ナタリー PowerPush - 三森すずこ

私とみんなの期待する“三森すずこ”

「一生後ろでワーワー歌ってるだけなのかなあ」

──例えば野球の世界には、高校野球で優秀な成績を収めればドラフトで指名されてプロの選手になれるっていう、ある種の“就職のシステム”がありますよね。

そうですね。

──で、将来を見据えて部活動に熱心になるっていう意味では高校時代の三森さんも一見球児と同じなんだけど……。

実は全然違いますよね(笑)。

──ええ。ミュージカルの世界には“就職のシステム”はないから。それでも遊ぶ時間を惜しんでまで部活、それからレッスンに取り組めたのはなぜだと思います?

三森すずこ

なんか好きなんでしょうね、きっと。がんばることも練習することも。あとミュージカルのように人前で何かをするってことは、もちろん好きでしたから。

──不安はなかった?

メッチャありました。高校時代も不安でしたし、デビューしてからもプリンシパル(メインキャスト)にはなれなくて、ステージの後ろのほうでみんなで歌うアンサンブルの一員だったので。アンサンブルの先輩からは「あんた、1回アンサンブルでデビューしちゃったら永遠にアンサンブルやで」って言われてましたし。それで「私は一生後ろでワーワー歌ってるだけなのかなあ」って悩んだりもしたんですけど、やっぱりミュージカルが好きだったのでがんばれてました。

がんばることは楽しいこと

──その「がんばる」って三森すずこインタビューの頻出語なんですよ。例えば中学時代、声楽を始めた頃はホントに声が細くてヘタだったんだけど、がんばって練習したおかげで歌えるようになったってエピソードをいろんな媒体で……。

毎回同じことを言ってます(笑)。

──でも繰り返しているってことはその場を取り繕うための思い付きやウソではないと思っていて。

はい、がんばるの楽しいですから!

──おおっ!

中学時代はホントに蚊の鳴くような細い声しか出なくって。しかも声楽の発表会に親や友達が来ると緊張でさらにヒョロヒョロになって、母親からは「あんた、ホントに歌ヘタクソね」って言われてはヘコむみたいなことを繰り返してたんです。でも声楽のレッスンを続けて、高校生のときには部活やレッスンを毎日のようにしていて、そのあとミュージカルで場数を踏んでっていうふうに歌い続けていたら「あれ? 私、ちょっと歌えるようになってるかもしれない」「ああ、やっぱり練習は裏切らないんだな」って実感する瞬間があって。ダンスもそうなんですけど、その一瞬はただひたすらにガムシャラにやっているだけだったりはするものの、実は長い目で見たとき、すっごい成長できてる、みたいなことを味わうのが好きなんです、きっと。

──ただそれっていわば結果論じゃないですか。がんばった結果、歌えるようになったし、踊れるようになったけど、がんばってる最中は結果が付いてくるかどうかわからない。なのに当時ガムシャラになれたのはなぜなんでしょう?

あんまり深くものごとを考えてなかったのかなあ。

──あはははは(笑)。

でもホントにある意味バカ正直だったんだとは思います(笑)。負けず嫌いで、できないことが悔しくて「なんでこの音が出ないの! カスカスになっちゃうの!」「この! この!」って自分に当たっちゃうタイプなので。だから毎日ひたすらに練習できていた気はします。

「わーっ、目の大きい女の子の絵がいっぱいだ!」

──で、ミュージカル女優時代に今のプロダクションである響から「声優さんに」っていう話があった。それって大きなチャンスではあるものの、ミュージカル女優としてはちょっとした挫折ではありますよね。

あっ、実は声優のお話をいただいた頃ってミュージカル女優としてはちょっといい時期。ちょうど自分が主演のミュージカルが2回続いたりして、少し兆しが見えた頃だったんです。「あっ、これでがんばっていけるかもしれない」と思っていたところに、ミュージカルを観に来ていた社長から「声優をやってみませんか?」って声をかけられたので、最初はほんの興味本位だったんです。

三森すずこ

──舞台での活動と並行して声優をやる役者さんも少なくないし。

私も芸の肥やしというか、声優も演技の勉強になるものだしと思って「やります」って答えたつもりだったので、まさかこんなに声優一本になるとは思ってませんでした(笑)。

──でも声優デビュー作は「探偵オペラ ミルキィホームズ」。つまり木谷(高明)社長は三森さんに声をかけた時点でテレビも雑誌もゲームも音楽も巻き込んだメディアミックスプロジェクトを始める気マンマンだったと思うんですけど……。

そうなんですよねえ。でも声優を始めるまで本当にアニメを観たことがなくて……。

──部活にレッスンに受験勉強っていう学生時代の生活ぶりを聞くだに、どこにテレビを観る時間があろうかって話ですもんね。

しかもウチ、ゲーム機もなくて。だから初めて事務所に行ったとき超ビビりました(笑)。今も会社が携わったアニメのポスターがいっぱい貼ってあるんですけど「わーっ、目の大きい女の子の絵がいっぱいだ!」って。

──おばあちゃんの感想ですよ、それ(笑)。

それで社長に会って「『ミルキィホームズ』はこういう作品で、三森さんはこのシャロ(シャーロック・シェリンフォード)役で」って説明を受けたんですけど、今度は「えっ!? 髪ピンク!」みたいな(笑)。すごいカルチャーショックでした。異国に来たみたいだなあって。

──異国どころか同じ都内なのに(笑)。

私の知らないところにこんな深い世界が広がってるんだって思ったら、ビックリしたし、面白かったですね。

1stアルバム「好きっ」 / 2014年4月2日発売 / ポニーキャニオン
Blu-ray Disc付き初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc+写真集+ライトノベル] 4860円 / PCCG-01388
DVD付き初回限定盤 [CD+DVD+写真集+ライトノベル] 4104円 / PCCG-01389
通常盤 [CD] 3240円 / PCCG-01390
CD収録曲
  1. グローリー!
    [作詞:しほり / 作曲・編曲:EFFY]
  2. 夢見る!信じる!未来叶えて!
    [作詞:しほり / 作曲:太田雅友 / 編曲:EFFY]
  3. サンシャインハーモニー
    [作詞:ENA☆ / 作曲:前澤寛之 / 編曲:yamazo]
  4. 会いたいよ…会いたいよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲・編曲:太田雅友]
  5. ミライスタート
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:俊龍 / 編曲:Sizuk]
  6. みんなでイエー☆オーッ!!
    [作詞・作曲・編曲:小松一也]
  7. サマーバケーション
    [作詞・作曲:しほり / 編曲:EFFY]
  8. 約束してよ?一緒だよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:shilo / 編曲:中西亮輔]
  9. スイートホーム
    [作詞:YADAKO (Myu)、三森すずこ / 作曲・編曲:Masse (Myu)]
  10. 私..見守っているよ!
    [作詞:畑亜貴 / 作曲:しほり / 編曲:森慎太郎]
  11. 恋のキモチは5%
    [作詞・作曲・編曲:矢野博康]
  12. 大切なキミ
    [作詞:SUIMI / 作曲・編曲:板垣祐介]
  13. 全部受けとって、強く抱きしめて。
    [作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:yamazo]
  14. ユニバーページ
    [作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:増田武史]
初回限定盤DVD / Blu-ray収録内容
  • ミュージックビデオクリップ
    「会いたいよ...会いたいよ!」「約束してよ?一緒だよ!」「ユニバーページ」「スイートホーム」「サン シャインハーモニー」
  • メイキング映像
    「サンシャインハーモニー」
  • 三森すずこスペシャルウインク集
三森すずこ(みもりすずこ)
三森すずこ

東京都生まれの声優、ボーカリスト。ミュージカル女優として活動したのち、2010年アニメ「探偵オペラ ミルキィホームズ」のシャーロック・シェリンフォード役で声優デビュー。以来同シリーズや「ゆるゆり」「神様はじめました」「ラブライブ!」など人気作で主要キャラクターを演じる。また2010年には「ミルキィホームズ」の出演声優からなる同名ユニットとしてCDデビューを果たし、以降「Animelo Summer Live」に毎年連続出演。さらに「ラブライブ!」の劇中ユニットμ’sの一員として2014年にさいたまスーパーアリーナで2DAYS公演を行うなど、活発な音楽活動を展開する。そして2013年4月にはシングル「会いたいよ…会いたいよ!」でソロデビューし、同7月には2ndシングル「約束してよ?一緒だよ!」、10月には初のアニメ主題歌となる「ユニバーページ」を三森すずこ名義でリリース。2014年4月には1stアルバム「好きっ」を発表した。