悩んでいる時間も楽しんで
──ソロで活動を始めるうえで、どんな音楽をやりたいというイメージは明確にあったんですか?
なかったです。今も自分の中にはそこまで明確にはなくて。まずは歌のスキルを上げなければいけないので、そこを必死にがんばっているところです。自分のレベルを上げていきながら、どういう歌が自分に歌えるのか、どういう音楽が合っているのか、まだ探しているところですね。そのときどきで歌えること、伝えたいと思うことを歌いたいと考えています。
──去年の8月、ソロとして本格的に再始動することが発表されました(参照:元アイドルネッサンス南端まいな、ソロ本格始動で配信シングルリリース)。ファンからの反響もさまざまだったと思いますが、どう感じましたか?
うれしかったです。私がステージに戻ること、もう一度歌を歌うことを報告したときに「おかえり」という言葉をたくさんの方からいただいて。
──その第一歩として発表されたソロデビュー曲「センチメートル」のミュージックビデオが、アイドルネッサンスのジャケットにも登場した神奈川の逗子海岸で撮影されていたことも話題になりました(参照:南端まいな、あの場所から一歩踏み出すソロデビュー曲MV)。
アイドルネッサンスで活動してきた自分も南端まいなの一部なので、それは大切に持ちながら、新しい自分を探していきたいんです。
──実際に1人でステージに立って歌を歌ってみて、寂しさや心細さを感じたりはしませんか?
すごく楽しいです。ステージ構成とかライブのタイトルとかグッズとか、自分でやりたいことを考えて「これはファンの方に楽しんでもらえないんじゃないか」とか(笑)、そうやって悩んでいる時間も楽しめています。いいことも悪いことも全部自分に返ってくるので、プレッシャーはすごいですけど。バースデーコンサート(参照:南端まいな19歳、今歌いたい曲を詰め込んだバースデーコンサート)は選曲も衣装も自分で考えたので「あんまり盛り上がらなかったらどうしよう」と不安もあったんですけど、ステージに立って歌いながら、ファンの方の反応を見て新しい発見もあったので、反省も生かしつつ次のライブにつなげていこうと思います。
──お客さんの反応はけっこう冷静に見てるんですね。
見てます。「これは気に入ってもらえてるな」とか「これはそうでもなかったな」とか(笑)。
「私、こんな声してたんだ」
──ではここからデビューミニアルバム「Clarity」の話を。タイトルは「透明感」という意味合いでしょうか。
はい。自分が透明感があるということじゃなく(笑)、透明感あふれる曲ばかりなので、それを感じていただけるミニアルバムになったかなと思います。
──とは言えその透明感は南端さんが持っている部分でもあるし、ひいてはアイドルネッサンスが持っていた独特なムード、はかない透明感の一端を担っていたのは南端さんの声だったのだなと、1人だけになった歌声を聴いて思いました。音楽的なムードもアイドルネッサンスを継承しながら新しい道を進んでいる感じがあって。
音楽的なところは、今の自分の気持ちを伝えながら、スタッフの皆さんとたくさん話し合いながら決めています。
──ひさしぶりのレコーディングはいかがでしたか?
最初はすごく新鮮でした。始めから終わりまで、ハモも含めてまるまる1曲自分の声で歌うのは初めてだったので。グループ時代には主メロを任される機会が少なかったので、自分がどういう声なのかも知らないところから始まっているんです。
──1曲の中ですべての抑揚を付ける作業を実はやってこなかったと。それはグループアイドルならではのことですね。
そうなんです。「センチメートル」で初めて全部通して歌ってみて「ああ、私、こんな声してたんだ」って。それから「こんな歌い方ができるんだ」「だったらこんな歌が歌ってみたいな」という気持ちが湧いてきて、それをスタッフさんに伝えて。新しい曲ができたら、「次はこんな曲はどうだろう」と少しずつ増えていった感じです。歌っていくうちに、自分が届けたい声や歌い方がだんだんわかってきました。
「Clarity」に込めた思い
──1曲ずつ、南端さん自身が考えるポイント、聴きどころを教えてください。まずは「センチメートル」から。“名曲ルネッサンス”と銘打ってカバー曲を主に歌っていたアイドルネッサンスを終えての次の1歩も、seven oopsのカバーから始まりました。
「センチメートル」はソロデビューが決まって最初にレコーディングした曲で、手探りで歌いながらも「今すぐファンの方に気持ちを伝えたい」という思いと、「まだ何もできないけど、もっともっと新しい自分を見せていきたい」というもどかしい気持ちで揺れている自分にすごくぴったりな曲でした。もどかしいながらもワクワクする気持ちを詰め込んだ1曲です。
──2曲目からはすべてオリジナル曲です。「言えなかったサンキュー」はまさにこれから外へと飛び出していく、南端さんの今をそのまま表現したような始まりの曲ですね。
すごくさわやかで明るいイメージですけど、それだけじゃなくて。「うまく言えなかったサンキュー」と歌詞にあるように、まだ少し残っている不安も隠さず出しつつ「ありがとう」という気持ちが伝えたかったんです。ソロになって初めてのオリジナル曲だったので、どういう曲調にするかとか、どんな歌詞にするかもすごく悩みました。いっぱい悩んだ分、すごく大切な曲になりました。
──次の「Cherry moon」は少し大人っぽい、ゆったりしたグルーヴを持つ曲ですね。
3曲目なので音楽的にも少し幅を持たせて、お客さんが体を横にゆったり揺らしながら聴いてもらえるような曲が欲しいなと思って、スタッフさんにイメージを伝えました。あとは少し、自分の見せたいかわいい部分をこの「Cherry moon」で見せられるかなと思います。女の子らしい、ちょっと背伸びした女子っぽい気分を曲調や歌詞に詰め込んでます。
──4曲目の「Reach the sky」はメロディ展開が少し複雑で、表現するうえで高いレベルを要求されたんじゃないかと思いますが、いかがでしたか?
難しいんですけど、「Clarity」の中でも一番歌いたかった曲というか、初めてデモを聴いたときに「これ好きだな」と思った曲です。12月の1stミニワンマンライブで、クリスマスイブということで、松田聖子さんの「Pearl-White Eve」をカバーさせてもらったんですよ。そのときに「こういう歌い方をしたいな」とか「自分のこういう部分を見せていきたいな」と思った、そのイメージに一番近いのがこの曲で。新しい私を見ていただきたくて、歌い方にもこだわりました。
──5曲目の「Always the sun」はまさに“Clarity”感のある、さわやかな曲ですね。
これは「言えなかったサンキュー」「Cherry moon」の次にできた曲で、ライブのときにお客さんと一緒に手を振ったり、みんなで楽しめる曲が欲しいと思って作ってもらいました。「夏の屋外で歌いたいな」とか、そんなふうにイメージして。
──これからライブをやっていくうえで、そういう武器のバリエーションを増やしていくことは重要ですね。
そうですね。やっぱりライブは歌の活動の中でも一番大事だと思っているので、ライブで毎回変化を付けながらどう楽しんでもらえるか、ずっと考えてます。もちろん音源を聴いたりMVを観てくださるだけでもうれしいんですけど、ライブは観てくださる方の反応が直接受け取れるのが、すごく楽しいんです。歌いながら「こういう感じはどうだろう?」って試してみたり……自分の120%を出せるように、自主練やリハーサルではしっかり形を整えるようにして、ライブではプラスアルファを見せたいんです。
──そしてラストの「青い風」は、やはりこれもアイドルネッサンス時代からあった、甘酸っぱく切ない焦燥感のある楽曲ですね。
「センチメートル」から始まって、「Always the sun」までの5曲には「強い自分」が表現できていない気がして……歌い方の部分もそうなんですけど、気持ちの部分で強い自分をもっと見せていかなくちゃいけないと思ったんです。「Reach the sky」のようなレパートリーも増やしていきたいんですけど、強い自分もどんどん出していきたい。今後の決心を込めた曲でもあるので、ぜひ聴いてほしいです。
──強くいられる自信はありますか?
自信はまだそんなにはないんですけど、気持ちの面でもスキルの面でも、今は練習あるのみだと思うので、きちんと積み重ねていけば自信は付くんじゃないかと思います。
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19歳の、今の私