「ここは演じてなんぼでしょ！」

──実際、今回のボーカルレコーディングっていかがでした？

このアルバムの収録が始まったばかりの頃に「ときめいてDream」を録ったんですけど、それはけっこう何度も何度も録り直していて。というのもディレクションしてくださった方がスパルタな先生で（笑）。厳しくはあるんですけど歌い方とか声の個性を引き出しながら、その曲に合う歌い方を探すっていう録り方をしてくれるんです。今回も「ときめいてDream」のレコーディングで「あっ、この歌い方、次も使ってみよう」っていう発見をたくさんさせてもらったから、その後のレコーディングはすごくスムーズでしたね。

──で、それぞれの曲で実際、これまでの三森楽曲にはなかった個性の引き出しみたいなものを見せつけてますよね。「ROLLER COASTER♡」では景気よくロックボーカルを聴かせて、「Heart Collection」はちょっとエロティックに歌っていて。そしてこれは既発の楽曲なんですけど「純情 Da DanDan」ではラウドなスカパンク・ブラスパンクにいい意味でちょっとマヌケな感じのかわいらしいボーカルを乗せてます。

そうですね。やっぱり声優をやってるからこそできることっていうのはすごく考えますから。いろんな声を出す機会のある声優としても活動している以上、いろんな歌い方もできるはずで。なら、皆さんにいろんな声を楽しんでもらいたいんですよね。

──それは、CDを手にする人の多くが“声優・三森すずこ”のファンでもあるから、その期待役割に応えるため？

いや、むしろ私の欲求ですね。歌うときはいつも「演じることが本業である以上、ここは演じてなんぼでしょ！」みたいな思いでいますから。あと最初にお話したようにこのアルバムはミュージカル的、物語的な作品なので、楽しんでいるときであったり、沈んでいるときであったり、ヒロインのいろんな感情をしっかり演じたほうがよりストーリーが伝わるし、面白くなるかな？っていう意識もありました。

──三森すずことして素で歌ってみたいっていう欲求は？

それももちろんあります。今回も「ROLLER COASTER♡」はけっこうストレートに三森すずこの声をバーンっとぶつけてみたつもりですし。でも楽曲によっては、やっぱり「Traveling Kit」はこれから人生のいろいろが待っている若い子の曲だからちょっとかわいく歌ってみようかな？ 「Heart Collection」は妖艶にしたほうがいいかしら？って、つい演技プランを立てたくなっちゃうんです（笑）。

固定式遊園地の向こうの“移動式遊園地”でラインダンス

──「Fantasic Funfair」は、移動式遊園地という明確なコンセプトがありながらも、三森すずこという人の嗜好やキャラクター、そして声優としての態度もしっかり刻印された1枚。正直な話、自信作ですよね？

かなりいいファンタジーを生み出せたんじゃないかなっていう自信はあります（笑）。

──だから三森さんは今後の音楽活動のハードルを自分で上げたんじゃないかなっていう気も……。

私もそんな気がちょっとしています（笑）。

──じゃあ、そのハードルを飛び越えるべく、これから何しましょうかね？

何しましょう？（笑） 6月27、28日に（舞浜）アンフィシアターでライブがあるから、それが無事終わってからじっくり考えようかなあ。

──もうライブの構想は固まりつつある？

まだ全然具体的なプランがあるわけじゃないんですけど、私の頭の中ではかなりいい感じのショーが繰り広げられてます（笑）。とにかくショー形式、レビュー形式のライブをやってみたいな、とは思ってます。

──1stアルバムのツアーだって、MCがほとんどなくて、3～4回早替えするし、ダンサーと演劇仕立てのダンスを魅せるし、かなりショーアップされたステージだったわけですもんね（参照：三森すずこ、ミモリアンとの“大好きっ”あふれたツアー最終日）。

今回のアルバムは1枚目と違ってストーリー仕立てだから、そのライブもさらにショーアップできるし、エンタテインメント感満載にできると思っていて。だからみんなにはホントに“Funfair”に遊びに来るような気持ちで来てほしいですね。

──ディズニーランドという“固定式遊園地”を抜けたところにあるアンフィシアターという名の“移動式遊園地”で待ってるから、と（笑）。

あはははは（笑）。しかもアンフィシアターって半円形の劇場だからショー形式、レビュー形式のライブをやるのに絶好のロケーションなんですよね．例えばダンサーさんたちと一緒にラインダンスとかしてみても面白いでしょうし。

──ラインダンスですか？

このあいだ観た、市村正親さんと鹿賀丈史さんが出ている「ラ・カージュ・オ・フォール」っていうミュージカルが超ツボにハマっちゃって。プリンシパル（主役級のキャスト）もアンサンブル（主役級外のキャスト）も出演者はほとんど男性なんですけど、ゲイのショーパブが舞台で、皆さんめっちゃキレイな格好をして、めっちゃキレイにラインダンスを踊るんですよ。でも、みんな男性だから身体が大きいし、ダンスも力強くて（笑）。それを観て「キレイだけど力強いし、力強いしキレイだし、なんだろうこれ？」「でもすごくいいなー」ってなっちゃったし、あとラインダンス自体のもつ非日常感、ファンタジー感にはハマっちゃって。今はまだいろいろと構想中なので、6月のライブではできないかもなんですけど、いつかできたら面白いですよね。