ナタリー PowerPush - 遊佐未森
すべての時間が歌につながる 25周年を祝福する2枚組ベスト
ローザスとか、あとピナ・バウシュなんかもすごい好きで
──それは学校でやってらしたリトミック?
じゃなくて。ちょっとクラシックバレエを取り入れたジャズダンス的なものとか。なんか現代舞踏とかそういうのも興味があって。かわいい女の子たちが踊るローザスとか、あとピナ・バウシュとかもなんかすごい好きで。
──なるほど。大学時代の後半はデビューに向けての活動って感じですか?
そうですね、あとは太極拳とか。
──テレビでおっしゃってましたね。ブラザー・コーンさんに聞かれて答えていたような。
ありましたありました! レーベルメイトですから、エピックの。
──そのエピックからのデビューですが、普通に音大生をしてたら歌手デビューとはならないと思うんですが。
そうなんですけどね。わりと自然の流れでそうなった感じで……たまたま出会った方と、流れでデモテープ作ってみようってことになって。その録音に外間さんが参加していたんです。それで、去年までずっとお世話になっていた事務所に外間さんが遊びに行ったとき、社長に「今何やってるんだ?」って聞かれて、何気に私のデモのテープを出したらしいんです。
──聞かれて、こんなのやってますって。
そう。だから売り込んでくれたというより、言われたから出したと(笑)。それで私が社長に会うことになり、今度は社長がデモテープをレコード会社に持っていって、それで福岡(知彦)さんにも会って……。その大学4年のすごく短い期間に、そのあとずっと一緒にがんばってきたスタッフの人たちと、一気にそこで会ってるという。
昔よりももっと楽しいし、昔より歌いやすくなってる
──そのデモテープに入っていたのは外間さんの曲なんですか? それともご自身の?
別の方の曲ですね。 で、外間さんに詞を書いてもらったり、自分でも書いたりしました。
──当時から曲を書かれていたと思うのですが、やはり世に出てきたとき、クラシックの素養みたいのがにじみ出ていて、そこがちょっと、他の女性シンガーとは一線を画していたように覚えています。
やっぱり知らないうちに、自然とその影響は出てると思いますね。あとになってわかったりすることが多い。あ、これはきっとあれ(の影響)かなとか。
──そうすると、このベストアルバムの選曲作業をされたことは、ご自身のキャリアをまるごと分析するような行為でもあったんじゃないですか?
全部終わって、観客的な気持ちで普通に聴けるようになったら、そうなるのかなーって思ってますけど……。
──まだ、そうではないんですね(笑)。
振り返るにはまだ整理できてないかもしれません。
──昔と比べたら歌うのは好きになっていますか?
楽しいですね。昔よりももっと楽しいし、昔より歌いやすくなってる。テクニカルな面でも歌いやすくなってるし、調子が悪いときでもある程度、自分の中でコソッと立て直す術を手に入れてる部分もある。もちろん何やってもダメなときもありますけど(笑)。
私自身もまた、真っさらなところから歌い始めていく
──それは昔はムラっ気があったということですか?
昔は、なんかもっと考え過ぎてた気がします。いろんなことを。でも最初にも言いましたが、あらゆることの積み重ねが歌につながっていくって気付いたんですね、あるとき。それで日々を楽しく、面白いものを作っていけるようになっていったというか。やっぱりステージの真ん中に1人で立って歌うっていうのは、歌う人しかわからないものがあって。プレッシャーもかかるし、成功するって保証はどこにもないですし。
──「失敗したーっ」てこともありましたか。
ありますよ、いっぱい。でもなんかもう、それはそういうことだったんだなって(笑)。そこから何かを学んでいけばいいんじゃないかなと思っています。そのあと自分がどんなふうにまた歌に向き合えるかっていうほうが大事で。やっぱり続けてくことってすごく難しいから。だからずーっとこうして歌い続けてこれたのは、すごく感謝しているんです。ファンの方々とスタッフの人と周りのミュージシャンや友達に、本当に恵まれたから(続けることが)できたんだなって。今も歌をどんどん好きになってる自分がいて。
──なるほど。ファンにとってもこの作品は、25年の年月を振り返るリスニング体験になると思うんです。ずっと聴き続けてきた人、あと80年代、90年代に聴いていたけど少し離れていたな、って人にとっても。
このベストは25年間ずっとこうやって歌い続けてますよっていう、ちょっと離れられていた方々にも聴いていただけると、面白く聴いてもらえる部分もあるんじゃないかなって思います。私自身もまた、このベストを作ったことで、また真っさらなところから歌い始めていくことができるような気がしています。
- ニューアルバム「VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS」
- ニューアルバム「VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS」 / 2013年9月11日発売 / 4410円 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ / YCCW-10202~3
DISC 1
- 瞳水晶
- 地図をください
- 0の丘 ∞の空
- 僕の森
- Silent Bells
- Island of Hope and Tears
- Floria
- ポプラ
- 眠れぬ夜の庭で
- オレンジ
- クロ
- Tell me why
- ミナヅキ
- 欅 ~光りの射す道で~
DISC 2
- 暮れてゆく空は
- 潮見表
- 一粒の予感
- poetry days
- 街角
- 桜、君思う
- 君のてのひらから
- ブルッキーのひつじ
- Theo
- 夏草の線路
- I'm here with you
遊佐未森(ゆさみもり)
宮城県仙台市出身の女性歌手。1988年にアルバム「瞳水晶」でデビュー。1989年に「日清カップヌードル」のCMソングに採用された「地図をください」がヒットを記録し、幅広い世代の注目を浴びる存在となる。その後も数々のオリジナリティあふれる作品を精力的に発表。みずみずしく透明感のある歌声と上質なポップスで独自のスタンスを確立する。2009年発売のアルバム「銀河手帖」の収録曲「I'm here with you」はNHK「みんなのうた」で放送されたほか、長編アニメーション「川の光」のメインテーマとなった。2011年の東日本大震災以降は、被災地でライブを行うなど積極的に支援活動を展開。2013年9月11日、デビュー25周年を記念した2枚組のベストアルバム「VIOLETTA THE BEST OF 25 YEARS」をリリースした。