投稿前の音源を聴かせ合ったり相談もする

──今回はコンピレーションアルバム「Download feat.初音ミク」、「Upload feat. Vocalist」に参加しているボカロP＆歌い手の4人に集まっていただきました。ネット上で活動している歌い手の方たちって、普段から交流はあるんでしょうか？

りぶ　交流がある人もいればっていう感じですね。付き合う人はけっこうみんなバラバラだと思います。

そらる　基本的には各々で活動してますけど、最近は一緒にライブに出ることもあるし、今回のようにコンピ盤に参加させてもらう機会もあるので。それをきっかけに交流が始まることがありますね。

minato　僕は現在はほとんどなくて、こうやってネットの方と顔を合わせるのもひさしぶりで……。

halyosy　僕とminatoさんは引きこもりチームです（笑）。

──ちなみにボカロPや歌い手同士はお互いのことをどう思っているんでしょうか？ ニコニコ動画のような場所だと「再生数」が表示されているので、ある意味人気のあるなしが一目で見えてしまうわけですよね。

りぶ　ほかの歌い手さんの動画は単純にリスナーとして楽しませていただいてます。普通に聴きにいくというか、楽しみにしている感じで。でも、やっぱり曲かぶりみたいなこともあって、そういうときには少しだけ意識しちゃいますね。

そらる　歌い手同士で投稿前の音源を聴かせ合ったり、同じ楽曲の“歌ってみた”を上げるときに、相談することもあるんですよ。ただ、せっかくだからたくさん聴いてもらいたいっていう思いもあって、競い合うっていう気持ちがないわけじゃないですね。

minato　僕はもう動画のアップは数年やってないんですけど……。思い返してみると、自分が「この歌い方いいな！」と思った方の動画がある曲は、なるべく歌わないようにしてたかな（笑）。

そらる　ありますよね。りぶが歌った曲だと「もういいや」ってなることがあります。

りぶ　それはこちらこそですよ（笑）。

halyosy　僕は間奏とかもともと歌がないところにフェイクを入れたり、歌の部分でハモリを入れたり、そういうネタをいっぱい入れるようにしていますね。ほかの方がやっていないメロディラインをやりたいというか、そこで差別化をしようと思ってます。

りぶ　ミックスとかでほかの人が使ってない飛び道具的なエフェクトを入れたりして、聴かせるところを作ったりすることはありますね。

halyosy　そうなんです。そういうのが楽しかったりして。

りぶ　単純にまったく同じ感じというか、歌が似ちゃったら申し訳ないっていうのがあるんですよね。

テーマソングは架け橋になる曲

──2枚のコンピレーションアルバム「Download feat. 初音ミク」「Upload feat. Vocalist」のテーマソング「Connecting」は、halyosyさんの書き下ろし曲です。ボカロにも歌い手にも通じるテーマが描かれていますが、どういう構想があったんでしょうか？

halyosy　まず今回の企画「Download」と「Upload」、歌い手とボカロっていうテーマを聞いて“架け橋になる曲”を作ろうって思ったんです。もちろんボカロPや歌い手とボーカロイドの架け橋っていう意味を含んでるんですけど、それだけじゃなくて歌い手がコラボする相手だったり、歌い手とリスナーだったり。立場を変えても共感できる曲を目指しました。

──「Download feat. 初音ミク」ではボーカロイドが、「Upload feat. Vocalist」では歌い手たちがボーカルを担当していますが、どちらのバージョンがベースにあるんでしょうか？

halyosy　特にどちらかを意識して作ったとかはないんですよ。キーも変えて演奏も変えて、それぞれのよさを出せるようにしています。歌い手のほうでは最後にコーラスを厚めに入れたりして、肉声だからこそ生きるアレンジにしているんです。ボカロの声は抜けがよくてオケになじまないので、そっちはエレキを太くしたりとか。そういう違いを出してます。

そらる　最初にhalyosyさんの仮歌が届いて聴いてみたら、それがうますぎて……（笑）。もうこれでいいんじゃないかと思うくらいだったんですよ。ちゃんとパートによって歌い分けとかもしてくださっていて。

halyosy　恥ずかしい（笑）。声色をちょっと変えたりしてね。

そらる　歌い分けがしてあったこともあって、うまく歌うってことよりちゃんと自分の色を出すことが大事なんじゃないかなと思って歌わせてもらいました。

halyosy　仮歌はあくまで想像でしかないので、皆さんがどんなふうに歌ってくるのか、自分でも楽しみで。送られてきたテイクを聴くと、やっぱり想像した以上のものが返ってくるんですよ。それを聴いて「皆さんとやれてよかったな」ってしみじみ思いました。

りぶ　歌入れは別々にやっているんですけど、それこそ文字通りインターネットを通して“Connect”して、1つの曲が完成したっていうのが感慨深かったです。

──実際に顔を合わせないで楽曲を作っていくのって不安じゃないですか？

halyosy　こういうコラボは初めてじゃないんですけど、やっぱり不安な部分はありますね（笑）。昔「Smiling」っていう大規模なコラボ曲を作ったことがあるんですけど、そのときも顔を合わせずに大人数で制作を進めていったんです。当時はそういう経験がまったくなかったから、本当に大丈夫かなってすごく不安で。実はminatoさんとは「Smiling」のときにコラボしていて……。

minato　今日が初対面なんですよね（笑）。「Smiling」のときは本当に手探りで、「ここの部分を使わせてほしいんですけど歌ってもらえませんか？」とか「もうちょっとこういうふうにしたほうがいいかも」みたいな感じのコミュニケーションをメールやチャットでやってたんですよ。それでできあがりを聴いて、お会いしたこともないhalyosyさんのハモリが乗ってたりして「おおー！」ってなってました（笑）。

halyosy　あのときの経験が今回に生きています（笑）。