音楽ナタリー Power Push - 少年がミルク
極東からリアルを叫ぶ
実体験を歌詞に
──「リアルな曲が多い」とおっしゃっていましたが、収録曲のうち「みなしごはっち」の歌詞は、少年がミルクさんの実体験がもとになっているとお聞きしまして。
「惨劇が2時間」とか「パパみたいなパパじゃない、のキャスティング」とか、けっこう実体験が出ちゃってますね(笑)。例えば「ローソクないけどそっと生まれるよ」のところは、夜逃げ3回目くらいのときに電気もガスも通ってない状況でお兄ちゃんの誕生会をして……。
──自身のトラウマ的な出来事がストレートに歌詞に出ているんですね。
普段だったらこういう不幸自慢みたいになりそうなことは自分から話したりしないんですけど、別に隠してるわけでもなくて。聞かれたら答えるけど話すと空気悪くなる話なんだよな、くらいに思ってたんですが、今回はそれを歌詞に書いてみました。
──実体験を歌詞に込める作業はつらくないですか?
むしろスッキリしたくらいです(笑)。空気が悪くなるから話さないだけで、私にとっては笑い話の1つみたいなところがありますから。少年がミルクとして2作目のミニアルバムを作る中で、ポップさを保ちつつ、いい感じのバランスで曲が作れるかなと思っていたら、こんな感じで実体験が出ちゃいました。
──確かに歌詞に書かれていることを読み解いていくとすごいことが書かれていますが、楽曲自体はそこまで悲壮感があるわけではないですね。
例えばこれをライブで歌ったときに、本当に何も考えずに踊ってくれていいんですよ。音楽を楽しんでもらいたいって気持ちがある中で、こういう歌詞を書いたらどういう人がじっと立ち止まって歌詞を読んでくれて、泣いたり笑ったりしてくれるのかなっていうのは興味がありますね。「みなしごはっち」を聴いて救われる子とか、いるのかなあ。
タイトルは毎回なんでもいい
──歌詞の言葉遊びもかなり独特ですが、曲名も変わったものが多いですよね。特に「反骨処女」(パンクヴァージン)は変わったタイトルだと思いました。
タイトルは毎回なんでもいいと思っていて、最後に絞り出すように決めるんですよね。いつも歌詞を先に書いて、タイトルどうしようかってレーベルの社長に相談するけど、特にこだわりとかがなくて。誰か私と息がピッタリ合うクリエイターに出会って、曲のタイトルとかビジュアルとか少年がミルクのアウトプットを全部お任せにしたいくらい。
──そうは言っても、息がピッタリ合うクリエイターには出会ったことがないんですよね?
そうなんです。今のところは私と社長であーだこーだ言って生まれるだけですね。今回の曲を聴いて、和樹さんは軽めの踊れるロックをちょっとバカにしてるのかなって勝手に解釈して(笑)。それを少年がミルクがやるとしたらこんな感じかなって考えてたら、まず「パンク」って言葉が出てきたんです。さらにどこかちょっとチキンな感じも入れないとなって思って「処女」って言葉を付けたって感じですね。
──「反骨処女」は歌詞も面白いですよね。四つ打ちのダンサブルな曲調なのに「踊るな」と書かれていて。
こじれてますね(笑)。全然踊ってほしいんですけど、「歌ってるやつが『踊るな』って言ってたら面白いな」と思っちゃって。歌詞に反して踊るっていうのも「反骨」だと思うし、最近アンチイズムにあふれてる子がいないな、ちょっと寂しいなっていうのが根底にはあります。
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収録曲
- 反骨処女
- CURTAIN CALL
- ダダイズム
- Word flood Moment
- みなしごはっち
サディスティック猫ぱんちTOUR2017
- 2017年1月29日(日)北海道 KLUB COUNTER ACTION
- 2017年2月12日(日)大阪府 CLAPPER
- 2017年2月26日(日)東京都 晴れたら空に豆まいて
- 2017年3月12日(日)長野県 ALECX
- 2017年4月8日(土)愛知県 CLUB Zion
少年がミルク(ショウネンガミルク)
syamによるソロプロジェクト。2016年5月に開催されたイベント「こどもめんたる~はっぴょうの壱~」にて少年がミルクとして初ライブを実施した。同年9月には全曲にわたって水谷和樹(Gauche.)が作曲を、少年がミルクが歌唱と作詞を担当した1stミニアルバム「KYOKUTO参番地セピア座」をリリース。2017年2月には2ndミニアルバム「GYUNYU革命」を発表した。現在、5都市を回る全国ツアー「サディスティック猫ぱんちTOUR2017」を開催中。