も収録されています。
「これからも。」は“ウエディング感”のある楽曲だなと私は思っていて。6曲目の「アイマイモコ」からつなげて聴くことで、より曲の持つ意味が際立つんです。「アイマイモコ」は学生時代の甘酸っぱい恋愛を描いた曲で、「これからも。」はその曲の主人公たちが結ばれるという温かいナンバーになっています。レコーディングでは、隣にいる人に向けて歌うようなイメージで歌いました。
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歌詞を見て感極まるものを感じた
- 水瀬いのり「BLUE COMPASS」
- 2018年5月23日発売 / KING RECORDS
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
3888円 / KICS-93710 -
通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3710
- CD収録曲
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- ハートノイロ
[作詞・作曲:Haggy Rock / 編曲:白戸佑輔] - Ready Steady Go!
[作詞:藤林聖子 / 作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)] - identity
[作詞:松原さらり / 作曲・編曲:南田健吾] - Shoo-Bee-Doo-Wap-Wap!
[作詞:藤林聖子 / 作曲・編曲:山下洋介] - シネマチックダイアリー
[作詞:松井洋平 / 作曲:石田秀登 / 編曲:EFFY] - アイマイモコ
[作詞・作曲:Haggy Rock / 編曲:白戸佑輔] - これからも。
[作詞:磯谷佳江 / 作曲:小野貴光 / 編曲:玉木千尋] - アルペジオ
[作詞・作曲・編曲:山﨑佳祐] - Million Futures
[作詞:RUCCA / 作曲・編曲:藤間仁(Elements Garden)] - 三月と群青
[作詞・作曲・編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)] - Sweet Melody
[作詞:大滝美乃莉 / 作曲・編曲:長橋健一] - BLUE COMPASS
[作詞:岩里祐穂 / 作曲:上松範康(Elements Garden) / 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
- ハートノイロ
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- アイマイモコ(MUSIC VIDEO)
- Ready Steady Go!(MUSIC VIDEO)
- Million Futures(MUSIC VIDEO)
- 水瀬いのり「Inori Minase LIVE TOUR 2018 BLUE COMPASS」
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- 2018年6月9日(土)
- 愛知県 アイプラザ豊橋
- 2018年6月17日(日)
- 石川県 本多の森ホール
- 2018年6月24日(日)
- 兵庫県 神戸国際会館
- 2018年7月1日(日)
- 千葉県 幕張メッセ国際展示場イベントホール
- 水瀬いのり(ミナセイノリ)
- 1995年東京都生まれの声優、アーティスト。2010年にアニメ「世紀末オカルト学院」で声優デビューを果たした。2013年に「恋愛ラボ」で棚橋鈴音の声を担当し、注目を集める。同年にはNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で成田りな役を務め、「第64回NHK紅白歌合戦」に「GMTスペシャルユニット feat.アメ横女学園芸能コース」の一員として出演した。2015年12月の20歳の誕生日にキングレコードよりシングル「夢のつぼみ」をリリースし、ソロ歌手としてデビュー。以降、声優および歌手として活躍し、2016年には「第十回声優アワード」主演女優賞を受賞した。2017年4月に1stアルバム「Innocent flower」を発表。22歳の誕生日である同年12月2日に東京・東京国際フォーラム ホールAで初のソロライブ「水瀬いのり 1st LIVE Ready Steady Go!」を開催した。2018年5月23日に2ndアルバム「BLUE COMPASS」をリリースし、6月からは初のライブツアー「Inori Minase LIVE TOUR 2018 BLUE COMPASS」を行う。