国を背負って戦う選手のために
──歌詞を書くにあたってはどういうところを意識しましたか?
加藤 「日本を代表するというのはどういう気持ちなんだろう」って、選手の気持ちをずっと考えていました。日本発祥の空手が大きな舞台で正式競技として認められて、私も試合を観られる日が来るのが楽しみなんですけど、それ以上にこの日を待ち望んでいるのって選手の皆さんだろうなとか。空手の動画を観たり、いろいろ調べたりして、選手の皆さんの気持ちを想像しながら書きました。
──歌詞を何回も直されたと伺ったのですが、どのあたりを変えたのでしょう?
加藤 Aメロに「心技体」という言葉があるんですけど、最初は全然違う言葉を入れていてあとで直しました。「心技体」ってたぶんみんな馴染みのある言葉だと思うんですけど、私の中で空手とリンクしていなかったんです。でも空手について調べていく中で、心と体と自分の技を1つにするということが心に響いたので、その言葉を入れようと思って。あとサビの「絶望はもう怖くないよ」もそうですね。試合は明確に勝敗が決するので、負けたときにそれをどう乗り越えていくのか。歌手という職業には勝ち負けがないので、私なりにイメージを膨らませました。
──選手のお二人は歌詞の中でご自身の経験と重なると感じた部分はありますか?
喜友名 「雑音はもう聞こえないよ この宿命よ」の箇所は、自分が試合の舞台に上がっていくときの感覚そのものだなと思いました。大会のとき、特に世界大会で相手選手のホームで戦うときなど、自分への応援はほとんどないんですけど、自分の世界に入り込んだらまったく気にならなくなりますし、試合中は無心で体を動かしているので、そのイメージにピッタリでした。この曲を聴いたら力が出しきれそうな気がします。
加藤 まさにそういうイメージで書いたのでうれしいです。控室から観客が待つ舞台に上がっていくときの感じを歌にしたいなって。数ある試合の中でも特に決勝戦を迎える瞬間のことを歌にしたいと思ったんですよ。答え合わせをしているみたいでめちゃくちゃうれしいです。ありがとうございます。
──清水選手はいかがですか?
清水 私は「費やした時間と感情 負けるもんかこの根性」の部分が特に心に刺さりました。自分が空手のために人生を捧げてきたことは疑いないんですけど、応援したり支えたりしてくれる人たちがいるから自分も空手を続けることができているので、最後は根性をしっかり試合で見せたいという気持ちになりました。この曲を聴くと、ひと踏ん張りしなきゃいけないときに背中を押してもらえる気がします。
加藤 ありがとうございます。がんばってくださいという思いだけはめちゃくちゃ込めました。あとは国を背負って戦う皆さんのために書いたので、「自分のための曲だな」と思ってたくさん聴いていただけたらうれしいです。
ライブでコラボ!?
──この曲をいずれライブで歌うこともあると思いますが、ライブで歌うときはどんな感じになりそうですか?
加藤 この曲はラストに向けてテンションが上がっていって、自分で歌っていてもすごく気持ちいいので、早く歌いたいですね。今はコロナ禍で私たちアーティストもなかなかライブができない状況ではあるんですが、みんなの前で歌える日が早く来たらいいなって思っています。ぜひ選手の皆さんもライブに来てもらえたらうれしいです。
清水 ぜひ! 私、ライブというものに行ったことないので、生で聴いてみたいです。初めてのライブが加藤ミリヤさんのライブで、しかも私たちのために作っていただいた曲を聴けたらすごくうれしいです。
喜友名 私もぜひ会場で加藤ミリヤさんの歌声を聴きたいですし、なんならコラボもいいですね(笑)。「宿命」の冒頭の空手の競技の音を、自分たちが生でやってみるとか。
清水 それ最高ですね!
加藤 皆さん舞台慣れしているから、一緒にステージに立ってもらったほうが絶対によさそう。大会が落ち着いたらぜひ!
オリンピックに向けて
──清水さん、喜友名さんのお二人にオリンピックへの意気込みを伺えればと思います。
清水 何年もかけてこのオリンピックに向けてやってきて、すごくつらい経験もたくさんありましたけど、今までの経験を無駄にしないためには自分自身がオリンピックですべてを出し切ることだと思っていて。あとは喜友名選手と男女一緒に優勝することを目標にずっとやってきているので、その目標を夢で終わらせるのではなく、しっかりと成し遂げたいと思います。
喜友名 ここまでの道のりは私1人では来られなかったので、今回のように加藤ミリヤさんだったり、ずっと支えてくれた家族、先生先輩方、清水選手をはじめ仲間、そういう数えきれない人たちのためにも魂を込めてオリンピックに向かいたいと思います。そして絶対に優勝します。それでみんなの笑顔が見たいです。
──ではミリヤさんのほうからお二人にエールを送っていただけると。
加藤 心の底からめちゃくちゃ応援しています。とにかく私も楽しみにしていますし、自分の思いは曲に込めさせてもらったので、がんばってください!
喜友名・清水 ありがとうございます。
喜友名 自分も加藤ミリヤさんの魂を持って行って一緒に戦いたいと思います。
清水 私たちのためにこうやって素敵な曲を作っていただいて、この曲と一緒に決勝に行って優勝して金メダルを勝ち取りたいと思います。「この曲を聴いて優勝した!」と言えるようにがんばってきます!