“初男の子”であり、“語り部”であり

──先日公開されたプロモーション映像の中で三森さんは、今回のシングルの表題曲「Light for Knight」を“りりしい男性目線”の曲と表していました（参照：三森すずこ、“りりしく”、“男性目線”な新曲試聴音源）。

私は“主人公目線”とも呼んでるんですけど「Light for Knight」の歌詞みたいに、ヒーローモノの主人公的な“僕”からヒロイン的な“君”に向けて何かを歌う経験がこれまでなくて。その“男らしさ”と“りりしさ”がすごく新鮮だったしワクワクしたので、そのまま言葉にしてみました（笑）。

──キャラクターソングにも男の子目線の曲はなかった？

なかったので、今回が“初男の子”です（笑）。

──「ワクワクした」ということは性別や人称の違いに戸惑うことも……。

なかったかなあ。声優としていろんなキャラクターを演じるのと同じことだよなって思ってた気がします。

──4月リリースのアルバム「Fantasic Funfair」の制作時にも、洋館に迷い込んだ男性を魅了して魂を奪う霊的存在を描いた「Heart Collection」は妖艶に歌ったと言ってましたけど……（参照：三森すずこ「Fantasic Funfair」インタビュー）。

けっこうそのときの感覚に近いですね。アルバム用の新曲はノンタイアップで、「Light for Knight」は「ランス・アンド・マスクス」っていうアニメのオープニングテーマっていう違いはあるんですけど、いずれにせよ歌詞の中の登場人物の背景や設定をイメージして声を作るほうが歌いやすい部分もありますし、私自身楽しいですから。

──ただ「Light for Knight」の主人公の“僕”は、すなわち「ランス・アンド・マスクス」の主人公・花房葉太郎に近しい存在ですよね。で、三森さんはこのアニメにアリス・クリーヴランド役で出演しています。

複雑なことになってますね（笑）。主人公目線に立って「Light for Knight」を歌ってはいるんだけど、「ランス・アンド・マスクス」の主人公ではない。ただ作品に声優として関わることでより内容への踏み込みはできました。

──しかも「Light for Knight」は単なるアニメのオープニングテーマではなく、“三森すずこの新曲”でもある。

ホントに複雑ですね（笑）。でも歌詞と曲をいただいたとき、特に悩むことなく「『ランス・アンド・マスクス』っていう物語の語り部になればいいんだな」って思えたんですよね。そこまで明確に考えていたわけじゃないんですけど、 それが“アニメの主題歌を歌う人”であり、“そのアニメに別の役で出演している人”であり、“三森すずこ”でもある人の演じるべきキャラクターだろうというか。それは「Fantasic Funfair」を作ってるときもそうで。「Heart Collection」だったらデモを聴いた瞬間「古い洋館に住んでる女性の霊」っていう画が頭に浮かんで、そのキャラクターを自分の中ですぐにイメージできたからそのままGo!って感じで歌ってましたし（笑）。