吊り橋効果、狙ってます！

──じゃあ「三森すずこの遊園地デートプラン」を具体的に教えてください。「扉を開ける時がきたよ 私たちはどんな物語のなかへ旅立つのかな」と歌うタイトルトラックで遊園地に入場し……。

まずは2曲目の「ときめいてDream」でパレードを観ます。

──マーチングドラムから始まる曲だけに、ダンサーや遊園地のマスコットが行進している、と。

そうですね。で、そのあとの「純情 Da DanDan」はお菓子なんかを買ってルンルン歩きながら「今日何に乗る？」って話をしているイメージの曲で、そのまま次の「ROLLER COASTER♡」に乗って。ただこの時点では、女の子にとって男の子との恋はまさに「推測不可能で ここで？まさか！急旋回」っていう感じ。勝手に「あー！ 私、この人好きだわー」って気持ちを膨らませてるだけの段階で。……あっ、でも“ローラーコースター”に一緒に乗ったことによる吊り橋効果は狙ってます！（笑）

──あはははは（笑）。あざとい。

しかもこれは“吊り橋効果その1”ですから（笑）。で「Traveling Kit」に「オートフォーカス切って目を凝らしてみたら」っていう歌詞を盛り込んでいただいたのには、去年私がカメラを始めたからっていうのもあるんですけど、まあ、そのカメラで2人が今の自分たちを切り取って楽しんでるイメージで、そのあと「せいいっぱい、つたえたい！」っていう気持ちになっちゃう。思いを伝えたいっていう気持ちはあふれてるんだけど「つたえたい」止まり。まだ告白はできていない感じですね。

“移動式遊園地”が私を自由にしてくれた

──ちょっと話がそれるんですけど「Traveling Kit」の詞って単に遊園地デートっていうレジャーや“トラベル”のことだけを歌ってはいないですよね？

そうなんですよね。私も（渡辺）翔さんから詞をいただいたとき「これ、ただ遊園地の乗り物や遊園地デートのことを歌ってるわけじゃないな」って感じていて。もうちょっと大きくて深い意味。人生の旅みたいなものまでイメージさせてくれるところがいいな、と思ってます。

──これまでの三森さんの楽曲にはなかったタイプの詞ですよね。しかも「せいいっぱい、つたえたい！」に続く「Heart Collection」も……。

お化け屋敷をイメージしたラブソングなんですけど、ちょっと狂気を感じさせますよね（笑）。

──「その心臓を鷲掴みにできたなら そのままコレクションして眺めるの」ですからね（笑）。しかもこのヒロインって最初っから死んでますよね？

死んでます死んでます（笑）。「Traveling Kit」にしても「Heart Collection」にしても「ファンタジー」「移動式遊園地」っていうコンセプトがあったからこそ歌えた楽曲で。おっしゃる通り、これまでの三森すずこっぽい楽曲とは違うので、これをなんのコンセプトもなしに唐突に歌い出したら「どうした!? 三森！」って思われたと思うんですよね（笑）。でも、このアルバムを通して「こんなこともできるんだ」っていうところは見せられたかなあとは思います。

──そうですね。ただ、アルバム全体をコンセプトで縛ったら表現の幅が広がったって、なんか面白い話ですよね。

確かに「ルールやコンセプトがあったほうが逆に自由にいろんなことができるんだなあ」っていう発見がありました（笑）。

リスナーを惑わせたいラスト2曲

──そしてデートも終わりに近付いた8曲目の「Spinning Stars」は……。

グルグル回転する空中ブランコのイメージなんですけど、この曲が“吊り橋効果その2”ですね（笑）。

──ですね（笑）。メロディラインはシリアスだし、アレンジはハードなEDMだし、シリアスな1曲です。

そして「ハーモニア」でちゃんと思いを打ち明けることができて、幸せいっぱいになって。ちょうどその頃、夜になっちゃったから「じゃあ」ってことで「ちいさな手と観覧車」に乗ったら、窓から見える夜景がキレイで、超ロマンチック！みたいな感じ。「まわりだした世界は きっと あすへと 続く」って感じに……。

──ならないですよね、この曲（笑）。

……はい（笑）。

──確かに歌ってることは明日への希望だし、メロディ自体はロマンチックではあるんだけど……。

どんどん転調しまくって（笑）。

──ストリングスは何かを追い立てるようにシンコペーションしまくって（笑）。実は100％ハッピーではない、すごく不思議な曲ですよね。で、ラストナンバー「Wonderland Love」もウサギや時計がキーアイテムとして登場する詞からして、まさにアリスの世界というか。三森さん、2人を遊園地の中に迷い込ませる気まんまんですよね（笑）。

お気付きでしたか（笑）。まさに「三森ファンタジーランドにようこそ」っていう感じの曲なんですよね。「ちいさな手と観覧車」は、おっしゃる通り、先へ先へと進んでいく感じのするストリングスに、迷路に迷い込ませるような印象を受けたから選ばせてもらった1曲で。「Wonderland Love」はkzさんに「ファンタジーな曲を作ってください」っていう、すごくざっくりとしたお願いをしてみたら「これはわたしの 1人のストーリー ふわふわした夢から覚めないと」っていうリアルを突きつける詞と、めっちゃファンタジーなメロディとアレンジが届いたんです。だから聴いている人を「えっ、ここまでのことはリアルだったの？」「それともファンタジー？」って、いい意味で惑わせたい。聴く人次第でいろんな後味を楽しんでもらいたいという意味を込めて最後の曲にさせてもらいました。